建設業界の労働人口を広げるために、女性活躍促進を考える

社会における労働人口の減少は、建設業界でも懸念事項となっています。建設業の労働者を広げるためには、男性が主体となりがちだったところを、女性参画の間口を広げるということで解決の一端を担うことができるのではないでしょうか。

今回は建設業界で、なぜ女性の活躍が推進されにくかったかという課題点を捉えつつ、これから女性が働きやすく、労働参画しやすくなるためにはどのような点を心得ておけば良いのか、制度の改正点や実際に女性活躍推進をしている企業の実例をもとに考察します。

なぜ女性活躍割合は少なかったのか

以下は、厚生労働省が公表している「労働力調査」のデータを当社にて作成したグラフになります。2012年から8年間における、建設業の女性労働者比率の推移を見てみると、13.9%から16.7%と増加傾向にありますが、業界全体の2割にも満たないというのが実情です。

  • * 厚生労働省「労働力調査」をもとに、作成

さらに以下のグラフでは、建設業内における、女性技術者の人数と比率を見ていきます。直近2020年時点でもわずか8.1%と業界全体の中でもさらに限られた人数であることが分かります。このことから、建設業全体も女性の人数が少ない状況ではあるものの、その概ねが事務職に傾倒していることが推察されます。

  • * 厚生労働省「労働力調査」をもとに、作成

なぜこれまで建設業において、女性が活躍できなかったのでしょうか。そこには理由があるのです。

これまで建設業では3K(きつい・汚い・危険)の労働環境である業種といわれていました。特に現場での力仕事は、男性と比べて体力差がある女性にとって「あらかじめ働くことが無理」だと決めつけている人が多いといいます。

このように3Kの一つである「きつい」は、女性が働くには敬遠されていたということが考えられるのではないでしょうか。

また現場での設備面も課題としてあげられます。女性専用の待機所やトイレ、更衣室などの設備がないことが多く、現実的に働くことが難しい点が挙げられます。

さらに制度面でも課題が多くあります。現場での長時間勤務が常態化していることにより、妊娠・出産などで現場復帰が困難になりやすい状況です。これらに対して、産休・育休後に就業継続が可能な仕組み、配置転換など、制度面の多様性が少ないという点も悩ましくあります。

こうした諸問題は、女性だけに限らず働く者全てに対する環境改善推進として、平成27年に国土交通省と日本経団連が「新3K(給料が良い・休暇が取れる・希望が持てる)」と提唱し、改革を進めていっています。

女性活躍推進のために国を上げて立ち上がる

前述した女性の労働課題を解決するべく、国土交通省と建設5団体<(一社)日本建設業連合会、(一社)全国建設業協会、(一社)全国中小建設業協会、(一社)建設産業専門団体連合会、(一社)全国建設産業団体連合会>は、2014年8月に「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を発表しました。
以降、年度ごとに重点アクションプランを策定し、これまで女性の労働環境などの課題を毎年推進してきました。

例えば、自主計画の策定というソフト面の改善や、女性専用のトイレの改築、増設などのハード面の改善などがあります。
結果、一般財団法人建設業振興基金が発表した数値によると、女性技術者は2014年に1.1万人であったのに対し、2018年には1.8万人と、約1.64倍も増加しました。
さらに、女性技能者は2014年に8.7万人であったのに対し、2018年には10.4万人と約1.19倍の増加と変化を遂げ、成果が見えてきていることが分かります。

そうした中で、建設業法の改正に伴い、新・担い手3法やi-Construction、建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)、次世代・子育て世代・や女性の雇用などに力を入れている企業への加点など、建設業界を取り巻く環境が大きく変化をしていきます。

しかし、上記の取り組みをさらに促進するためには、特に女性は就業の継続が大きな課題であることが顕在化してきました。そこで「働きがい」と「働きやすさ」の 両立により、就業継続を実現することを目的とした、2020年1月「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」を策定しました。

CCUSの改善により、女性のキャリアが活かしやすくなる

国土交通省では「建設業の働き方改革」の一環として、業界の担い手がキャリアを持続しやすいように「建設キャリアアップシステム」(CCUS)を開発しました。2019年4月より本格運用され始めています。

このシステムでは、技術者の資格、現場履歴、スキル、キャリアなどが全て登録でき、技術者のいわば履歴書のような面も持ち合わせています。

当該システムは男女に限らず誰でも登録できるものではありますが、もちろん女性にもメリットがあります。

ライフステージの変化が多い女性ですが、このデータベースにこれまでの資格や経験など、歩んできたキャリアの情報を登録しておくことで、いつでもその人のキャリアを可視化できるのです。

このデータベースの内容を基に、歩んできた経験やキャリアを活かしながら、たとえライフステージの変化によってキャリアが途切れたとしても、再び復帰する際に履歴をもとにキャリアを再開することも可能、というメリットがあるのです。

女性就労断続のための建設キャリアアップシステム(国土交通省・PDF)

実際に女性活躍推進によって成果を出す企業を見てみる

実際に、女性活躍の推進を進める企業は、一体どのような取り組みをしているのでしょうか。

建設業大手のA社は、2021年に女性の活躍推進に関する取り組みが優良な企業として厚生労働大臣より「えるぼし認定」の最高位となる3段階目を取得しました。

「えるぼし認定」とは、女性活躍推進法に基づき一般事業主行動計画を策定して、届出を行った企業のうち、取り組みの実施状況が優良であると認められる企業を認定する制度です。2016年4月からスタートしました。
認定のためには、5つの評価項目の基準を満たした数に応じて3段階あり、5つの基準全てを満たすことができると、最高位となる3段階目の認定を取得できます。

その5つの評価項目とは、

  1. 採用
  2. 継続就業
  3. 労働時間等の働き方
  4. 管理職比率
  5. 多様なキャリアコース

で形成されており、これらが一定の基準値がクリアできると、項目ごとに評価されます。

A社は、これまで10年の間に、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、女性の積極的採用に取り組んできました。特に新卒採用者に女性の土木技術職や建築技術職の積極的採用を進めており、10年間の間で未採用から採用者の1割を占めるほど増やすことができました。

また、キャリアアップや就業継続においても注力しています。女性のキャリアアップを目指し、役員や管理職登用を視野に入れています。そのためキャリアステージ別の研修を定期的に実施することで、女性管理職の比率は年々上昇しています。

一方、地方にある中小建設会社のB社。同じく2023年に「えるぼし認定」を受けています。
B社は従来から男女分け隔てなく雇用をするだけではなく、積極的に管理職への登用をおこなっていたそうです。今後さらなる高みを目指すために、就業継続や多様なキャリアの開発のため、研修等の取り組みを強化していくとのこと。

A社、B社ともに、もちろん女性が快適に働くための環境や雇用の仕方も大切にしていますが、その先の就業継続や、キャリアアップに念頭を置いていることが印象的です。

女性がイキイキと長く活躍するためには、続けていくことが重要です。
成果を出している企業は「継続」に念頭をおいて仕組みや制度を設けて推進しています。このような視点は、これから女性活躍を推進させたい企業の方々にも参考になるのではないでしょうか。

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