工事遅延に伴うコストオーバーラン対策

建設工事を安心安全で遂行するためには、工程管理とコスト管理が重要です。「適切な予算を組み、これを守って工事を遂行する」という2点は、工事管理者が最も神経をすり減らすマネジメント項目といえるでしょう。
日本に限らず海外に目を向けても、建設工事は進行していくごとにスケジュールが遅延し、コストがオーバーするという事例をたびたび耳にします。本記事では、これら工事がなぜ遅延し、コストがオーバーするのかを考察し、コストオーバーランが発生しないためにはどのようにすべきか対策を考えていきます。

なぜコストはオーバーするのか

まず初めにコストオーバーランとは、どのような意味なのでしょうか。日本政策投資銀行監修の不動産用語集によると、コストオーバーランは「工事完成時に、計画時と比べて追加的な投資や、工事遅延に伴う各種経費増加などにより、工事費が想定額を超過するリスクが存在していること、これをコストオーバーラン」と定義しています。
もしコストオーバーランが発生した場合は、当然に事業会社のキャッシュフローを下ぶれさせることから、事前に契約、その他の方法を通じて手当をしておく必要があります。
それにしてもなぜ、このようなコストオーバーランが発生するのでしょうか。その原因は多岐にわたります。

以下に主な原因を列記してみることとします。

合理的な予算見積り
工事が始まる前に必要なリソースや作業のコストを正しく評価せず、予算を過少見積りすることがあります。これにより、工事が進行するうちに追加のコストが発生し、予算を超えることが考えられるのです。
作業内容変更
工事内で作業内容が変更されますと、新たな要件や機能の追加が発生し、これに伴ってコストも増加します。作業内容の変更に対する適切な管理が行われない場合、コストが制御できなくなる可能性が生まれます。
リソースの不足
適切な人材や設備が十分に確保されていない場合、タスクの遂行に時間がかかります。結果として工事のスケジュールが遅れ、コストも増加する可能性があります。
変動する環境
経済の変動や市場の変化、法律や規制の変更など、外部の影響で損失が工事に起こる可能性があります。これによりコストが増加するリスクが発生します。
コミュニケーションの不足
工事チームや関係者間でのコミュニケーションが不十分な場合、問題や進捗(しんちょく)の遅れに適切に対応できず、結果としてコストが増加することがあります。
技術的な課題
予期せぬ技術的な課題や障害が発生した場合、それらを解決するための追加のリソースや時間が必要になり、コストが増加することがあります。
リスクの未対応
工事のリスクが適切に評価されず、それに対して適切な対策が行われていない場合があります。こうした際には予期せぬ問題が発生し、追加のコストが発生する場合が考えられます。

以上のように、「ヒト・モノ・カネ」とあらゆる面から考察をしました。これらの課題は、工事の計画、実行、監視、制御の各段階で正しく管理されるべきではないでしょうか。工事責任者やチームは、リスク管理、予算管理、スケジュール管理、コミュニケーションの強化などの手段を大切にし、コストオーバーランのリスクを念頭に置いて管理する必要があります。

コストオーバーした事例

では、こうしたコストオーバーは、どのような事業で発生しがちなのでしょうか。コストオーバーランが起きやすい事業は、工事の性質や中断によって異なりますが、以下に列記してみることとしましょう。

建設工事
建設工事は予測困難な問題や、地域的な懸念(気象、地盤、法律など)に影響を受けることが多く、これらがコストの増加やスケジュールの遅延に影響しています。
大規模なインフラ工事
大規模なインフラ工事(道路、橋、トンネルなど)は、複雑な地理的課題によってコストが増加する可能性があります。地域の環境規制や社会的な要求も、コストの負担の要因となるようです。
これらの事業に関しては、工事の複雑さや不確実性が高いため、リスク管理と適切な工事管理手法の導入が重要です。また、工事計画の段階で、リソースの適切な見積りと範囲の明確化が実行されることで、コストオーバーランの発生を防止することができると推察されます。

日本においても、最近、建設工事のコストオーバーの事例は多数あります。以下に幾つかの具体的な日本のプロジェクト名を挙げてみました。

東京オリンピック関連施設
東京2020オリンピック(2021年に延期)のために、建設される施設や競技場で、建設中にコストオーバーランが発生したり、スケジュールが遅れたりする事例が複数ありました。
中央新幹線(東海道新幹線)拡張工事
東京と名古屋を結ぶ中央新幹線の拡張工事は、建設費が当初の見積りを大幅に上回ることが想定されています。

