第37回 医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案

【1】今回の法案の趣旨
持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法、介護保険法等の関係法律について所要の整備等を行う。というのが趣旨になります。

持続可能な社会保障制度については、2025年(平成37年)に、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になります。2010年(平成22年)に比べると、75歳以上の人口は全国で約760万人増加する見通しです。この増加する約760万人という人口ですが、なんと現在の愛知県の人口を上回る数です。

そしてその結果、激増するのが入院需要です。高齢者増加に伴う入院需要が増える一方、入院供給先である病院や病床は減少しています。この需要供給のバランス不均衡関係から「死に場所」が無くなる、という2025年問題になるわけです。

【2】法案の概要
◆新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)
[1] 都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置

[2] 医療と介護の連携を強化するため、厚生労働大臣が基本的な方針を策定

Point<1>
新たな財政支援制度として、都道府県に「基金」を設けます。この基金は都道府県事業に関する経費を支弁するものです。基金の財源のうち、国が負担する費用については消費税引き上げ部分の増収分が充当される予定です。ちなみに「基金」は1都道府県当たり平均19億円です。

◆地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
[1] 医療機関が都道府県知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)等を報告し、都道府県は、それをもとに地域医療構想(ビジョン)(地域の医療提供体制の将来のあるべき姿)を医療計画において策定

Point<2>
医療計画作成見直しは5年毎、都道府県介護保険事業支援計画は3年毎、となっています。今後は、両計画の整合性を一層持たせなければいけないので、2018年度以降、医療計画の計画期間を6年とし、在宅医療などの介護保険に関係する部分は都道府県介護保険事業支援計画に合わせて3年で見直すことになります。

また、計画内での地域医療構想策定には、厚生労働省から策定のガイドラインが示される予定です。ポイントは「構想区域」です。構想区域は厚生労働省令で示すことになっています。現行の二次医療圏が基準となると想定されますがガイドライン内で示されるので確認が必要です。

[2] 医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律に位置付け

Point<3>
都道府県がコントロールセンターとして、医師の地域偏在を解消するというものです。ただし、都道府県が自ら行うだけではなく、病院や大学などに委託することも可能です。さらに都道府県知事が公的医療機関などへ、医師不足病院へ医師の派遣を要請することもできるようになります。この地域医療支援センターが機能するか否かは、人員面、体制面の両面の充実、強化が課題です。

◆地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)
[1] 在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し、多様化
※地域支援事業:介護保険財源で市町村が取り組む事業

[2] 特別養護老人ホームについて、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化

[3] 低所得者の保険料軽減を拡充

[4] 一定以上の所得のある利用者の自己負担を二割へ引上げ(ただし、月額上限あり)

[5] 低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加

◆その他
[1] 診療の補助のうちの特定行為を明確化し、それを手順書により行う看護師の研修制度を新設

Point<4>
特定行為は、呼吸器関連、動脈血液ガス分析関連、循環器関連、ドレーン管理関係など14区分あります。

[2] 医療事故に係る調査の仕組みを位置づけ

Point<5>
医療事故調査に関する中心は、医療事故調査・支援センターになります。このセンターで、院内調査結果の整理、分析。病医院管理者または遺族からの依頼に応じて行う調査の実施。再発防止に関する普及啓発。医療調査に従事する者への研修などを行います。当該センターでの蓄積された知識、知見、ノウハウなどを活用することが事故発生を減少させることになるでしょう。

[3]医療法人社団と医療法人財団の合併、持分なし医療法人への移行促進策を措置

Point<6>
持ち分ありから持ち分なしへ移行を促進するということですが、出資持ち分の放棄に伴い、出資者の権利が消滅し経済的利益が医療法人に帰属することになります。その結果、医療法人を個人とみなし贈与税課税が行われますので留意が必要です。

[4]介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を27年度から28年度に延期)

「法律が変わる」ということの影響は非常に大きく、医療機関の倒産件数は、診療報酬改定後よりも医療法改正後の年のほうが多いです。それだけ経営に与えるインパクトがあるということです。

法律ですので、当然守らなくてはいけません。うまく付き合うことが大事で、できるだけ早く仲良くなる(理解して活用する)ことが重要ですね。

皆さんは、どう思いますか?

次回は1月14日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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