第29回 個人宅への納品時に求められる輸送品質

この世の中で線や管で繋がっているもの以外は全て、どこかの運送会社が運んでいると言えます。

一口に運送会社と言っても“運ぶもの”の違いから、そのカテゴリーは無数に存在しています。

「衣・食・住」と称される衣類・食品・建材をはじめ、鉄や液体や粉など何かの部品や原料になるものまで多岐に渡ります。

中にはバイクや車や電車など、何かを運ぶものを運ぶ仕事もあります。

さらに引越しとは依頼主様の人生の岐路に立ち会うようなものです。

だから品質に関する研修は、運ぶものの違いと同じ数だけのレパートリーが必要です。

その数は、車両タイプや運行経路の違いによりプログラムを変える安全の研修とは、比べものにならないほど。

それは運ぶものにより納品先が変わるから。

そして、求められる品質のレベルが納品先によって大きく変わるから。

たとえば「会社や店舗宛の納品」と「個人宅への納品」では、求められる品質のレベルに大きな差が生じます。

「個人宅への納品」の方が、求められる品質が断然高いのです。

「なぜ個人宅への納品では高品質を求められるのか」を説明する時に、このような事例を挙げることがあります。

「本屋さんで平積みされた本を買う時に、一番上に積まれた本を買いますか?」と問います。

「多くの人が手にしたであろう一番上に積まれた本ではなく、上から2冊目や3冊目の本を持ってレジに向かった経験はございませんか?」

もちろん私もその経験者のひとり。

続けて「これが会社の費用で同じ本を10冊購入する場合はいかがでしょうか?」と問います。

「自分でお金を出していないとの気持ちから、一番上に積まれた本を含めて10冊を持ってレジに向かった経験はございませんか?」

「この違いはなんでしょう」と考えます。

自分が使うものと、会社で使うものの違いでしょうか。

もしくは自分がお金を出したものと、会社がお金を出したものの違いでしょうか。

特に自分が高額なお金を出して自分が長く使うものが届く場合、その届け方や届く商品に厳しい品質の目が向けられるようです。

安全の研修時には「交通事故や安全対策は他人事ではなく自分事として考えましょう」と提案しています。

個人宅の納品では、荷受人様が“他人事としてではなく自分事”との厳しい目で見ています。

運送会社の品質である仕事の手順(ドライバーのマナー)と、仕事の成果(届いた商品の状態)を見ています。

そこで、「見られていると思いながら仕事をするのではなく“魅せる仕事を見せる”と考えましょう」と提案しています。

その理由は、受領のサインに「ありがとう!」と一言労いの言葉を添えてくださるのは、個人宅への納品時が多いからです。

今回のコラムは個人宅への納品で、商品と一緒に高い輸送品質を日夜届けているドライバーへの敬意を表して綴りました。

ありがとうございました。

次回は7月25日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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