これらの事例は、日本の建設工事において、コストオーバーランが起きていることを示しています。プロジェクトの規模が大きければ大きいほど、コストオーバーの影響は大きく、社会的にも見逃せない時事事項であることが分かります。

コストオーバーをしないためには対策が必要

ここまで述べてきたように工事遅延に伴うコストオーバーは、多くの工事管理上の課題や背景、リスクが関与する複雑な問題といえるでしょう。コストオーバーランを起こさないためには繊細な対策が必要です。では、コストオーバーが発生するとどのようなリスクがあるのか、一緒に考えていきましょう。

予算超過
コストオーバーにより、工事の予算が超過する可能性があります。これにより工事の経済的な健全性が考慮され、組織の一時的な問題が生じることも考えられます。
ステークホルダーからの不信感
コストオーバーは、ステークホルダーや関係者に対する信頼を損なう可能性があります。ステークホルダーは予算内で工事が進行することを期待しており、コストオーバーは今後の関係性の解消や険悪性、また場合によっては工事のドロップアウトといった事態も考えられるでしょう。
工事遅延
コストオーバーランの発生により、追加の資金を調達する必要が生じる場合があります。資金調達の手続きに時間がかかるため、工事が遅延し、スケジュールの滞りが生じる可能性があります。
品質の低下
予算超過を回避するために、資源や時間の削減が起こることも考えられます。これにより工事や建築物の品質が低下する可能性もあるでしょう。
工事作業領域の縮小
コストオーバーの影響を軽減するために、工事の作業領域が削減されることがあります。これによって最初に計画された工事の成果や、目標を達成できなくなる可能性も考えられます。
運用コストの増加
工事が遅れたり、品質が低下したりしますと、運用段階での修正やメンテナンスのコストが増加する可能性があります。つまり、維持管理費の増加が懸念事項として考えられるのです。
競争力の低下
工事の遅延や予算超過により、市場における競争力が低下する可能性もあります。

これらのリスクを考慮するためには、工事管理者やチームは適切なリスク評価と管理、予算管理、スケジュール管理、コミュニケーションの強化などを行う必要があります。また、リスクが発生した際に対処するための適切な計画や手段も押さえておくことが肝要です。

コストオーバーを管理するためのツール

リスクが発生しないということは100%断言できませんが、リスクを回避することに越したことはありません。そのためには工事管理者による適切な管理が必要です。一方、こうした進捗管理は大変細かく、ステータスや金額の管理作業自体が煩雑で、神経を使うものでもあります。また、作業やデータの把握が属人的になりがちなため、誰にでも見て分かるよう可視化しておくことが望ましいでしょう。

こうした煩雑かつ属人的な点を解決するために、おすすめのサービスを紹介します。

製品

コストマネージャー

原価管理はもとより、発注・予算・支払い・請求までをトータルにサポートするシステムです。予算の進捗をリアルタイムに確認できますので、現場の状況を把握し、効率的な対応が可能です。

POWER見積

Excelのような簡単な使い勝手で、建設業特有の見積り作成を支援。営業活動分析、実行予算作成、概算利益予測での受注管理なども対応した建設業向けシステムです。

プロジェクト原価管理

仕訳情報を基に会計帳票やプロジェクト単位の原価管理帳票を作成できます。プロジェクトごとに発生した原価(材料費、労務費、外注費、経費など)を一元管理できます。

建て役者

新規商談から契約、工事管理からアフターフォローに至るまで、情報を一元化し蓄積、情報の資産化、基幹づくりを実現していきます。100社100通りの業務管理を実現する柔軟なカスタマイズが特長です。

PLANEST(プラネスト)

拾い出しから見積書作成までの業務をフレキシブルにサポート。公共建築工事積算基準書に準じた条件設定で見積書をスピーディーに完成することができます。特に拾い機能は、設備業の図面拾いに特化し、実務に即した拾い機能で時間短縮を実現します。

PImacs(ピーアイマックス)

工事に関わる情報を蓄積・共有・管理・活用するための建設工事業向け基幹業務管理システムです。各部門の情報を一元管理し、顧客・契約、発注・原価、入出金、工程、アフター、会計などをシームレスに連携させることにより、生産性の向上とタイムリーな情報把握を可能にします。

導入事例

株式会社エルライン

  • 事業内容

    仮設工事、資材仮設、販売・買取・レンタル、大規模修繕工事等

煩雑な建設会計のルールに対応した会計システムを導入して経理・会計業務の手間を解消した同社は、大塚商会のコンサルティングサービスでIPOを前提とした内部統制強化も実現。業界に向けたビジネスモデルの開発にも着手されています。

株式会社エルライン 導入事例 詳細を見る

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