人手解消に向けた救世主~建設業界で働く外国人労働者の課題と対策について

建設業界では外国人労働者の雇用が年々増えています。背景の一つとしてあるのが、国内の建設業界における技術者の人員不足です。そこへ2011年の東日本大震災以降、復興事業の加速や東京オリンピックなどの特需により、さらなる人員不足が加速。解消するために当時、建設業界では外国人労働者を雇用する企業が増えました。また、国によって外国人労働者の受け入れ体制が強化されたものの、課題はまだまだ尽きない状況です。

この記事では、建設業界における外国人労働者事情と、課題、これからの対策について考察していきます。

人材不足が否めない建設業界 外国人労働者に機会を見いだす

建設業界は就業者数の減少が深刻です。下記は2023年4月に国土交通省 不動産・建設経済局が公表した建設業における職業別就業者数の推移を表す図です。

出典:土地・建設産業局「最近の建設業を巡る状況について【報告】(PDF・国土交通省:29頁のグラフを基に作成)

技能者、技術者、管理的職業・事務従事者、販売従事者数など、職業別にカテゴリー分けされていますが、どのカテゴリーにおいても年々減少していることが分かります。就業者数がピークを迎えた1997年の685万人を境に右肩下がりとなり、直近は479万人まで減少をしています。今後さらに就業者数の減少が予想されることから、深刻な人材不足にみまわれる可能性があります。加えて2020年以降コロナ禍を迎えるまでは、東京2020オリンピック・パラリンピックによる特需で、建設ラッシュが続き、人材不足に拍車をかけていました。

そこで建設業界では人材不足解消のため、外国人労働者の導入を図っています。政府は、2018年12月に「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」の閣議決定を行い、人材確保が困難な建設業界は「外国人による人材確保を認める特定産業分野」であると認めたうえで、人材を確保する対策を立て始めました。この流れに伴い、国土交通省は外国人労働者の受け入れ強化を図ったのです。

右の図のとおり、オリンピック開催までの期間の特例措置として、建設分野の外国人技能実習修了者に「特定活動」の在留資格を付与して、技能実習に引き続き最大2年間の在留を認めることや、帰国後の再入国により最大2年間ないし3年間の在留を認めるという、時限的措置がされました。

前述した対策が功を奏し、建設業に従事する外国人が増加します。時限的措置はオリンピックまでを対象としたものでしたが、その後、コロナ禍を経ても外国人労働者は増え続けています。

出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(PDF・厚生労働省:8頁のグラフを基に作成)

上記は、厚生労働省が発表した「外国人雇用状況の届出状況」によるグラフです。これによると、各事業所に就労している外国人労働者は相応な人数がいます。しかし、建設業の外国人労働者は外国人労働者全体のうち1割弱であり、今後労働者をさらに増やしていく余地がありそうです。

外国人労働者受け入れによって生まれる課題

このように外国人労働者が増加する一方、大量に外国人労働者を受け入れることによって生まれる懸念事項があります。

  • 文化や言葉の違いによる齟齬(そご)
  • 技術の継承がうまくできない
  • 技能実習生の失踪が多く、外国人労働者市場の中では建設業が最も疾走人数が多い
  • 一時的な外国人労働者の受け入れでは、現場で感じている人手不足を解消することは難しい

しかし、これらの懸念事項は労働者だけではなく、事業者サイドにも問題があります。外国人技能実習制度の悪用を悪用する企業がいることや、「技能実習」の名のもとに、不当に安い賃金で外国人を長時間にわたり労働させる企業が絶たないのです。

こうした問題の規制のため、2017年に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行されました。これから未来に向けて適正な状況に導くための法整備が進んでいます。また、併せて建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)義務化も課題解決の一助となっています。

一方で、法整備により労働者総数の不足は解消できるものの、外国人労働者を雇用する際には、日本人を雇用するのと変わらないほどの賃金が必要です。さらに法規制の強化によって諸手続きが煩雑・長時間化し、外国人労働者の雇い入れが敬遠されるケースも増えています。

ここまでメリット・デメリット、課題などに触れてきましたが、労働力が増えるメリットもある一方、賃金や労働環境については細かく整備をしていかなくてはならないという一長一短な状況であることを知っておくとよいでしょう。

