靴業界の課題や現状は? 市場規模についても解説

新型コロナウイルスの感染拡大や物価の高騰、消費者行動の変化などにより、靴業界の先行きに不安を抱く企業経営者や担当者の方は多いかもしれません。今後、靴業界で競合に打ち勝ち、生き残るには、正確に現状の課題を把握したうえで、将来を見据えた対策が求められます。本記事では、靴業界の現状や市場規模、解決すべき課題などについて解説します。

靴業界の市場規模から見る現状

コロナ禍以降の市場

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、多くの業界で大打撃を受けました。靴業界も例外ではありません。株式会社矢野経済研究所が2022年に実施した「靴・履物小売市場に関する調査」の調査によると、2018年度に1兆3,680億円、2019年度に1兆3,367億円だった市場規模が、2020年度はコロナ禍により1兆688億円へと2割も減少しました。

2021年度は1兆967億円と回復傾向にあるものの、原材料の高騰やコロナ禍の影響などによって2023年までは大きな回復が見込めず、市場規模は横ばいで推移すると予測されています。靴業界では、革靴の市場自体は減少していますが、スポーツシューズ市場は回復が見られます。ただ、回復といってもわずかな規模です。また、2021年半ば以降は、多くのメーカーが生産拠点を構える東南アジア各国がロックダウンし、稼働率が大幅に低下しました。

健康増進ブームもあり、近年ではスポーツシューズの需要が高まりつつありましたが、靴の市場全体を見ると規模は縮小傾向にあるため、企業は危機感を抱かねばなりません。

参考:靴・履物小売市場に関する調査(2022年・株式会社矢野経済研究所)

ECの市場

経済産業省が実施した「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」の結果を見てみましょう。調査によると、靴業界を含む「衣類・服装雑貨等」の2021年における市場規模は、2兆4,279億円となっています。2019年が1兆9,100億円、2020年が2兆2,203億円であり、前年比9.35%の増加です。

EC化率に注目すると、2019年における「衣類・服装雑貨等」のEC化率は13.87%でしたが、2020年には19.44%、2021年には21.15%と上昇しました。コロナ禍により外出を控える方が増えたのに伴い、EC市場が拡大したと考えられます。現在は新型コロナウイルスの猛威が収束しつつあり、外出機会が増えているものの、EC市場は拡大を続けています。

参照:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省Webサイト)

靴業界の動向

近年では、低価格・カジュアル志向が強まったほか、業界内でのM&Aが活発化しています。また、ブランディング強化やIoTの活用に活路を見いだそうとする企業が増加しました。

低価格・カジュアル志向の加速による影響

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業がリモートワークを導入しました。従業員の感染リスクを避けるため、可能な限り出勤を控えさせようとする企業の増加や、対面打ち合わせの減少により、オフィスドレスコードのカジュアル化が進んでいます。対面の機会が減ったことで、従来のジャケットやパンプスの必要性が薄れ、スニーカーやローファーなどのよりカジュアルな装いの出番が増しています。

こうした背景から、近年はオフィスワーカーを含む多くの消費者がカジュアル志向へとシフトしています。さらに外出機会が減ったため、身なりにそこまでお金をかける方も減少しました。物価の高騰や節約志向が進んだのも一つの要因です。スニーカーをはじめとするカジュアルなシューズの需要が拡大する一方、紳士靴などのフォーマル靴の需要は減少傾向にあります。

アパレル業界におけるM&A活発化の影響

アパレル業界の市場規模が縮小するなか、企業は生き残りをかけて限られた顧客の奪い合いをしています。市場における優位性を確立しようと、業界内でのM&Aも活発化していることから、業界の再編が進みつつあるのが現状です。

靴業界で独走状態を続ける某企業も、M&Aによる新たな可能性の模索と組織の強化を進めています。アウトドア分野への進出を目指して総合スポーツ用品販売企業を子会社化し、アパレルと靴の複合業態を強化しました。コロナ禍でも積極的に事業拡大に注力し、売り上げの減少に苦しみつつも店舗数を着実に増やしています。

靴業界の新たな動き

靴業界の新たな動きとして、IoTの活用が挙げられます。IoTの活用により、生産の自動化や受発注のデジタル化が進み、生産・サプライチェーンの効率化を実現しています。センサーを活用したスマートフットウェアなど、これまでになかった商品、価値の提供も可能です。

