【コラム】社員との良好な関係が働き方改革成功の決め手となる

中小企業の経営者に取っても働き方改革の実践は待ったなしとなっています。改革成功へのカギは、知恵を出し合うことです。

[2018年 3月15日公開]

この記事のポイント

・他社のまねではなく、自社の文化にあった働き方改革を考え、「カイゼン」を行い少しずつ成長させることが大切です。
・会社を構成する「人」が協調して働き方改革に向かい合う、この体制作りが働き方改革のスタートと考えるべきでしょう。

中小企業の働き方改革は待ったなし

働き方改革が叫ばれ、政府主導で多くの大企業がノー残業デーやプレミアムフライデーを設けることで、労働時間の短縮やライフスタイルの変革に取り組むようになりました。しかし、大企業に比べ、さらに深刻な人手不足の渦中にある中小企業は、この波に乗るべきでしょうか。あるいは一過性のブームとして様子を見るべきでしょうか。おそらく、多くの会社はまだ、取り組まなければならないとは思っていても、取り組むかどうか迷われていることでしょう。

働き方改革については、多くの方が「生産性向上を目指し、職場環境や待遇改善を行うことで人が集まる『魅力ある職場づくり』を行う」という必要性を理解されていると思います。しかし、「労働時間を短縮したら仕事が回らなくなる」。「残業をいとわずにやってくれる従業員のやる気をそぐ」。「従業員にも残業代を頼りにしている人がいる。残業が減ることで収入が低くなる」、などの起こりうる弊害を気にされ、動けなくなっているのではないでしょうか。経営資源に限りがある中小企業にとって、人材の重要性は大企業とは比べものにならないくらい大きく、社員一人一人の働きが業績に大きく影響を与える以上、踏み出せないのではないでしょうか。

しかし、厚生労働省が取りまとめている「人口動態調査」によると、2016年出生数が1899年の統計開始以来、初めて100万人を割る98.1万人になり、今後も少子高齢化の進行という、人口構成が経済に対して負に働く状態に突入している日本の現状は変わりません。企業としては、労働人口の減少への対応が必要不可欠なのです。従って「これまでのやり方で大丈夫」。「無理に先走ることはない」、などとリスクから目をそらし、対策をおろそかにすると、採用の不調、社員の転職、熟練社員の定年退職などによってじわじわと人材不足となり、経営危機に陥ることもなりかねません。だからこそ、働き方改革は、実は「待ったなし」であり、「今」真剣に考えるべきなのです。

自社に適した働き方改革を考える

働き方改革を考えるとき、「長時間残業を減らす」とか「女性を働きやすくするための支援を行う」といった手段ありきではいけないと考えます。なぜならば、手段だけが先走って実行されても、実情が伴っていなければ従業員の理解が得られないからです。働き方改革の名の下で「他社がやっているから」と手段を実行し、内実と矛盾していると、そのしわ寄せは従業員に跳ね返るため、反発を招きかねません。

このため、まず、考えなければならないことは「将来にわたって当社が人材の獲得と維持が安定した会社になるには?」という働き方改革の目的です。目的を考えたうえで自社に適した働き方の姿を描くのが自然です。また、従業員の意見を聞き、改革に理解を得ることも大切です。大企業と比べ、中小企業は社員が少ないため、変革の当事者である従業員の働き方が、経営に対して直接の影響を及ぼします。従業員がどのような働き方を望むかを聞き、そのプロセスにおいて経営者と従業員の信頼関係を深めていくことがポイントになります。

従業員の、意見を聞くときの方法として「従業員満足度調査」と「全従業員参加のミーティング」があります。「従業員満足度調査」は従業員を対象にした、会社での業務内容や社内の人間関係、待遇や会社への愛着など、会社生活の満足度に関する調査です。この調査を実施することは、従業員のモチベーションの状況や経営層と従業員の認識の差異を確認することにつながりますし、自社に適した働き方改革の姿を描くための現状分析としても役立てることができます。「全従業員参加のミーティング」は従業員が一堂に集まり、自分たちの課題や目指したい未来について話し合うもので、組織内の上下や部署間の壁を取り払って、全員で話し合うことが重要です。参加者一人一人が課題をわがことと捉えて主体性を持ち、責任感や貢献意欲が高めた話し合いを行うことで、働き方改革について率直な意見の収集ができます。これらの方法をぜひ行うべきです。

従業員との協調無くして働き方改革推進は難しくなる

働き方改革は従業員と密接に関わるものであり、従業員の協力無くして実現できるものではありません。旧態依然として、変化を好まない従業員もいます。また、働き方改革は、従業員の生活にも大きな影響も与えることになります。働き方改革という言葉に踊らされて、つい表層的な施策を実行し、従業員の働きがいを損ねては意味がありません。

「会社は働き方改革によって何を実現するのか?そして、従業員はどのような働き方を期待しているのか?」などについて自社の考え方を整理することから始めましょう。働き方改革は中小企業の経営者にとっては従業員と積極的に会社と従業員のありたい姿を考える絶好の機会となります。全社員が一丸となって、自社に適した働き方改革を実施・推進することで、多くの企業が人が集まる魅力ある職場づくりに注力されることを心から願っています。

著者紹介

金山 広治 氏 プロフィール

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ
インストラクター
金山 広治(かなやまこうじ)

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