相互に理解ができるよう、意思や条件を明示する

前項で挙げたさまざまな懸念事項を解決していくには、どうしていけばよいのでしょうか。対策方法と心掛けるポイントについて考えていきます。

まず、労働環境や雇用条件などの働くうえでの仕組みについてです。
事業者サイドは、不当な条件がないことを労働者に明示することが大事です。そして、その際には雇用契約の締結も忘れてはなりません。労働者を雇い入れる際に、労働基準法の規定に基づいた雇用契約を作成し、外国人労働者に配布する義務があります。この点をしっかり念頭にいれた行動をしましょう。

さらに、雇用契約書に記載された項目をしっかり順守する必要もあります。雇用契約書内に記載された賃金や労働条件、明らかに異なる業務をさせないように相互に理解することが肝要です。

事業者が労働者に配慮をする必要もありますが、一方で事業者自身が法律違反から身を守るために対策をとることも必要です。そのためには、労働者の身分を確認することも忘れてはなりません。例えば不法就労に該当しないか、ビザ発行がきちんとされているのかといった点です。外国人の身分証明書である在留カード、また在留資格と在留期限の確認と管理を忘れずにしましょう。

万一これらの管理を怠っていて、もし労働基準法、不法就労助長罪、在留資格等不正取得罪など、入管法にかかわる法律に抵触してしまうと、事業者は罰則を受けることになります。こうした、トラブルを回避するために、外国人労働者の身分を明示し、正しい処遇を安定的に受け続けるためにも、CCUSへの登録が必要です。登録しておくことで、データの管理や運用がスムーズであること、誰の目にも開示される透明性が生まれます。ぜひ活用をお勧めします。

一方、仕組みの面だけではなく、コミュニケーションなどといったインナー面でのケアも必要です。日ごろの業務遂行という観点では、文化の理解や言語の壁、コミュニケーションのフォローと相互理解が必要です。文化の異なる人同士が働くということは、今までの常識が覆る瞬間でもあります。日本人同士なら常識や当たり前だと思っていたことが、外国人労働者にはうまく伝わらないことが多いのです。インターネットを活用した言語翻訳や文字コミュニケーションなどの活用、文化や技術の伝達などを、日本人以上により丁寧に伝えることが必要となります。こういった点も意識しながら互いが気持ちよく働くことができるように心掛けていきましょう。

解決策を支援するツールとして

これまで考察してきたように、外国人労働者を迎え入れる際に必要な仕組みを作るうえで、便利なツールをご紹介します。主に労働条件や個人情報管理のツール、技能情報登録ツール、コミュニケーションツールなどをあげています。ぜひ参考にしてみましょう。

コミュニケーションに、画像やスタンプ利用で直観的に操作が可能

Kizuku

現場担当者から選ばれる現場管理アプリです。現場ごとのチャット画面から現場情報・図書・報告書・受発注業務まで一元管理できるため、浸透しやすく効率化が図れます。

LINEWORKS

ビジネス用LINEで、最適なコミュニケーションツールとして活用でき、セキュリティ対策も万全で安全にお使いいただけます。

CCUSの就業履歴登録につなぐことができるシステム

キャリアリンク

「電話をかけるだけ」の簡単入退場登録で、管理が可能です。現場情報・施工体制情報・施工体制技能者情報・就業履歴は全て「キャリアリンク」からCCUSに連携。CCUSへのログイン不要で、「キャリアリンク」の操作だけで完結できます。

関連セミナーオンデマンド動画

最後に、次世代の担い手に対する対策について紹介しているオンラインセミナーをご紹介します。

建設業において、技能者の約3分の1が55歳以上となるなど他産業と比べて高齢化が進行し、将来の担い手の確保が急務となっています。働き方改革や建設キャリアアップシステムなど、中長期的な人材確保・育成を進めていくための国土交通省の取り組みについてご紹介します。

建設業行政の最近の話題と担い手対策について(講師:国土交通省)

さまざまなツールや手段を利用し、外国人労働者と共に手を取り合いながら、今後も建設業の活性化をしていきたいですね。

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