建設業界を直撃する部材・輸送費高騰と社会的な影響について

建設業では、見積り段階からコストの把握をすることが重要です。これら原価の管理については、旧来より建設業界で課題とされていましたが、昨今は特に社会情勢の影響を受けてコストが著しく増加しています。今回はこうした社会情勢の影響がどの程度あるのか、また影響を受けることによりコストがどの程度変化しているかについてお伝えします。

部材原価は著しく高騰している

建設資材や各部材は、年々価格高騰の推移を続けています。新型コロナウイルスの影響を受けて、需要と供給の緩急の差が大きくなり、2021年に入ってからは需要が再拡大しました。それにともない資材や部材の価格が高騰しています。さらにはウクライナとロシアの紛争による影響を受けて、2022年はさらなる価格高騰を続けている状況です。

建設資材物価指数は10年で大きく変動している

下記のデータは一般社団法人建物物価調査会が発表している建設資材物価指数の推移です。2011年から2022年の10年ほどで約1.3倍の推移をしていることがうかがえます。

建設資材物価指数 品目別総合グラフ2011年〜2022年までの推移

  • * 出典:一般社団法人建物物価調査会

金属価格はここ2年間で著しく変化

資材別の推移についても見ていきましょう。下記のグラフは2020年から2022年までの金属価格の指数ベースでの推移です。ここ複数年での全体的な資材単価の高騰という事情もありますが、特に直近2年間での金属の価格高騰は著しく、価格指数は2倍近くまで上がる部材も出てきています。グラフを見てみると、「スズ」「銅」「アルミニウム」など、建設業にダイレクトに影響をする素材が軒並み高騰しています。

金属価格の推移(指数ベース)2020年~2022年

  • * 出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 供給制約、輸送の混乱と企業の対応状況より引用

ウッドショックの影響が建設業界を襲う

木材の価格推移について見てみましょう。2021年頃から始まった、いわゆるウッドショックとよばれる事象で、角材や合板の価格高騰が続いています。

下記のグラフは林野庁発表の「令和3年度 森林・農業白書」による、製材品・集成材・合板価格の推移ですが、2019年以降素材によっては2倍近くまで価格高騰をしていた時期がみられます。

  • * 出典:林野庁 「令和3年度森林・農業白書」より引用

このように、建設業を取りまく各資材の環境はこの10年間を経て各コストが2倍近くまで高騰しているという厳しい状況であることから、引き続き企業担当者は注目していく必要があります。

輸送費の高騰について

各部材が価格高騰する背景には、実は輸送費高騰の影響も含まれています。海外からの部材や材料を輸入する場合は、当然ながら輸送船と燃油を利用することが想定されるからです。意外とこうした事情については、念頭にない方も多いと思われますが、特に輸入資材を使用している場合は、燃油費用や輸送費用の変動について注視をしていきましょう。

海上輸送船の輸送価格推移について

以下は、日本銀行が公表している、2015年から2022年までの海上輸送船の価格指数推移をもとに作成したデータです。大なり小なりと変動はしてきていますが、2021年以降は軒並み右肩上がりという状況です。特に建設資材は海上輸送船を頼り運送することが多いため、この推移は建設業界としても見逃せないところです。

  • * 出典:日本銀行 企業向けサービス価格指数を基に作成

燃油費の価格高騰について

輸送をするからには、燃油費の価格影響も見逃してはなりません。以下の表は、日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部が公表している2020年以降のWTI原油先物価格の推移です。2020年1月以降3月にかけては一時期1バレルあたりの単価が16ドルと下落しましたが、その後2020年5月以降は生産や輸送活動の再開を見越し、単価が著しく高騰しているというのが私たちの置かれている状況です。

  • * 出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 供給制約、輸送の混乱と企業の対応状況より引用

