第1回 パッケージソフトウェア品質の見える化への取り組み

私は、約30年パッケージソフトウェアの開発に携わってきました。
あっと言う間の30年間ですが、ビジネスの根幹は顧客の役に立つソフトウェア開発でした。

今回から品質に関してのコラムを連載いたしますが、難しいプロセス改善や管理手法について記述するつもりはありません。2010年から取り組んでいる「パッケージソフトウェア品質認証制度」の策定作業を進めるにおいて多くを学びました。
その学びやトピックスを紹介することで皆様の製品開発にお役に立てば幸いと考えています。

我々の製品である「ソフトウェア」の最大の難点は、実際に使用するまでその内容について確認できないことにあります。
当然、カタログやWebでの情報、デモンストレーションで確認することは可能です。
しかし、細かな機能まですべてチェックして購入することは一般の消費者にとっては不可能でしょう。
常識となったWordやExcelの機能をいちいちチェックして購入する人はいません。

消費者の判断基準は、メジャーなソフトである。もしくはその開発・販売会社が信用できる。価格が適切である。テレビでCMをやっている会社だから安心である。・・・その程度の基準で購入しているのが実態です。

日本の企業は勤勉で悪い商品を販売したら信用が無くなる。
最高の品質のものを安価で提供するのが社会的責任と感じて必死に努力して、それが消費者にも理解されています。

ところが日本の製品を海外で販売しようとした場合どのような問題が発生するのか?
「この製品の品質はだれが確認していますか?」との質問に日本企業は「自社の品質管理部もしくは保証部が徹底的に行っておりおり心配ありません。」と胸を張って答えます。

ところが海外の方は「えー、自分の会社の製品を自分の会社が検査・保証するなんて信じられない」と思っています。
社内では、いくらでもごまかしが可能と思っているからです。

ここが日本人と外国人の大きな差です。
北米で電気製品を販売しようとしたら最低でもUL検査に合格しないと販売できません。
安全性が規格に適合しているかの検査を第三者検査機関で検証し適合性評価報告書を作成してもらいその書類を提出することで安全性を証明する認証制度です。

つまり品質を検査・評価するのは第三者であり、まちがっても自社の部門ではないということです。
逆に言えば第三者の評価を受ければそれが品質の見える化となります。
ゆえに、海外でパッケージソフトウェアを販売しようとするならば何らかの形で第三者機関のお墨付きをもらわないと信用されないことになります。
国内の話としても大手の販社に中小企業のパッケージベンダーが取り扱ってもらう場合、テストデータの提出や再度テストベンダーでのテスト評価を要求されるケースもあり結局コスト高となってしまいます。
初めからしっかりした基準や規格にそって開発して、第三者機関の認証を取っておけば2重、3重にコストが増えることがありません。

これまで日本国内にはそれを認証する制度がなかったため、所属する一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)にて制度を策定することにしました。
品質の見える化が業績UPにつながるという証拠は食品でいう「特定保健用食品」いわゆる特保マークです。
成分=品質をマークで見えるようにしただけで商品価値が高まり収益性が向上しました。
このような効果を目指して認証制度の策定を始めましたがスタート時は困難の連続でした。
このあたりは次回以降にお話ししていきましょう。

次回は9月27日の更新予定です。

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案件の見込み状態から受注後の手配、進捗、計上まで、業務プロセスをトータルにカバーします。プロジェクト収支を見える化し、スピーディーかつ的確な経営判断に貢献します。

この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
日本ナレッジ株式会社

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