生産管理とは? 製造業における目的や業務内容、よくある課題を分かりやすく解説

2024年 4月15日更新

生産管理は、受注から納品までを含む、製造業において必要不可欠な業務です。一言で生産管理といっても生産計画から受注管理、発注管理、在庫管理、製造管理、工程管理、外注管理、進捗(しんちょく)管理、品質管理に至るまで、さまざまな業務が含まれます。ここでは、製造業における生産管理の目的や具体的な業務内容を分かりやすく解説すると共に、生産管理システム導入による改善事例もご紹介します。

生産管理システムとは

生産管理とは?

生産管理とは、製品を効率的に生産するための業務全般を指す言葉です。具体的には、生産計画の策定、受注管理、発注管理、在庫管理、製造管理、工程管理、外注管理、進捗管理、品質管理などの業務が含まれます。

生産管理では、モノづくりにおいて重要な「品質(Quality)・原価(Cost)・納期(Delivery)」の三つの要素(QCD)を最適化することを目指します。顧客満足度を向上させて企業の競争力を高めるために、生産管理は欠かせない業務です。

生産管理とは?

生産管理の目的

生産管理の目的は、「品質の良いモノを(Q)、原価を抑えて(C)、短納期で作る(D)」ことです。「良いもの」を「できるだけ安く」「都合のよいタイミング」で欲しいという顧客の要望に応えて顧客満足度を向上させ、売上の増加と適正利益の確保を目指します。

QCDを向上させるには、「計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)」のPDCAサイクルを回しながら自社で行っている業務を継続的に改善しなければなりません。自社の課題を把握したうえで、作業の標準化や人・モノ・設備といった生産資源の最適化に取り組み、QCDを向上させていきましょう。

生産管理の範囲と主な業務内容

生産管理に含まれる業務の範囲は幅広く、実際にどのような業務を行うのかは企業や業種によって重点ポイントは異なりますが、QCDを最適化するために、納期・在庫・工程・原価を重点的に管理しなければならない点は共通です。ここでは、これらを管理するための具体的な業務内容をご紹介します。

 主に納期に関わるもの主に在庫に関わるもの主に工程に関わるもの主に原価に関わるもの
生産計画 
受注管理  
発注管理 
在庫管理 
製造管理
工程管理  
外注管理 
進捗管理  
品質管理  

生産計画

生産計画は、将来の一定期間内に製品をいくつ、どのような方法で生産するかを計画する業務です。受注情報や販売計画などの見込み情報を基に、在庫状況、製造現場の設備や人員の負荷状況なども考慮しながら、「いつ(生産日)、なにを(品目)、いくつ(数量)、いつまでに(納期)」作るかを管理します。製造現場は生産計画に沿ってモノづくりを行うため、ムダやロスの多い計画はQCDを下げる要因となります。このことから、生産計画はQCDを最適化するうえでの基盤となる重要な業務といえます。

受注管理

受注管理は、顧客からの注文状況や受注残などを管理する業務です。具体的には、顧客からの注文を受け付けて「いつ(受注日)、どこから(受注先)、なにを(品目)、いくつ(数量)、いくらで(金額)、いつまでに(納期)」といった情報を管理し、在庫の確認や生産計画との連携などを行います。生産計画は在庫情報と受注情報を基に策定されるため、正確な情報を素早く共有しなければなりません。受注管理は顧客の要求を正確に把握し、納期を守るために不可欠な業務といえます。

発注管理

発注管理は、製造に必要な材料や部品をサプライヤーに対して発注したり、入荷待ちの発注残を管理したりする業務です。生産計画などを参考にしながら「いつ(発注日)、どこへ(発注先)、なにを(品目)、いくつ(数量)、いくらで(金額)、いつまでに(納期)」発注するかを検討し、発注先との交渉や納期調整なども行います。発注管理は部材の欠品による生産の遅れや在庫過多を防ぐために重要な役割を担う、QCDに大きな影響を与える業務です。

在庫管理

在庫管理は、材料・部品・製品などの在庫を効率的に管理する業務です。「なにが(品目)、どこに(倉庫・棚)、いくつ(数量)あるのか」という現在庫管理と今後は、「いつ(予定)、いくつ(数量)、入り(入庫)、あるいは、出て(出庫)いくのか」という将来の有効在庫管理も行います。在庫が少なすぎると顧客の需要に柔軟に対応できなくなりますし、多すぎても廃棄や管理のコストがかかるため、在庫を過不足なく管理することがとても重要です。

