どうすれば流用化・標準化設計が進むのか︖~生産革新ユーザー会レポートDay2

2022年10月12日(水)に開催した生産革新ユーザー会「分科会ワークショップ 2022年秋」Day2では、全体でのディスカッションや「どうすれば流用化・標準化設計が進むのか?」というテーマでのグループ対話を実施しました。

前回のDay1では、「なぜ流用化・標準化設計は進まないのか?」というテーマでのグループ対話において、「設計者のルールが決まっていない」「時間を捻出できない」「特注仕様が多い」といった設備系製造業に共通する課題が見えてきました。今回のDay2では、ご参加いただいたユーザー企業の皆様からの声から、それらの課題を乗り越えて流用化・標準化設計を進めるためのヒントを得ることができます。

本レポートが、流用化・標準化設計に取り組もうと考えている方にとって参考になれば幸いです。

グループ対話「Day1の振り返り・自社に戻って改めて感じたこと」

Day2では、 Day1の振り返りと、自社に戻って改めて感じた事に関するディスカッションを行いました。

ユーザー企業の声

  • 作業の標準化やルール作りが改めて重要だと感じた
  • 他社も同じ悩みを抱えながら取り組んでいることが分かり、勇気づけられた
  • 誰が設計しても同じ成果物を作成できる仕組みづくりを進めたいと感じた
  • 自社には強力なリーダーシップを持つ経営者がいて助かった
  • ツールをどのように使うべきか、改めて考え直す必要があると感じた
  • 設計以外の部門とも連携しながら、流用化・標準化設計に取り組み始めた
  • 流用化・標準化のための時間をどのように捻出すべきかで悩んでいる
  • 課題はいろいろとあるが、まずは実行していくことが重要だと感じた

全体ディスカッション ほかの企業はどうしている? BOM構築と部門間連携

フリーディスカッションの中で話題となった二つのトピックスを紹介します。

E-BOMとM-BOMの連携・構築をどのように行っている?

  • 質問


    「E-BOM(設計BOM)とM-BOM(製造BOM)の連携・構築をどのように行っているのか、ほかの企業の運用方法を知りたい」
  • 回答


    ・M-BOMの構築には手間がかかり、メンテナンスも大変なので、M-BOM寄りのE-BOMだけを構築して管理するものを一つにまとめている
    ・設計部門が構築したE-BOMを製造部門や調達部門でも編集できるようにしており、各部門がM-BOMを構築している
    ・設計部門ではE-BOMをしっかりと作り込んでおき、M-BOMの構築は製造部門に任せている

設計部門と製造部門の連携のためのツール、どうやって導入した?

  • 質問


    「設計部門と製造部門でスムーズにデータを連携させたいが、それができない形でツールを導入したため一気通貫で運用できず、課題を感じています。皆さんはどのように進めていますか」
  • 回答


    ・経営者がリーダーシップを発揮してツールの導入を推進したので、設計・製造で連携できる形で導入できた
    ・経営者が既存システムの置き換え期限を設定し、後戻りできない状況を作って新しいツールの導入を推進した
    ・経営者の判断のもと、事前にBOM構築の勉強を2年ほどした上でツールを導入した
    設計部門と製造部門でデータを連携できている企業より、ツールの導入は経営者が推進していたという声が多くあがりました。

グループ対話「どうすれば流用化・標準化設計が進むか?」

各グループの対話の中から見えてきた、流用化・標準化設計を進める上で重要なポイントを三つにまとめて紹介します。

流用化・標準化設計を進めるためのルールを作る

「どうすれば流用化・標準化設計が進むのか?」という問いに対して多くの企業が答えていたのが、設計者のルールを作ることです。例えば、すでに流用化・標準化設計に取り組んで成果を上げている企業からは、次の四つのステップで進めていくのが効果的という意見をいただきました。

  1. 構成と属性を定義する
  2. 構成のツリー形状(階層や順序)を定型化する
  3. 検索性を向上させるために属性を付与する
  4. 2と3を自動化する

構成(ツリー)形状を定型化し、設備(=Assy)を構成するSubAssyの単位でブロック玩具化することが、流用化・標準化設計につながるという内容です。また、2と3は地道な作業の繰り返しとなり、人の手で行うのは大変ですが、ITの力を借りて自動化すればさらに流用化・標準化設計が進みやすくなるというアドバイスもいただきました。

ほかの企業からも、次のような形で設計者のルール作りをすれば流用化・標準化設計が進みやすくなるという意見が出てきました。

  • 日本語による表記ゆれの防止や海外展開を見据えて、英語表記に統一する
  • BOMシステムの単語帳機能を活用し、自由記述ではなく単語帳からの選択式にする
  • 二重登録を防止するために、過去のデータを検索するルールや登録方法を決める
  • 3D設計ソフトを活用し、属性情報まで含めた設計データを作成・出力する

流用化・標準化設計を推進できる体制を構築する

上述した設計者のルール作りと同様に、多くの企業が共感していたのが強力なリーダーシップの必要性です。実際に、長年流用化・標準化設計に取り組んできた企業からは経営者の決裁のもと、社内でプロジェクトを立ち上げて一気に取り組みを進めなければなかなか続かないという経験談を共有していただきました。設計者個人が少しずつ作業を進めていたり、業務時間外に作業をしたりしていると疲弊してしまうため、プロジェクトメンバーで毎週進捗(しんちょく)を確認しながら進めるなど、会社として流用化・標準化設計を推進できる体制を構築すべきとのことです。