IoTの活用事例としては、取得した精密な足形計測データを用いた靴のセミオーダーサービスが挙げられます。店舗とECを融合させた販売チャネルの多様化が進んでいます。

また、顧客ニーズを踏まえた商品の提供や、SNSを利用した情報発信などを行って高付加価値化やブランディングに力を入れる企業も増えています。

靴業界が解決するべき課題

どのような課題があるのかを正確に把握できれば、具体的な打開策を打ち出せます。この機会に靴業界が解決すべき課題を把握、再認識しておきましょう。

少子高齢化による規模縮小への対策

日本の少子高齢化は、深刻な社会問題の一つです。労働力人口が少なくなり、人材を採用しにくくなるのも大きな課題ですが、単純に人が少なくなるため、自然とビジネスの規模も縮小します。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2017年推計)によれば、日本の総人口は2015年時点で1億2,709万人だったのが、2053年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人に減少すると推計されています。65歳以上の人口比率は2015年時点で26.6%だったのが、2040年には35.3%、2065年には38.4%にまで上昇する見込みです。

参照:日本の将来推計人口(p1,p13/国立社会保障・人口問題研究所・PDF)

こうした状況を鑑み、靴業界に属する企業は、少子高齢化に伴うマーケットの規模縮小への適切な対策が必要です。従来の商品やサービス、事業展開に固執せず、多角的な視点から新たなビジネスモデルの創出に取り組む必要があります。

異業種参入による競争激化への施策

ライバルは同業他社だけではありません。近年では、オンラインを主戦場とするネット通販業者や、アパレルブランドなどが靴業界へ参入しており、競争が激化しています。低価格・カジュアル志向の消費者が増えたことで、ファストファッションアイテムを扱う企業もここぞとばかりに参入しているのが現状です。

ますます激化する競争のなかで、市場における優位性を確立するには、新たな価値の創出と提供、ブランディングの強化などが求められます。そのためには、消費者が何を求めているのかを正確に把握し、ターゲットに即したマーケティングを展開しなくてはなりません。

実店舗とECサイトの融合

従来は、実店舗が顧客からの問い合わせ対応や接客、販売などを担ってきました。しかし、近年はECの需要が高まり、オンラインで容易に商品を購入できる環境が整い、消費者が実店舗に求める役割も変化しつつあります。

ECの需要が高まっているとはいえ、完全にECのみの運営にシフトするのはおすすめできません。靴を求める方の多くは、事前に素材やフィット感などを確認したいニーズがあるためです。実店舗とECの役割をそれぞれ明確にし、双方をうまく融合させたビジネスの展開が求められます。例えばオンライン接客では、店員が実店舗同様に質感やサイズ感などの質問に答えながら、EC経由で買い物してもらうことが可能です。

近年では、オムニチャネルを導入する企業も増えています。オムニチャネルとは、実店舗やECサイト、SNS、自社HPなど、顧客との接点を統合して顧客にアプローチする仕組みです。複数のチャネルをシームレスに連携でき、顧客満足度の向上や機会損失の減少につながる点が魅力です。

まとめ

新型コロナウイルスの影響によって、靴業界は大打撃を受け市場規模が縮小傾向にあります。カジュアルシューズの市場規模は回復しつつあるものの、フォーマル靴の需要は減少の一途をたどっています。今後、靴業界で生き残るには、少子高齢化を見据えたビジネスモデルの創出やブランディングの強化、オムニチャネルの導入など、さまざまな取り組みが求められます。

この記事に関連する製品

アパレル・ファッション業向け 販売・在庫管理システム「ApaRevo」

「ApaRevo」はアパレル業界やファッション業界特有の業務をトータルでサポートする販売管理システムです。色サイズ別管理はもちろんのこと、マルチチャネル販売への対応や、リアルタイムな売上・在庫情報と多彩な分析機能により、販売機会損失や不良在庫を抑止し、企業の体質強化と売り上げアップを実現します。また、POSやEC、EDIなどとのシームレスな連携が実現します。

この記事と同じカテゴリーの記事を見る

アパレル・ライフスタイル業界向け 特設サイト「ライフデザインナビ」

お役立ち資料ダウンロード

アパレル業界のIT導入事例ダウンロード

大塚商会のERPソリューションが現場の課題をどのように解決し、成功へと導いたのか。導入前の課題、導入後の効果、当社との出会い・活用法、今後の展開など、ライフデザイン・アパレル業のお客様の事例を集めました。

ダウンロード資料:PDF・32ページ(6事例)

事例集をダウンロードする

「ApaRevo」製品カタログダウンロード

アパレル・ファッション業界特有の業務をトータルでサポートする販売管理システム
「ApaRevo」のPDFカタログをご用意しています。ご検討資料としてお役立てください。
ダウンロード資料:PDF・12ページ

カタログをダウンロードする

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しています!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

製品導入に当たって、疑問・質問はございませんか? お取引実績130万社の経験からお客様のお悩みにお答えします。資料のご請求、お見積りから、実機でのデモ希望など、お気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

卸販売について

ページID:00243011