また輸入の場合に切っても切れないトピックは、為替価格の影響です。昨今は特にウクライナとロシアの紛争が継続しているために、急速な円安が進んでいます。私たち国民の生活を支える生活用品は2022年4月頃より徐々に価格改定など、高騰の影響が転嫁されている状況です。もちろん資材においてもこれらの影響は多分にあるため、輸入資材の利用や、輸出関連の経費は大きく高騰しているのが現実です。

原価管理の重要性

これまで見てきたように、この10年単位で基本的な資材高騰は続いてきましたが、さらにコロナ禍や、ウクライナとロシアの紛争が長引く影響で、直近2年は価格高騰が著しくあります。

このように部材や輸送費が社会的影響により価格高騰をしているため、より原価管理の重要性は問われるところです。

特に日別・月別・四半期別などのターム別での価格推移について、体系的に数値を分析できるかどうかは事業の採算性の良否に大きく影響します。
建設期間や開発期間が延長すればするほど、かかる原価コストが膨らむからです。これからはより丁寧かつシビアに数値分析を進めていきたいところです。

その原価管理をするうえで、建設業として意識したいことは、以下の4項目です。

  • 部材の価格変動の見極め
  • 仕入れ先の選定
  • 元請けの交渉
  • 工程管理の短縮

これら四つのポイントは、コストを維持する、あるいはカットするために大切なポイントといえます。とはいえ建設業は、業種ごとに分類が細かく分かれており、当然意識するべきところと気をつけたいポイントは変わってきます。

それでは建設業の業種分類とはいったいどのような形になっているのかを一緒に見ていきましょう。下記は、大塚商会作成の建設業分類表です。

建設業の分類一覧表

上記のように、大分類として「総合建設業」「専門工事業」と、大きく二つの分類があります。それぞれの大分類項目の中でさらに「建設工事業」「土木工事業」「設備工事業」「その他専門工事業」と四つの中分類に分けられており、29業種が存在します。

このように建設業にはさまざまな業種分類があり、業種ごとでも上記の管理方法が異なるため、自社がどの分類に該当するか把握する必要があります。

代表的な業種別管理方法は、以下のような点があげられます。

建築工事業

主に発注者は民間主体のため、受注者の優先事項は工期となります。あとからの金額変更は難しい状況です。つまり工期管理が重要で、最初に原価をしっかり精査する必要があります。

土木工事業

主に発注者は国・市町村であり、入札形式です。受注者は、入札条件と法令を遵守することが必要です。工期スケジュールのルールである「4週8休」など、指定工事のセオリーを知る必要があります。また、行政主体の案件は、規模感の大きい工事が多いため、事業時全体への輸送費の影響は、大きく反映されます。

設備工事業

工事の基礎や建物ができてからの工事を受け持つ業種であり、部材価格のコントロールよりもスケジュール管理が重要です。

適切に精度を高く原価管理をしていくには

資材コストが急激に高騰する今、原価にまつわる社会情勢を正確にと理解し、そのうえで原価を綿密に行うことは、事業を左右する大切な業務です。しかし、こうした入出金原価管理はExcelやAccessなど手動で管理している企業も多くみられます。綿密に管理を行おうとすると、それまで以上に作業時間を要します。こうした緊密なアップデートが求められる情報をより簡単に分析し、「見える化」をすることで、誰でも簡単に把握できるソフトウェアを提供しています。

大塚商会の原価管理システムは建設工事業、土木工事業、設備工事業、その他専門工事業の多くの企業にご利用いただいており、蓄積された実績やノウハウがあります。もちろんお客様個別の課題や悩みがあるかと思います。そうしたお困りごとに寄り添い、最適なソリューションをご提案します。お気軽にご相談ください。

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建設業における原価管理

建設業においては見積り段階からの原価把握が必要となります。特に原価管理は、基本的に工事案件単位で行われ、「材料費」「労務費」「経費」の3要素に加えて「外注費」という4要素で分類するなど、現場監督や経理担当者は複雑な業務を遂行せねばならない業界となります。

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