第96回 Win‐Winモデル

2020年最初の今回は、「人にしかできない領域」の一つとして、私が考える「Win‐Winモデルを形成する力」を考えてみたいと思います。

Win-Winモデル

皆さん、明けましておめでとうございます。

2020年、ついに東京オリンピックの年を迎えました。今年は4月からは中小企業における「働き方改革関連法」の施行もありますし、企業にとっては、テレワークを含めて大きな転換期になるかもしれませんね。

AIをはじめとするテクノロジーの発展スピードは驚異的です。これから先、何がいつ、どう実現できるようになるのか見通すことは難しいですが、それだけに「人にしかできない領域は何か」を見極めなければならないことは明らかなのではないでしょうか。

『サピエンス全史』でも話題をさらったユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書で昨年末のベストセラー『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』(河出書房新社)も、そんなことを考えさせられる内容だったように思います。

2020年最初の今回は、「人にしかできない領域」の一つとして、私が考える「Win‐Winモデルを形成する力」を考えてみたいと思います。

2019年年末の展望記事

毎年、年末になると公的組織や有識者が翌年の展望を発表しますが、そんな中で私の目に留まったものを幾つかご紹介させていただきます。

上記の論調を私なりに読み解くと、「利益と効率の追求としての資本主義の限界」にある私たちはその資本主義の病に侵されていることにすら気づかないほど染まりきってしまっている。「この疫病に対して使える最良の薬は、私たち自身の行動である」ということのような気がします。
「行動する力・共に立ち上がる」ということもあるでしょう。
そして、現状に対する矛盾と怒りは、今の若い人たちほど鮮明に持ち合わせており、その代表がグレタ・トゥーンベリさんということになるのではないでしょうか。

これは、何もグレタさんが特殊な存在なのではなく、香港の中国の体制に対する抵抗も根っこは同じような気がします。

「行動」を促す「思考」の転換

では、私たちはなぜ行動・実践することができないのでしょうか……。
自己変革を促すモデルとして「気づく→考える→行動する」はよく知られています。このモデルに沿って考えるとすれば、私たちが「行動する」ために必要なのは、その前工程である「気づく→考える」を掘り下げることになるかと思います。「何に気づき、どう考えるのか?」ということです。

「気づく力」に関しては前回「第95回」でご紹介させていただき、「自分の『思考の枠』を壊す」「他者を受け入れる心」の重要性をお伝えしました。

第95回 気づく力

では「どう考えるのか?」になるわけです。今までの私たちの思考モデルのバックグラウンドには、少なからず「資本主義・競争社会は正しい」ということが刷り込まれているわけですから、「そもそもである、この思考性を疑ってみる」ということになるのではないでしょうか。

最近は「Win‐Winモデル」という表現が一般化していますが、冷静に考えると、この反対表現「Win‐Loseモデル」ということになります。つまり、従来の「資本主義・競争社会」の前提の思考は「Win‐Lose」だったのです。勝者がいれば、当然敗者がいるわけです。

そして世界の政治社会で今起きていることは、「敗者」になってしまった多くの民衆の救済をうたった大衆迎合主義・ポピュリズムの台頭です。これは誰かを明確な「敵」に仕立て上げて分かりやすい戦いを挑む手法ですので、これは従来の「Win‐Loseモデル」そのものであり、何ら変わりがありません。

だとすると、本質的な「Win‐Winモデルに基づいた行動」に変えていくということは、実はそんなに簡単なことではないのかもしれません。

「顧客満足」で考えるWin‐Winモデル

「顧客満足度」の高さで有名なある会社の経営者に教えていただいたことがあります。それは以下のような内容でした。

一般的には「買い手が安く購入(≒得)をすれば、売り手は利益を損なう(≒損)」。逆に「売り手が得(≒高い利益)をすれば、買い手が損(≒高く買った)をする」という構図が考えられる。この構図は完全に「Win‐Loseモデル」であり、トレードオフの関係にあるので、仮に顧客満足度が上がったとしても、売り手側は疲弊してしまうので継続・長続きしない。

そうではなく、「Win‐Winモデル」は「損得」以外の軸で考えなければ成立しない。その軸とは「他者への貢献意欲」である。

なぜなら、「他者に貢献したい気持ちからの行動で驚きや感動を与えると、相手は喜ぶ。そして、喜んでくれた姿を見た自分もうれしくなるから、もっと続けようという気持ちが高まる」という構図ができあがる。

なるほど……と得心したものです。

つまり、「Win-Winモデル」の原点には「誰かに貢献したい」という気持ちがあるということであり、いわゆる「与える喜び」ということになるのではないでしょうか……。

ふと、周囲を見回してみると「与えてもらうこと」でしか喜びを感じられない、そればかりを求めている人が多い現実があるのではないでしょうか。

「Win‐Winモデル」という表現を使い、その方向を指向するのであれば「与える喜び」を理解・経験してもらうことからしか、その実践・行動への展開はできないのかもしれません。

「Win‐Winモデル」の実践が少しでも進むことで、新しい景色が開かれる会社が増えていくことを願っています。

2020年も、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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