メタバースがファッション業界やECに与える影響とは?

「メタバース」はゲームやソーシャル分野での活用事例が知られていますが、EC分野においてもバーチャル空間でコミュニケーションを取りながら、新しい顧客体験の創造を目指す「メタバースEC」の取り組みが進んでいるのをご存じでしょうか。この記事では、メタバースECの概要や注目を浴びている理由を解説し、企業とユーザーにもたらすメリットや、現状における課題と今後の展望について紹介します。

メタバースECとは?

「メタバース(Metaverse)」は、meta(超える)とuniverse(宇宙)とを組み合わせた造語です。まだ新しい用語のため正確な定義はないものの、今のところは「自分の分身となるアバターを自由に動かし、他者と交流ができる3Dのバーチャル空間」を指す用語と考えてよいでしょう。

この技術を活用し既存の「VRChat」や「Roblox」、「Fortnite」といったメタバースサービスや、新規に作成したバーチャル空間において、3DのCGで作成したオンラインショップを出店する施策が「メタバースEC」です。ゲームを通して必要な商品を購入できるなど、新しい顧客体験が可能になることが期待されています。

メタバースECがビジネスチャンスとされる理由

ECは、店舗に出向かなくてもインターネット上でモノやサービスを売買できるシステムとして、世界中で広く浸透してきました。そして、メタバースECには新たなビジネスチャンスが秘められているとして、近年注目を浴びています。
ではなぜそのように考えられているのでしょうか。主な理由を3点ピックアップして解説します。

NFTが生まれたから

従来の技術におけるデジタル資産は、本物とコピーとの見分けが付かず、所有権を明らかにできませんでした。一方、ブロックチェーン技術(注)を駆使したNFTは、コピーしやすいデジタルデータに対して固有性を与えることで、所有権を明確にしたデジタル資産(またはそれを可能にした技術)のことを指します。NFTが誕生したことにより、デジタル資産の所有元をはっきり示せるようになります。

また、デジタル資産が固有性を持つことで、3Dなどのバーチャル空間において商品やサービスを安心して売買できるようになりました。つまりNFTは、メタバースECにとって技術的なセキュリティを支える大きな存在なのです。

  • (注)ブロックチェーン技術:情報通信ネットワーク上の端末同士を、従来の中央管理体に接続せず直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種。

コロナ禍で生まれた新しいビジネスチャンス

メタバースECが注目されるようになってきた背景には、新型コロナウイルス感染症の流行も要因の一つです。いわゆるコロナ禍が続き、自宅で過ごす時間が増加したことに伴い、他者との関わり方も大きく変わりました。リアルに人と会って話すことが減った一方で、直接接触しないメタバースの中でコミュニケーションを取りたいという願望を持つ消費者が増えたと考えられます。

例えば、アパレルショップがメタバースECに出店することで、顧客はアバターとして仮想空間の店舗に出向き、実際のリアル店舗にいるスタッフのアバターと話しながら洋服を試着、購入できるようになるでしょう。友人のアバターと待ち合わせをして一緒に買い物する、といったことが可能です。また、企業側にとっても、NFTを活用することによりメタバース内で商品アイテムを陳列、販売できるようになりました。これらの影響から、メタバースECはさらに市場拡大すると予想されています。

さまざまな業界が参入している

メタバースECには現在、業界を問わず多種多様な企業が参入しています。
コロナ禍であえぐ観光業界においても、メタバースECへの積極的な参入が増えています。例えば、沖縄にある店舗が、メタバースECにも自店舗を再現させ、沖縄ならではの商品を並べて販売する、といったことも実現できるでしょう。ユーザーは自宅にいながらにして観光地の雰囲気を味わえたり、非日常的なアクティビティが体験できたりが可能になります。
また、人材派遣会社ではメタバース空間でさまざまな職業体験ができるサービスの検討が進んでいて、ファッション業界においては、バーチャル展示場を設けたりファッションショーを開催したりといった展開が模索されています。
メタバースECはあらゆる業界から新たなビジネスチャンスと捉えられ、日増しに参入企業が増えています。

