第13回 銀行が金利を引き上げたいと言ってきた時に・・・

■金利引き上げキャンペーンの実態

銀行から、突然、

「今、受けている融資の金利を引き上げてほしい。」

と言われた場合、どうしますか?

銀行からの金利引き上げ要請の背景には、銀行本部から各支店への指示があります。

金利を引き上げることは、銀行としては利益の増加を意味します。利益の増加を目的として、時々、銀行は、「金利引き上げキャンペーン」を全行あげて行うのです。

金利引き上げキャンペーンを行う時、まず銀行の本部から各支店に、融資先一覧が配布されます。その融資先一覧には、各融資先が受けている融資1本1本の金額と、金利が記載されています。また各融資先の信用格付けも記載されています。

銀行では、信用格付けの別に、基準金利が決められています。基準金利は、信用格付けのほかに、保全率、各融資の返済期間によって決まります。

保全率とは、融資先の融資総額と、その融資の中で保全されている融資、つまり信用保証協会の保証が付いていたり、担保でカバーされていたりする融資のことで、融資総額を分母、その中で保全されている融資を分子として計算されます。

その基準金利と実際の融資1本1本の金利とを比較して、得意先係の銀行員はそれぞれの金利の引き上げ目標を、本部から渡された一覧表に記載します。

このように、まずは銀行の得意先係が各融資の金利引き上げ目標を一覧表に記載し、上司に提出するところから始まります。

またその一覧表は、金利引き上げの交渉記録を書けるようになっています。

ちなみに、次は一覧表のイメージです。
A社 格付け6

1.残高28,000千円 返済期間3年 残返済期間2年3ヶ月 
 現在金利2.2% 引き上げ目標2.8%

2.残高16,000千円 返済期間3年 残返済期間1年4ヶ月
 現在金利1.9% 引き上げ目標2.5%

3.残高5,000千円 返済期間1年 残返済期間6ヶ月
 現在金利1.4% 引き上げ目標2.0%

金利引き上げ目標を一覧表に記載し、金利引き上げに向けて、得意先係は一斉に動き出します。

■銀行からの金利引き上げ要請の応対方法

では、銀行からあなたの会社に金利を引き上げさせてほしいと言ってきた場合、あなたはどうすればよいでしょうか。

答えは、あなたの会社が次の1、2、いずれの状態であるか、により異なってきます。

1.あなたの会社が優良な財務状況で、銀行からいつもお金を借りてほしいと言われている場合

2.優良な財務状況ではないが、銀行とは友好な関係を保っていきたい場合

あなたの会社が1の場合、金利引き上げ要請は断ればよいです。多くの銀行から、お金を借りてほしい、と言われていることでしょう。金利引き上げを要請してきた銀行から融資を受けなくても、他にも選択肢はたくさんあるはずです。強気に、金利引き上げの要請を断ってください。

あなたの会社が2の場合、まず、銀行が希望する金利を銀行から聞きます。
例えば、ある融資の現在の金利は2.0%、銀行の要請する金利は2.5%の場合。 あなたは、その要請を受けた場合、その場では「考えておく。」と言って終えます。

そして後日。再度銀行から、金利を2.5%にさせてほしいと言ってきた場合。その時も、金利引き上げはきっぱりと断ります。
それでも銀行員が粘ってくる場合。

「では、0.1ポイント引き上げでいいよ。」

と言ってあげます。

その銀行員は、金利をなんとか引き上げたい、と思っています。しかし、はじめに要請した2.5%の金利まで引き上げたい、とは思っていません。
ほんの少しでもよいから、金利を引き上げたという「成果」がほしい。
銀行員の心理としては、そういったところです。だから、0.1ポイント引き上げの成果でよいのです。それでおさまります。

このように、銀行から金利引き上げの要請を受けた場合、あなたの会社がどういう状況かを考えて、その状況に応じた交渉をあなたは行うとよいです。

銀行は、一つの支店で500社以上もの融資先に融資を行っています。あなたの会社が銀行の希望通りに金利を引き上げさせてくれなくても、それは銀行の支店にとって、500分の1のできごとにすぎないのです。

金利引き上げの要請を銀行から受けても、勇気をもって応対しましょう。

次回は10月14日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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