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【コラム】強みを見いだし、企業力を高める

ビジネス環境が厳しさを増すなか、生き残りをかけた厳しい環境をどう戦い抜き勝利を収めるのか。自社にしかないオンリーワンを見いだし、成長戦略につなげることがこれまで以上に重要になる。強みの発見に必要なことは「棚卸し」をすることで、内包している力が明示される。

[2020年 3月 3日公開]

【この記事のポイント】

  • 限られた経営資源を何に投下するか。効率化?はたまた設備投資?という成長期の今、経営資源の投下先は、「自社の強み」だ。
  • 特許権や著作権などの知的財産権、ブランドや営業秘密などの知的財産、人的資産や組織力など、知的資産に分類される分野にこそ、経営資源を集中的に投下すべし。

1.中小企業は強みに集中しよう

中小企業は、国内の企業数の99%以上、従業員数の約7割を占め、経済の円滑化になくてはならない存在です。中小企業は、地域住民を雇用し、得意分野を活かしながら、得意先との取り引きを通じて、事業を行っています。しかし、このような中小企業でも、従来と同じように商品やサービスを提供するだけでは、厳しい市場環境のなか、成長することはできません。提供する商品やサービスが顧客に継続的に受け入れられる必要があります。

事業を継続できている企業には、必ず強みがあります。強みが提供する商品やサービスに活かされるからこそ、他社との差別化につながり、顧客ニーズを満たすのです。経営改善するためには、強みを伸ばすことと弱みを克服することの2つの方法がありますが、中小企業の場合は、まず強みを活かすことに集中します。経営資源が小さい中小企業は、経営資源を分散させず、やらないこと決め、強みを伸ばすことに集中するべきです。

2.自社の強みを見出せ

(1)強みを発見するために必要なこと

強みを活かすためには、まず、自社の強みを発見することが必要です。強みとは、競合他社と比べて優れている点です。自社で強みだと思っていても、優位性がなければ、強みではありません。つまり、差別化できている点です。そのような強みはどのように発見できるでしょうか? 強みに気づく方法としては、自社の強み、弱み、機会、脅威を分析するSWOT分析や顧客アンケート、従業員へのヒアリング、自社固有の技術・サービスや経営理念・歴史の振り返りなどがあります。

(2)注目したいのは知的資産

これらの方法により、強みの発見に至ります。具体的には、飲食業であれば、素材と手作りにこだわったメニュー、製造業であれば、加工精度の高い職人技などです。しかし、そこで分析を終わらせないようにします。強みの背景に最も大切なものが隠れているからです。それでは、素材と手作りにこだわったメニューはなぜ提供できているのでしょうか?それは、供給量が限られる食材の取引ルートや先代から引き継いだ職人技、企業秘密のレシピなどの隠れた要因であるからでしょう。この強みを深掘りし、たどり着いた取引ルートや職人技、レシピが、強みを実現するための源泉である知的資産と呼ばれるものです。

3.強みの源泉となる知的資産

知的資産とは、特許やブランド、ノウハウなどに加え、組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワークなどの経営資源の総称です。知的資産は、特許権や著作権などの知的財産権、ブランドや営業秘密などの知的財産、人的資産や組織力などの知的資産の3つに大きく分類されます。借地権や電話加入権などの無形資産は、知的資産の対象外と考えます(注)。つまり、工場に設置してある製造設備や、財務諸表から分かる自己資本などと異なり、目に見えにくいものです。目に見えるものであれば、誰もが気づきますが、目に見えにくい特性があるため、会社経営において、社員でさえ気づいていないことや、うっかり失ってしてしまう場合があります。

  • (注)財務諸表上の無形資産と同義ではなく、企業が保有する形のない経営資源すべてと捉えている。
    (出典:経済産業省 知的資産経営のすすめ)

4.知的資産を活用した経営

従って、知的資産を活かした経営により、会社の強みの維持・強化が図れ、持続的な成長が期待できます。そこで、知的資産を活用するために、以下の流れで事業戦略を考えます。

(1)自社の強みを把握して深掘りする

強みをモレなく把握することが大切です。強みを把握する段階でモレてしまうと、強みとして活用できないばかりか、将来失ってしまうリスクがあります。強みを把握したら、深掘りします。その強みが実現できている要因を考えます。例えば、強みが、加工精度の高い部品供給であれば、その要因が、高い加工精度を実現する職人技といった具合です。この高い加工精度を実現する職人技が、知的資産です。知的資産は、人に付随したもの、組織に根づいたもの、事業基盤など目に見えにくいものですので、次の3つの分類を意識して把握するとよいでしょう。