在庫管理とは? 生産管理システムによる改善

製造管理

製造管理は、製品を実際に製造するプロセスや実績を管理する業務です。製造現場に対して「なにを(品目)、いくつ(数量)、いつまでに(納期)、どのように(工程・作業)作るのか」という生産指示を出したり、実績を管理したりします。生産計画が月単位などの大まかなスケジュールを策定するのに対して、製造管理では製造現場に近い目線から日単位・時間単位でより詳細な計画を策定するのが特徴です。製造プロセスがスムーズに進行し、製品を高品質かつ効率的に生産するために、不可欠な業務といえるでしょう。

工程管理

工程管理は、製品の製造プロセスを細かい工程に分け、効率的に作業できるように管理する業務です。「どの工程で、どのように製造するのか」を検討し、作業手順や必要なスキル、標準時間、品質管理の方法などを設定します。工程管理によって一つ一つの工程を最適化することによって生産性や品質の向上が期待でき、製造プロセス全体の効率化につながります。

工程管理とは? 目的や手法、生産管理システム導入のメリット

外注管理

外注管理とは、自社では行えない、または行わない一部の製造プロセスを外注先に委託して管理する業務です。「なにを(品目・工程・作業)、どこに(外注先)、いくつ(数量)、いつまでに(納期)」に製造してもらうかを管理すると共に、外注先への支給品がある場合は「なにを(品目)、どこに(外注先)、いくつ(数量)、いくらで(有償/無償)支給した」かの管理および預け在庫の管理も行います。外注管理は企業が生産能力を拡大したり、自社では対応できない専門的な作業を委託したりする際に不可欠な業務です。

進捗管理

進捗管理は、製造の進捗状況を定期的にモニタリングして、計画どおりに進行しているかを管理する業務です。具体的には、「どの工程の、どこで(作業ライン、社内/社外)、なにを(品目)、いくつ(数量)、どのように(作業)、いつまでに(納期)」といった計画に対して、「実際にどこまで進んでいるのか」を管理します。実際の製造現場では何らかの要因によって計画どおりに進行できない状況が頻繁に発生するため、遅延の発生を素早く検知して調整・対策をしなければなりません。製造プロセスをスムーズに進行して納期を守るために、進捗管理は重要な業務といえます。

品質管理

品質管理とは、製品や製造プロセスが一定の品質基準や要求仕様を満たすように管理する業務です。検査方法や品質基準を設定したうえで、「なにを(品目)、いつ(日付)、いくつ(数量)」検査した結果、「良品と不良品がそれぞれいくつ(数量)で、不良の場合は、なにが不良だったのか(不良原因)」を管理します。品質管理では、単に不良を発見するだけではなく、不良の原因を特定して再発を防止しなければなりません。不良品の削減は品質向上だけでなく、コスト低減や納期短縮にもつながるため、QCDに直結する重要な業務です。

5W2Hによる管理

生産計画
なにを、いつ、どこで、だれが、いくつ製造するか
受注管理
なにを、どこへ、いくつ、いくらで、いつまでに納品するのか
発注管理
なにを、どこから、いくつ、いくらで、いつまでに仕入するのか
在庫管理
なにが、どこに、いくつあるのか。さらに今後は、いつ入り(入庫)あるいは出て(出庫)いくのか
製造管理
なにを、いくつ、いつまでに、どのように製造するか
工程管理
どの工程で、どのように製造するのか
外注管理
なにを、どこに、いくつ、いつまでに外注(支給がある場合は支給)するか。外注先に支給品の在庫はいくつあるか
進捗管理
計画・予定に対して、実際にどこまで進捗しているか
品質管理
品質検査の結果、良品と不良品がそれぞれいくつあるのか。不良品の原因はなにか

5W2Hによる管理

生産管理が抱える課題と改善方法

上述したとおり、生産管理には複数の部署にまたがる幅広い業務が含まれています。生産管理を効率的に行うには各部署が密に連携する必要がありますが、実際はうまく連携できていない企業も少なくありません。ここでは、生産管理でよくある課題と改善方法をご紹介します。

各部署がそれぞれ独自に管理している

営業・設計・購買・製造などの各部署が個別に情報を紙やExcelで管理しているため、別の部署が持つ情報を把握できないという企業は多いのではないでしょうか。各部署でバラバラに管理していると、情報伝達のミスや遅延が発生し、生産効率が落ちてしまう恐れがあります。各部署の持つ情報を一元管理できる仕組みを構築し、情報共有の手間を削減するとよいでしょう。

