第34回 地域医療連携室の業務実例

以前は、一つの病院で、風邪から骨折、そして癌(がん)まで何から何まで診てくれて、最後も看取ってくれるのが当たり前でした。しかし、ここ数年で患者と病院との関係が大きく変わり、病院が細分化、専門化しています。国も患者を一つの病院で診るのではなく、それぞれの専門性を活かして地域にある複数の病院で患者を診ていくことを診療報酬などでも推奨しています(2000年以降、診療報酬で紹介率による評価が加わり、他医療機関から患者を紹介してもらうことがより多くの収入になるようになりました)。

複数の医療機関のジョイント役になる部署が「地域医療連携室」です。
そこで今回は、病院内でも比較的新しい部署の業務を見ていきたいと思います。
地域医療連携室ですが、複数の病院の業務内容を比較するとその構成メンバーや人数、業務内容も異なることが多く、戸惑うことさえあります。ある病院の例をとってご紹介しましょう。この病院は人数も多く、業務内容も多岐に亘り精力的に取り組んでいます。

都内300床クラス 外科系急性期病院
地域医療連携室構成職種:看護師、MSW、事務 合計20名
<業務内容>
(1)近隣医師会の医師との連携強化(協定締結)
医師会の連携担当役員を窓口に、医師すべてと連携に関する協定契約を結んだ。契約締結を受けて、病院正面入り口に「○○病院連携協力医」として掲示板を設置。その後、徐々に連携協定医の数が増加している。

(2)返書チェックシステム
他院からの紹介患者に関する返書を、100%返すことを目的にシステムを構築。そのために院内の業務の整理、ルール作り、院内調整、返書管理システム(データベースソフトのAccessで独自に院内開発)運用。紹介医に対する1回目の返書については100%実施。現在は2回目、3回目についても返書を100%返すよう取り組んでいる。この返書システム成功のポイントは常に最新の患者状況把握と、頻繁かつ的確な時期に院内医師へ催促することと、経営層の協力とバックアップである。

(3)DB(データベース)作成
毎日、紹介患者が来院、あるいは病院から連携医の先生に紹介を行ったり、紹介患者の返送を行ったりしているが、これらの情報すべてを毎日システムに入力し、データベース化している。病院が開業医(顧客)管理を行なう際の貴重な情報になる。当該病院ではABC分析による(顧客)管理を行なっている。これは商品の管理手法で、ABCの3ランクに分けてAランクを最重点医療機関として管理していくもの。また、他院への紹介患者が病院に勝手に戻ってきてしまうことを防止するため、患者に安心感を与えるようなお知らせ(ハガキなど)を送付する情報源としてもデータベースを活用。

(4)広報活動
連携医に毎月「連携便り」を送付。内容は日当直医情報、医療機器や技術紹介、新任医師紹介、病院での催事紹介などで連携医が患者を紹介するにあたり病院をよく知ってもらい、親密に感じてもらうことを目的に作成している。連携医に当該病院のことを知ってもらう一方、当該病院の医師も連携医のことを知らなくてはならない。そのために連携医データファイルという連携医の情報集データベースを作成し、電子カルテ上で院内医師が閲覧できるようにしている。逆紹介を行う際に、院内の医師に活用してもらっており評価は高い。さらに院内の職員、来院している患者にも連携に関して理解を深めてもらうような啓蒙・広報活動を行っている。具体的にはポスターを院内に貼ったり、お知らせを配布したり、院長からのメッセージを院内のテレビを使って放送したりしている。

(5)共同カンファレンスの実施
医局を中心に、連携医と院内医師との共同カンファレンス(CPC:臨床病理検討会を含む)毎週月曜日に実施。製薬メーカーの協賛で開催されることもある。連携医に新たな医療知識入手の機会をつくることと、連携医と院内医師とのコミュニケーション強化のために実施。

(6)公開講座
毎月一回、一般の方を対象に医療に関する公開講座を開催し、その講師として連携医に協力してもらっている。地域住民に、連携医と病院とが密接な関係にあり、医療連携を具体的に実感してもらう絶好の機会となる。

(7)意見収集
病院に対しての意見収集の機会づくり。具体的には年一回実施するアンケート調査と、日ごろから実施している電話ヒアリング調査の実施。この調査結果を基に改善(案)の立案を行う。

(8)定期的連絡会議運営を実施
具体的には連携医との定期会議開催や救急隊との懇話会、MSW連絡会議などの企画運営になる。

(9)各病院連携室間会議運営
(4)の連絡会議とは別に、近隣病院の地域連携室と連携室間連携とを目的に会議を企画。目的は病院連携の強化と連携室業務の情報収集。

(10)季節の催事(賀詞交換会、花見、暑気払いなど)企画
ともかく連携医に病院に来てもらう機会を積極的に作り、病院の雰囲気に慣れてもらう。連携医の顔がわかり、病院の医師や職員の顔がわかり、お互いに顔を知っている関係になってもらうことが重要。

(11)地域連携室環境整備
連携室は連携医が来院した際の医局になるので、効率的かつ機能的な居心地の良い空間作りに配慮。ロッカー、白衣の準備はもちろん、パソコン、FAX設置、シャーカステンの設置、医療関連書籍の設置などを行う。

(12)予約業務
外来診察予約、入院予約、検査予約の窓口業務と院内調整を行う。紹介患者に対し、待ち時間を短縮するために、事前にカルテ作成を行ったり、入院のために病床確保を行ったりする。

これらの業務以外にも紹介患者専用窓口の受付業務や連携医からの厳しい意見の窓口など、さまざまあります。「患者紹介」の中心部署には間違いないのですが、紹介する医師は、患者は大事な自分の患者です。その大事な患者を責任もってお預かりする、紹介医に安心してもらう。というただ一点のみのことに関連する業務であればすべて地域医療連携室の業務であると考えます。
国の政策も今後大きく変更はないでしょうから、地域医療連携室の役割はますます重要になってきます。連携室の方々もその意識を持ち、高い志で業務にあたってください。期待しています。
皆さんは、どう思いますか?

次回は10月8日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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