個客識別マーケティング

読み方 : こきゃくしきべつまーけてぃんぐ

個客識別マーケティングとは

優良顧客を選別したうえで、商品の割り引きをしたり、ポイントの付与率をアップしたりする──。個客(個人顧客)ごとに価格や特典、待遇を変えるマーケティング手法が、個客識別マーケティングだ。ニュージーランド出身のマーケティングコンサルタント、ブライアン・ウルフ氏が提唱した。同氏の著書『個客識別マーケティング』(ダイヤモンド社)では、「価格」や「購入総額特典」「ポイント」「特別待遇」など10種類の具体的な方策が紹介されている。

動向:スマホ普及で再注目

この考え方が登場したのは1990年代だが、再び注目を集めている。急速にスマートフォンが普及し、企業が個客ごとに異なるサービスを提供しやすくなってきたからだ。

小売業の多くは、これまで個客識別マーケティングの一環で、POS(販売時点管理)システムやポイントシステム、顧客データベースの導入を推進。顧客情報をある程度は把握できるようになっているが、2008年のリーマン・ショック以降、顧客1人当たりの消費額の落ち込みは改善されていない。その一方、「気に入ったものには高価なものでも購入する」という顧客が増加。このため企業は、多様化する顧客のニーズに個別に対応できるかどうかが問われている。

その有力な手段として注目されているのがスマホ。「スマホを活用して、顧客個々のニーズに基づいて提案しようという企業が増え、個客識別マーケティングが見直されている」。SAPジャパンの村田聡一郎プリンシパルコンサルタントは説明する。

個客識別マーケティングの具体策も登場している。ここ1年では、野村総合研究所(NRI)や独SAP、米IBMなどが、スマホで動かすアプリと店舗システムを連携させるITシステムを提案。大きく2つのタイプがある。

提案:店舗での接客の質高める

1つは、スマホアプリからの情報をきっかけに店員の接客レベルを高めるもの。NRIが2013年3月に発表した「顔なじみ」がそうだ。この仕組みは、顧客がスマホアプリのチェックインボタンを押して、店舗への来店を事前に通知する。すると店舗システムは、来店する顧客へのこれまでの接客記録を自動表示。それを店員が確認し、関心の高い商品を売り場に並べるなどして、接客のレベル向上に役立てるのだ。

スマホアプリに決済機能を加えれば、精算時の金銭・カードのやり取りをなくせる。「顧客は“顔パス”で利便性が高まる。今後、小売業の協力を得て実証実験を数多く手がけたい」とNRIの小澤良男上級テクニカルエンジニアは言う。

もう一つは、スマホアプリと店舗システムが直接データをやり取りする仕組み。顧客がスマホアプリで買い物リストを作成すると、リスト上のデータを店舗システムが自動分析。顧客が来店したタイミングで、「ひき肉のお買い得情報」や「あなたが買いたいパンにあう食材」などのレコメンデーションをスマホに表示する。

スマホを駆使した個客識別マーケティングは企業にとって有効な販促策になりそうだ。ただし、ウルフ氏が自著で指摘しているように、「過剰な個客対応はかえってマイナス」である。顧客の気持ちを害さないように実践することが重要だろう。

出典:ITpro「今日のキーワード」(C)日経BP社

[2014年 5月 1日 公開]