属人化した生産管理により、担当者がいないと業務が滞ってしまう

生産管理が属人化してしまうと、その担当者の不在時に業務が滞ってしまう恐れがあります。また、担当者自身も休暇が取りづらくなり、特定の人に負担が偏ってしまうことが考えられます。事業の安定性を確保するためにも、情報を整備し業務プロセスを標準化し、ほかの担当者や後任者がスムーズに業務を遂行できるようにしましょう。

リアルタイムに在庫管理ができず、在庫過多や欠品に陥りやすい

在庫の増減や入出荷の情報をリアルタイムに把握できていないと、正確な在庫状況が分からず在庫過多や欠品が発生しやすくなります。特に将来の在庫予測や生産計画に基づく適正在庫の管理は難しく、コストの増加や納期遅延につながる恐れがあります。製造プロセス全体の効率性と企業の競争力に大きく影響するため、リアルタイムに在庫管理できる仕組みは不可欠といえるでしょう。

トラブルが発生したときに、スピーディーに対応できない

部署や担当者の間で情報が共有されていないと、トラブル発生時に迅速に対応できない恐れがあります。トラブルの解決に時間がかかると、当初の計画に対して遅れが発生してしまい、納期遅延につながることも考えられます。また、情報共有の不足は企業の意思決定にも悪影響を及ぼし、競争力を低下させることもあります。各部署の持つ情報を一元管理できる仕組みを構築し、必要な情報をスピーディーに共有できるようにしましょう。

ノウハウの共有や標準化ができていない

担当者がそれぞれの経験や判断に基づいて業務を行っていると、担当者が変わると業務の品質がバラついてしまい、QCDを安定させることができません。各担当者が持つノウハウを共有し、業務の標準化に取り組むことによって、QCDを維持・向上させることができます。

生産管理システム導入によるメリット

生産管理をスムーズかつスピーディーに実施するには、モノづくりに関するあらゆる業務と情報を一元管理できる生産管理システムの導入がおすすめです。生産管理システムを導入することで、納期・在庫・工程・原価を「見える化」することができ、QCD(Quality:品質、Cost:原価、Delivery:納期)を最適化しやすくなります。それぞれの部署や担当者がExcelやAccessで管理していた情報を生産管理システムに集約でき、属人化を防ぐことも可能です。

生産管理システムとは? 導入のポイントや業種別の選び方

生産管理システム導入までの流れ

生産管理システムを導入するまでには、検討・導入・稼働の大きく三つのフェーズがあります。検討フェーズでは、経営トップも現場も巻き込みながら、導入の目的をしっかり見据え、自社に必要な要件を定義し、自社の業種に合ったシステムの選定をすることが大切です。導入フェーズでは、導入の目的を見失わないように注意しながら、各部署の準備のための負荷に配慮しながら構築していきましょう。稼働フェーズでは、本稼働前後での継続的なプロジェクト活動が重要となります。生産管理システムの導入に失敗しないためにも、各フェーズでのポイントもしっかり押さえながら進めていきましょう。

生産管理システム導入までの流れ<検討編>

生産管理システム導入までの流れ<導入編>

生産管理システム導入までの流れ<稼働編>

大塚商会の生産管理システム

「生産革新ファミリー」は、お客様の要望を製品開発に生かした大塚商会のオリジナル生産管理システムで、六つのパッケージシステムにより全ての製造業に対応しています。受発注、在庫、品質、原価など、さまざまな生産管理の悩みを解決し、販売や会計など基幹業務システムとのデータの相互連携も実現します。

生産管理システム「生産革新ファミリー」

「組み立てが中心・繰返受注がメイン」の製造業向け生産管理システム

生産革新 Fu-jin

「生産革新 Fu-jin」は、販売管理と一体化された組立業向け製販一気通貫型の生産管理システムです。製品構成が決まっている標準品の見込・受注生産に対応し、構成部品の発注・在庫管理や製造・進捗、出荷・売上、請求・入金・支払などをトータルに管理。自社工場を持たないファブレス企業にも対応できます。

「組み立てが中心・繰返受注と個別受注」の製造業向け生産管理システム

生産革新 Raijin

「生産革新 Raijin」は、標準品や規格品の“繰返生産”と、個別品や特注品の“個別受注生産”との両方に対応したハイブリッド型の生産管理システムです。また、販売管理と一体化された組立業向け製販一気通貫型のシステムであるとともに、部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」と連携し、設計部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減、納期短縮、生産効率の向上を実現します。

「部品構成表管理」の製造業向け生産管理システム

生産革新 Bom-jin

製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

「加工が中心・繰返受注」の製造業向け生産管理システム

生産革新 Ryu-jin

「生産革新 Ryu-jin」は、自動車・電気部品や、金属・樹脂・食品などを繰返生産・量産加工する製造業に特化した生産管理システムです。内示・フォーキャスト・確定受注などの情報を基に、変化に強い柔軟な生産計画が行え、工程間の仕掛在庫なども含めた在庫の適正コントロールが可能です。