流用化・標準化設計は設計部門の効率化だけでなく、会社全体の効率化につながる重要な取り組みです。経営者がその重要性を認識し、強力なリーダーシップを発揮して社内に働きかけていくことが、流用化・標準化設計を進めるためのカギとなるでしょう。

特注仕様に関する考え方を改める

設備系製造業で流用化・標準化設計が進まない理由の一つが、顧客要求に合わせた特注仕様の存在です。特注仕様ばかりだと五月雨式に対応せざるを得ず、設計変更も頻繁に発生してしまいます。実際に参加いただいた多くの企業が特注仕様に悩まされており、流用化・標準化は難しいという意識を持っておられました。

流用化・標準化設計を進めていくためには、特注仕様に関する考え方を改めなくてはなりません。例えば、顧客との窓口である営業部門と連携し、できる限り標準的な設備やユニットの組み合わせで顧客に提案することで、特注仕様を削減できる可能性があります。

また、特注仕様とはいっても、全ての部品・ユニットが必ず特注になるわけではありません。大半の部品・ユニットは標準品を使用し、一部のみを入れ替えるだけで顧客要求に応えられる場合もあるでしょう。特注でない部分だけでも流用化・標準化設計に取り組んでいけば、設計工数を大幅に削減でき、設計者が新製品の設計といった付加価値の高い業務に集中できるようになります。

グループ対話「自社に持ち帰って実行したいこと」

Day2の最後には、「自社に持ち帰って実行したいこと」をテーマに再度グループ対話を実施しました。

ご参加いただいたユーザー企業の意見

  • すでに流用化・標準化に取り組んではいるが、まだまだ道半ばなので拡大していきたい
  • あれもこれもと取り組むのではなく、粒度を細かく捉えてできるところから流用化・標準化を進めていきたい
  • 海外展開を見据えつつ、英語表記への統一といったルール作りを進めていきたい
  • 流用化・標準化の優先度が低い状況だったが、重要度を認識したので進めていきたい
  • 特注品であっても一部であれば標準化できると感じたので、実践していきたい
  • 社内でプロジェクトを立ち上げて、流用化・標準化を進めていきたい
  • ほかの企業も同じことに悩んでいることが分かり、流用化・標準化に取り組むモチベーションがあがった

終わりに

生産革新ユーザー会「分科会ワークショップ 2022年秋」Day2では、参加いただいた企業による活発な意見交換・情報共有によって、流用化・標準化設計を進めるための方法が明確になりました。

流用化・標準化設計に取り組むことや、継続することは容易ではありません。しかし、「成功するまでやめないこと」、「現状を変える勇気を持つこと」が、設備系製造業におけるDXを成就させるカギとなります。

流用化・標準化は長期的な取り組みになりますが、本レポートを参考にしつつ少しずつでも取り組みを始めていただければ幸いです。

製品紹介

生産革新 Bom-jin

生産革新 Bom-jin

部品標準化・流用率向上によりコスト削減・納期短縮を実現する部品構成表管理システム。部品標準化や生産管理データ連携を重視した「品目台帳」「部品構成表」の構築、設計技術部門の効率化、成果物の価値向上をサポート。

Bom-jinを導入している企業の事例

株式会社キラ・コーポレーション

事業内容:切削加工自動化ライン、切削加工機、難削材加工機、ボール盤/タッピング盤の製造・販売

部品標準化・流用率向上によりコスト削減・納期短縮を実現する部品構成表管理システム。部品標準化や生産管理データ連携を重視した「品目台帳」「部品構成表」の構築、設計技術部門の効率化、成果物の価値向上をサポート。

株式会社ワイエイシイデンコー

事業内容:フラットパネルディスプレイ用熱処理装置、電子部品用加熱装置、自動車用熱処理装置、遠赤外線ヒーターおよび応用機器の設計・製造・販売

標準原価の大きな割合を占めている設計コストの抑制を目的に『生産革新 Bom-jin』を導入。各設計者が手掛けた部品などの設計データを全社で共有・流用できる仕組みを構築した。さらに『生産革新 Bom-jin』と3D CADの連携によって部品の手配漏れがなくなり、下流工程での業務効率が向上した。

生産革新 Raijin

生産革新 Raijin

標準品や規格品の"繰返生産"と、個別品や特注品の"個別受注生産"との両方に対応したハイブリッド型の生産管理システム。BOM(部品構成表)連携で設計からの一気通貫を実現。

Raijin&Bom-jinを導入している企業の事例

株式会社東伸

事業内容:産業用自動化機器(主にスリッター、リワインダー)の設計・製造・販売およびシステム開発

後発メーカーの台頭に伴い、従来の技術や開発手法の変革に取り組むため、社長直属の全社改革プロジェクトを発足。『生産革新 Bom-jin』を導入して流用化・標準化設計に着手し、重複作業や無駄な設計を削減した。また、『生産革新 Raijin』と『生産革新 Bom-jin』の連携によって設計側のBOMデータが製造側の生産管理システムまで一気通貫で流れるようになり、コスト削減、納期短縮、品質向上につながった。

生産革新ユーザー会「分科会ワークショップ 2022年秋」開催レポート

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