建設業で生成AIはどのように活用できる?

世界中でChatGPTを始めとした、生成AIに対する注目が集まっています。利用者が質問やキーワードを入力すると、精度の高い文章を生成してくれる、あるいは返答をしてくれるため、さまざまな場で効率的な活用ができるものと考えられています。一方、倫理観を問う姿勢、思考力の低下にもつながると懸念もされており、学生のレポート作成の際に、生成AIの使用を認めるか否かで物議を醸し出しました。とはいえ、ビジネスの場では、さまざまな生成AIモデルが登場して各産業での利用促進がされており、その利用の仕方については、いまだ是非を問いつつ模索している段階なのでしょう。
本記事では、特に建設業にフォーカスし、生成AI活用の可能性、建築業界にもたらすメリット、実際の活用方法や注意点などについて考察をしていきます。

建設業の生成AIの活用状況

2023年現在、建設業においてはどの程度生成AIの活用がされているのでしょうか。以下に記す図は、株式会社帝国データバンクが調査した「生成AIの活用に関する企業アンケート」の回答データになります。

  • * 出典:生成AIの活用に関する企業アンケート p.5「1.生成 AI の活用に関する企業アンケート」表(株式会社帝国データバンク・PDF)

生成AIの活用に関する企業アンケート(PDF・690 KB)

これによると、建設業において、業務での生成AIの活用を検討している企業は50.8%に及んでいることが読み取れます。さらにそのうち、実際に活用できているのはまだ3.1%程度であることが分かりました。このように活用検討者が半数いる一方、活用を検討していない企業も29.7%ほど存在していることがうかがえます。
本調査内で、建設企業の個別回答を見ていくと、「結論を導く一助とはなるであろうが、生成 AIで得た情報が正確なものであるか、公序良俗に反してはいないかなど、信頼できるレベルにはないと思っている」と記されており、生成AIを業務に生かすことに対して、やや不安に感じていることが分かります。このことからも、生成AIの活用を検討していない企業は、何かしら懸念点を感じているため、前向きに検討することができないと推察されるでしょう。
また、2023年5月に日経クロステックが実施した、建設関連企業の生成AIの業務利用に関する独自調査においても同様の結果が見られています。
同調査によると、生成AIの業務利用を従業員に認めるか? という質問に対して、24%が「認めている」、12%が「対象者や業務内容を限定して認めている」と回答する一方、「禁止している」と回答したのは16%だった。最も多かったのは「特に方針を示していない」の48%の回答があった。つまり約1/3が利用に前向き検討な姿勢であるということがうかがえます。

  • * 出典:日経クロステック 2023年5月31日掲載

建設業の生成AIの活用事例

まだまだ懸念事項が多い建設業における生成AIの活用。とはいえ、わずかながらも実際に生成AIを活用している企業は登場しています。では、建設業に属する企業は、生成AIを業務中のどの場面で、どのように利用しているのでしょうか。その利用事例についてみていきましょう。

3次元(3D)モデルの作成ツール

手描きのスケッチと建物をイメージした文章に従って、さまざまなファサード(建物の正面外観)のデザイン案を短時間で生成し、そのデザインを基に3次元(3D)モデルを作成するAIを活用した設計支援ツールを導入した企業があります。
スケッチとデザインのイメージを文章で指示で、発注者の要望に対して、より直感的な提案が可能となっています。

コンシェルジュ

生成AIはインターネット上のさまざまな分野の文書を学習しており、これまで専門領域における正確な回答が難しく、そのまま建設業務に組み込むことが困難でした。しかし、建築基準法などの関連法規や国の標準仕様書、取引先企業の社内資料などを学習させて、専門性の高い質問にも適切な回答ができるようにしたソフトウェアが登場しています。

AIヘルプデスク

一部の企業では、顧客対応のために、生成AIを活用したヘルプデスクシステムを導入しています。それにより問い合わせ窓口を一元化でき、対応効率を改善させています。

設計のプラットフォーム

建設業の企業向けに建物の設計時間を短縮できるソフトウェアプラットフォームが提供開始されています。このプラットフォームにより、不動産開発および建物を建設する企業は、複数の建物を一斉に設計して比較検討できるほか、法的根拠や環境の分析、また資金的に実現可能かどうかを見極めるために、建設モデルプランを作成することが可能になりました。

建設業の生成AIの活用メリット

実例として、さまざまなツールがそろってきていますが、生成AIツールを建設事業で活用するには、やみくもに使用しても意味がありません。まずは経営層が生成AIの各ツールの特徴や導入のメリットなどを認識することが不可欠です。
ITやデジタル技術を事業で活用する場合、それらを経営戦略の実行に必要な手段として捉え、自社事業とその技術の内容などの特徴から構想する必要があります。どんな技術、設備、機械、システムも企業が目指す事業に有効に活用されることが前提でなければなりません。
このことは、生成AIの利用についても同様です。そのため、生成AIの性質やできることなどを正確に理解し、自社の事業やこれから取り組む事業でどう活用できるかを認識する必要があります。経営者層はこうした事実を認識して他社に先駆けて導入する、という意志を第一に持つことが望ましいでしょう。