  • 人的資産:ヒトに関する資産。製造工程の職人技や社長の営業力など
  • 構造資産:組織や仕組みに関する資産。チャレンジする企業文化や技能伝承のための人材育成方法など
  • 関係資産:ネットワークに関する資産。顧客とのネットワークや取引先との良好な関係など
  • (出典:東京商工会議所 知的資産経営入門ガイドブック)

(2)知的資産の活用方法を見出す3つの視点

強みと知的資産を把握したら、知的資産の活用を検討します。知的資産を活用することが、業績拡大につながります。業績に大きく貢献する活用方法は、簡単に見出せるものではありませんが、以下の3つの視点が効果的な着眼点です。

機会を活かす

強みは内部要因ですが、機会は自社で容易にはコントロールしにくい外部要因です。知的資産を活用した強みと機会を組み合わせて、活用策を考えることは、事業戦略を描くうえでの定石です。例えば、強みが、一人ひとりにあったトレーニング指導であれば、増加しているシニア向けサービスや、健康やダイエットに効果があるプログラム指導などが、強みと機会を活かした活用策です。強みの背後にある、独自の指導法や熟練したトレーナーなどの知的資産の活用が、業績拡大に貢献します。

他社と差別化する

他社との違いを顧客が分かるように明確化します。それには、政治、経済、社会、技術の視点で分析するPEST分析、売り手、買い手、競争業者、代替品、新規参入者を分析するファイブフォース分析、SWOT分析などを活用します。政治や経済、法制度の状況、市場の規模や成長性から、競合他社の商品やサービス、顧客ターゲット、マーケティング手法、接客・販売方法までを徹底的に分析します。その結果から、自社が強みを活用して独自性を発揮し、差別化できる内容に経営資源を集中します。例えば、うどんが郷土食の地域でうどん店を営んでいれば、他店と差別化しないと生き残れません。そこで、他店が大人向けのおつまみメニューや地酒を充実させている場合、健康や安心・安全を理念に商売をしているうどん店では、地元の旬の食材を使用した月替わりメニューの提供や食物アレルギーのある人でも安心して食べられるメニューの開発、家族連れも入りやすい店づくりなどが差別化策です。

顧客から見た商品・サービスの価値を考える

顧客は、自社が提供する商品・サービスが顧客にとって有益だから、取り引きを行います。顧客がコストを負担しても、それを上回る価値を認めるから、この商品・サービスに価値を感じます。顧客から見た価値とはどのようなものでしょうか?例えば、強みとして、顧客からの信頼が厚い高精度の加工技術や、7日以内に1,000種類の部品配送を可能にする生産・出荷システムといったケースがあるとします。これらは、供給側から見た強みになります。よく言われる例ですが、電動ドリルを購入する人は、高性能な電動ドリルが欲しいのではなく、高精度の穴、を求めています。高性能な電動ドリルを製造・販売する、というのは、供給側から見た強みの表現のため、顧客が解決したい課題は何か? という顧客側の視点で、商品・サービス、その提供方法を考えます。自社の強みの源泉である知的資産を活かして、どのように顧客価値を向上させることができるかが、売り上げにつながる企業経営の本質です。

5.知的資産を活用して変化に対応する

少子高齢化や人口減少、顧客ニーズの多様化、IT化の進展など、社会環境はとても大きく変わってきています。従来のような経済成長が見込めないなか、時代の変化に対応しなければ企業は成長することができません。変化に対応するためには、自社の強みに経営資源を集中させることが必要です。強みの源泉である知的資産を把握して活用し、高い顧客価値の商品やサービスを提供することです。人的資産、構造資産、関係資産の3つに注目して知的資産を把握し、機会を活かすこと、他社と差別化すること、顧客価値を考えることの3つの視点をヒントに、知的資産を経営に活かすことが重要です。

著者紹介

木下 岳之 氏 プロフィール

中小企業診断士、AFP(日本FP協会認定)
木下 岳之(きのした たかゆき)

メーカーにおいて経営企画や事業管理、総務業務、国内工場や海外駐在などを経験。素材から電機、バリューチェーンなど製造業を専門とし、事業計画策定や経営改善、海外事業、コンプライアンスなどのガバナンス関連、事業承継を中心に、中小企業支援や執筆の活動中。

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