公認会計士・税理士
税理士法人ファーストライン 代表社員
増田 卓也(ますだ たくや)
大手監査法人にて、金融機関・外資系金融機関、製造業などの会計監査に従事した後、税理士法人ファーストライン代表社員に就任。現在、金融機関の会計監査の経験を生かし、中小企業や個人事業者を対象とした税務顧問、資金繰り改善支援、経営支援に従事している。
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[2017年 2月 1日公開、2023年12月27日更新]
令和5年度の税制改正により「中小企業経営強化税制」がさらに2年延長され、令和7年3月31日まで。今回はその優遇措置について詳しく解説します。
「中小企業経営強化税制」の優遇措置は、一定の設備が対象となり、その税務措置には即時償却または税額控除の二つがあります。即時償却は文字通り、全額を取得した年に償却できるものです。対象設備の取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の法人税額を少なくする税額控除との選択適用となります。では、即時償却と税額控除のどちらがお得なのでしょうか?
まず、即時償却についてです。通常、設備の購入にかかった金額は減価償却という方法で設備の耐用年数にわたって少しずつ減価償却費として経費になります。照明設備であれば耐用年数が15年です。減価償却の方法は定額法で15年間に均等に分けて経費となります。
即時償却はこの15年にわたる減価償却に替えて、購入した時に全額経費にしてもよいというものです。即時償却した場合には次の年からその設備の減価償却費はなくなるので、長い目でみれば経費にできる金額は変わりません。
一方、税額控除とはその名の通り、設備を購入した年度の税額から控除されます。資本金3,000万円以下の法人で、常時使用する従業員が1,000人以下である資本又は出資を有しない法人または個人事業主などの中小企業者等は10%の税額控除が適用されます。多くの中小企業はこの要件に該当するのではないでしょうか。
その場合、購入設備の金額の10%がその年に支払う法人税から差し引くことができます。控除する額はその年の法人税額全体の20%が上限となりますが、超過した分は翌年に繰り越せることが大きなメリットでしょう。
ただ、100万円の税額控除を受ける場合、その年と翌年で支払う法人税が500万円に満たないと全額が控除できないので注意が必要です。なお、税額控除を選択した場合であってもその設備の減価償却は通常通りとなり、照明設備であれば15年にわたって購入した金額が経費となります。
具体的な数値で即時償却と税額控除を比較します。特定中小企業者が1,000万円の照明設備を購入したとします。実効税率は33%とします。即時償却の場合は購入した年に1,000万円が経費になります。その年の税金が減る効果は330万円ですが、次の年からの減価償却費がなくなり、15年累計で330万円税金が増えます。一方、税額控除の場合は購入した年に100万円の税金が減る効果があり、その後税金は増えません。
単純に考えると、トータルで税金が変わらない即時償却より100万円税金が減る税額控除の方がお得になります。ただし、その年だけやけにもうかってしまった会社や個人事業主は税率の関係で即時償却の方がよい場合もあります。また、その年に戻ってくる330万円を元手に100万円以上利益を出せる場合も即時償却が有利になります。状況によって有利な方法は変わりますので、顧問税理士とよく相談して決めることをお勧めします。
最適な導入方法の考え方は企業によってさまざまです。これまでのまとめを行いながら、「資金繰り計画」を中心にとらえた内容をお届けします。
公認会計士・税理士
税理士法人ファーストライン 代表社員
増田 卓也(ますだ たくや)
大手監査法人にて、金融機関・外資系金融機関、製造業などの会計監査に従事した後、税理士法人ファーストライン代表社員に就任。現在、金融機関の会計監査の経験を生かし、中小企業や個人事業者を対象とした税務顧問、資金繰り改善支援、経営支援に従事している。
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