では一体どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には以下のような点が挙げられます。

インターネット検索より的確なアドバイス

何かを調べたい時は、自分の悩みに沿ったWebサイトを自分で見つけて、情報を調べなければなりません。しかし、生成AIは、問いかけることで自分の悩みの解決を解決するために、近しい答えを出すので、時間短縮が図れるほか、適切な情報にたどり着きやすいでしょう。

いつでも気軽に調べられる

電話でのやりとり、打ち合わせや会議など、といった相手を解するコミュニケーションは、それぞれスケジュールを合わせる必要があり、手間を要します。しかし、そこまでするほどではない、ほんのちょっとした疑問や質問事項なら、生成AIを相手にすればいつでも調べられます。そういう点でも優れているツールです。

建設業における生成AIの活用に伴う懸念点

上記で列記したメリットがある一方、当然ながら懸念事項もあります。使用する際には、利用者がそのデメリットをきちんと把握しておく必要があります。以下が生成AIを使用する際に考えられるデメリットです。

真偽が不明

生成AIが発する情報は、精度が高いとはいえ、100%完璧ではありません。そのため、間違った情報が提供されたり、不十分な情報が出てきたりします。生成AIが全て正しいと勘違いしたり、不十分な情報に満足したりしないよう注意は必要です。

現場でしか分からない情報が多い

例えば、土地の規模や面積、形状、自分の住んでいる地区の法令や条例など、いくらAIに学習させたとはいえ、エリアによってケース・バイ・ケースのことが往々にしてあります。また、インターネット上では情報のアップデートがされていなくても、自治体の法令が更新している場合もあります。そのため、生成AIの応答が、全く参考にならないことも考えられます。現場での情報は現場でしか分からないことがあるため、生成AIの情報を参考にしつつ、再度現地にて確かめる必要があります。

今後の建設業における可能性

では、生成AIは今後、建設業でどのように活用されていくでしょうか。その可能性について考えていきましょう。

建設デザインへの活用

建設業界において、生成AIの活用が最も進んでいる分野の一つは建設デザインです。建築物の設計や建築計画の策定は、建設プロジェクトの基盤を決定する重要なプロセスですが、これらに生成AIの活用が始められています。具体的には、過去の建築事例をデータ化のうえ、該当事例を条件として要求される条件に合致するデザインを生成するといった活用です。建設業において、こうした画像やデザインを自動生成してくれるソフトウェアの利用はますます広がるでしょう。

工程管理への活用

建設業界における工事の工程管理や品質管理を支援の分野でも、生成AIは、工事の計画や設計図、現場の状況や天候などのデータを基に、工事の工程表やスケジュールを生成し、最適化することができます。工事の進捗(しんちょく)や品質をリアルタイムでモニタリングし、問題や遅延が発生した場合には、原因や対策を分析して、工事の工程やスケジュールを自動的に修正することができるでしょう。さらに工事の工程や品質に関するレポートや報告書も自動的に作成し、関係者に配信すれば、工事の効率性や安全性、品質向上につなげられます。

自律制御ロボットへの活用

建設工事において、AI搭載の自動走行ロボットや自動操縦ロボットなどが活用され始めましたが、今後は生成AIを活用したロボットの導入も進むと考えられます。生成AIを活用することで、自律制御ロボットが、より高度な判断を下すことが可能です。例えば、自律制御ロボットが環境を認識し、その環境に応じて適切な作業を判断し実行できるようになるでしょう。
これらの建機の屋外での使用は、室内環境とは異なり、環境条件の変化や予想外の状況が発生する可能性が十分あるため、よりフレキシブルな自律性が必要です。こうした自律性の向上に、生成AIの活用が期待されています。

検査への活用

建設工事ではさまざまな検査が伴いますが、その検査にAIが活用されており、今後は生成AIの利用も具体化する可能性が高いです。例えば、ドローンで撮影した赤外線画像から、AIが建物の外壁タイルの浮きを自動判定するシステムや、ビルなどの建設現場で撮影した鉄筋継手の画像を基に画像認識AIが外観検査するシステムなどの開発がされており、今後はそれらに生成AIの活用が進むと考えられています。

ビルマネジメントへの活用

現代においては、建物・構造物および建設工事においても、環境や社会などに配慮した対応が不可欠となっているため、建設・運用にかかわるマネジメントは重要です。
既にIoTやAIを活用して、建物で働く人の「快適性」「健康」「利便性」「安全性」に着目した最適な建物管理が可能なビルマネジメントシステムの開発が進められてきました。こうしたシステムに今後は生成AIも活用される可能性はあります。

まとめ

まだまだ建設業において、生成AIの活用や生成AIを使用したサービス、ツールの使用は始まったばかりですが、各企業においてメリット・デメリットを踏まえて、少しずつ活用をしていきたいところです。

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