「加工が中心・繰返受注と個別受注」の製造業向け生産管理システム

生産革新 Wun-jin SMILE V Air

「生産革新 Wun-jin SMILE V Air」は、販売管理をベースに工程管理や製造指図書発行などが行える、カンタン&シンプルなオールインワンパッケージのクラウドSaaS型システムです。「大げさな生産管理システムは必要ない」といったお客様のご要望にお応えします。また、クラウド利用で初期費用を抑えることによって、これまでシステム導入が難しかった小規模加工業様もすぐにご利用いただけます。

「配合が中心・繰返受注」の製造業向け生産管理システム

生産革新 Blendjin

「生産革新 Blendjin」は、化学製品・食品・香料・化粧品・薬品などを配合する製造業向けの生産管理システムです。配合表・レシピをもとに材料手配、製造指示、製品・材料・資材などの在庫管理や、ロットトレース機能による品質管理をトータルにサポートします。

生産管理システム導入による改善事例

生産管理システムを導入し、生産管理の効率化を実現させた企業の事例をご紹介します。

株式会社武井製作所

  • 事業内容

    商用車や建設機械部品分野の精密機械加工

設備稼働状況の可視化により10%稼働率向上を実現。400種類の帳票のペーパーレス化を実現

株式会社武井製作所は「ものづくりDX」の先進企業であり、他社に先駆けて2005年に生産管理システム『生産革新 Ryu-jin』を導入しました。生産管理システムは今日まで同社の効率的な生産計画立案や適正な在庫管理に貢献しています。また、ISOへの対応や働き方改革を推進するために手書き帳票を電子化する『ConMas i-Reporter』、設備の稼働状況を可視化するIoTソリューション、グループウェア『NI Collabo 360』などを導入し、「工場の見える化」を実現しました。

「工場の見える化」に取り組んだことで各設備が何時間稼働したかがデータで見えるようになり、10%の稼働率向上を実現。また、400種類に及ぶ帳票をペーパーレス化したことで情報の検索性が高まり、スムーズな情報共有が可能となりました。

事例詳細をPDFでご覧いただけます。

導入システム:生産革新 Ryu-jin/ConMas i-Reporter/MotionBoard/Dr.Sum/NI Collabo 360/Sales Force Assistant/Sales Quote Assistant

事例詳細をダウンロード

  • 形式:PDF
  • ページ数:5ページ

株式会社日本自動調節器製作所

  • 事業内容

    流体を制御する各種自動調節弁の製造・販売

紙ベースの集計業務が40%減少。5人工の固定費(3000万円相当)の削減を実現

株式会社日本自動調節器製作所は、紙ベースでの運用によって発生していた「二重入力・二重チェック」「手入力による在庫のズレ」「紙による集計作業」といった非効率な業務を改善するために生産管理システム『生産革新 Raijin SMILE V』を導入。社内でプロジェクトチームを発足し、システムの標準機能に自社の業務フローをできる限り合わせる形で、抜本的な業務改善を図りました。

生産管理システムの導入によって紙ベースの業務が約40%なくなり、5人分の固定費を削減することに成功しました。また、生産管理システムとBIダッシュボード「MotionBoard」を連携させて限界利益率や工程別納期順守率、残業時間、営業予算達成状況、不良率などのデータを「見える化」することで、社員の業務改善の意識が高まり、データドリブン経営をいち早く実現できました。

事例詳細をPDFでご覧いただけます。

導入システム:生産革新 Raijin/SMILE Custom AP Builder(CAB)/MotionBoard/ConMas i-Reporter/T-4OO

事例詳細をダウンロード

  • 形式:PDF
  • ページ数:5ページ

まとめ

製造業にとって生産管理は、利益に直結する重要課題です。大塚商会では、製造業の問題解決に特化した専門チーム「製造SP」が、生産管理システムの導入にあたっての目的設定から課題の抽出、最適な新業務フローの策定など、パートナーとしてご支援しています。「改善したいけれど、どこから手をつけてよいのか分からない」という方はお気軽にご相談ください。

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生産管理システムの検討に役立つ資料

生産性向上や業務改善につながる「生産管理システム」は正しい手順による導入と、効果的な運用の実現が必要です。「生産管理システム導入を成功させるポイント」では導入の流れを「検討」「導入」「稼働」の三つのフェーズに分けて、行うべきことや気をつけるポイントについて分かりやすく解説しています。

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