メタバースECのメリット

実際にメタバースECを利用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
仮想空間上で商品やサービスを提供する企業側と、自分のアバターを操作してそれらを購入・利用するユーザー側、それぞれの立場における主なメリットを解説します。

企業側が得られるメリット

企業がメタバースECに参入することにより、コストを削減できるメリットが考えられます。これまでリアルにオフィスや店舗を構えていた場合、賃貸契約を解約してVRオフィスやバーチャルショップに移転させることも検討できます。店舗をバーチャルに構えることで、リアル店舗で固定費としてかかっていた賃料や光熱費などが不要になります。

小売のオフライン店舗(実店舗)では通常、新規顧客開拓は容易ではありません。しかし、メタバースECでは従来のECやオフライン店舗では獲得しにくい客層、とりわけ若者層に対して集客・認知向上・販売促進といった施策が行えるようになります。若者層は日常的にゲームなどを通じて3D空間での体験に慣れているため、違和感なく取り入れてもらえると予測できます。さらに、SNSを通じてファンユーザーを増やす戦略も活用できそうです。

ユーザー側が得られるメリット

ユーザー側から見たメリットは、メタバースECでは基本的に行動の制限なく自身のアバターを自由に動かせることが挙げられます。
バーチャル店舗では、店員のアバターからおすすめの商品の説明を聞き、会話やチャットでコミュニケーションを取りながら実店舗と同じようなイメージでさまざまな商品やサービスを購入できます。従来のECサイトではユーザーが一人で購入・利用することが想定されていましたが、メタバースECでは他者とのコミュニケーションを取りながら購入ができるようになります。
実店舗とバーチャル店舗の中間という位置付けにより、どちらのメリットも享受しながら自分の好きなタイミングで買い物を楽しむことが可能です。しかも物理的な接触が発生しないため、感染症への不安もありません。このように、既存のECやオフライン店舗では実現できない購買体験が可能になるため、企業の注目があつまっています。

メタバースECを活用した例

実際にメタバースECを活用した例として、東京・新宿の街並みや百貨店をそのままバーチャル空間に再現させたケースをご紹介します。

ユーザーはアバターを動かしながら、店内に陳列されたファッションや雑貨などの商品から気に入ったものを購入したり、街中の一角で友人のアバターと待ち合わせて一緒に買い物を楽しんだりといったことが体験できます。さまざまなイベントを開催することで、ユーザーは購買だけでなく、バーチャル空間ならではの非日常的な体験も楽しめるといった試みも始まっています。

メタバースECは今後どのような課題と展望があるのか?

メタバースはまだ新しい概念であり、今後参入企業が増えていくことで、世界的な市場規模も拡大すると予測されます。
一方で、課題も多く残されています。例えば、3Dの膨大なデータ量を処理するにあたっては、スマートフォンではスムーズに動かない可能性があります。さらに、VR機器は没入感が得られるメリットがあるものの、まだ価格が高いため、今後の普及に期待という点があります。
企業としては、ユーザーが安心して利用できる環境の整備が必要といえます。

メタバースが広く普及していけば、現在の販売方法を大きく変える可能性があります。今後の動向を注視しながら、自社の事業にどのようなチャンスがあるか考察しておく価値は十分にありそうです。

まとめ

メタバースECは、NFTの普及やコロナ禍におけるさまざまな価値観の変化などが背景となり、あらゆる業界の企業から注目されています。特にファッション・アパレル業界では、仮想空間で店員から接客を受けながら、アプリ上で気に入ったアイテムを実際に購入したり、好きな時に展示会場へ足を運んだりといった体験の提供により、従来のECと実店舗の良さを得られます。今後企業が成長していくためにも、メタバースECの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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