第2回 病院のダウンサイジング

どのような業界にも、さまざまな理由で規模を縮小することはあります。病院も同様に、病床規模を縮小して業績を回復させようとする施策を取ることがあります。今回は、病床規模を縮小して業績を回復させる注意点とそのSTEPについてお話しします。

初めに、なぜ病床規模を縮小しようと考えたか?その理由ですが、多くは収益額の減少。病床稼働率の低下ではないでしょうか。病院の収益額の構成比率は入院(7割~6割)/外来(3割~4割)と入院収益で半分以上の収益を上げています。過半数を超える入院収益が伸びないことは大変経営にとって苦しいことです。

ある病院長は「空気を入院させていても収入にはならない」とおっしゃっていたのを鮮明に覚えています。さらに医療機関は労働集約型産業です。たとえ患者がいなくても、医師や看護師などは既定の人数が定められており、簡単に人員の整理などは行えません。

病床稼働率が伸びない(多くは70%以下)、その結果、人件費率が50%を超え、危険水域に留まる。何とかしなくてはいけない。その施策の一つが病床縮小。すなわちダウンサイジングです。

では、病床を縮小すれば万事解決するのでしょうか?その答えはNoです。前述したとおり、医療は労働集約型産業です。人件費に代表される固定費の多くは、病床規模を縮小しても削減されるわけではありません。しかも理論的にはダウンサイジングすれば、削減される材料費などの変動費もしっかり管理していないと思ったように下がらず、ダウンサイジングして余計に経営状況が悪化したということにもなります。

最悪のシナリオは、『ダウンサイジング→収益減少→費用変わらず』 のパターンです。ダウンサイジングにより収益額が減少したとしても、その減収額以上に費用が削減できればダウンサイジングは成功です。

◆ダウンサイジングする具体的なSTEP

<STEP1>病院の方向性の確認
規模の縮小というネガティブなイメージよりも、機能を集約するためのダウンサイジングとポジティブに捉えた方が職員のモチベーションも下がらず、納得が得られやすいです。  
また、経営者の想いと異なる医療内容では、長続きしません。従って、経営者の想い(どのような医療を実践したいのか)が重要であり、最初に確認しなければいけません。

<STEP2>マーケティング
次に、外部環境と内部環境の現状確認です。通常はSWOT分析などの手法を使い、周りの住民や疾病数の状況を確認し、自院のシェア分析などを行います。同時に周囲の医療機関の状況と自院の設備と人員構成などを考慮に入れ、強みと弱みを明確にし、強みの部分には、必要に応じて設備投資を行い、弱みの部分は医療連携で他院に協力を仰ぐ形とします。

<STEP3>収益額アップ政策
ダウンサイジングして、収益がアップするのか?とお考えの方もいらっしゃると思いますが、病床を縮小して、看護師を病棟に集約することにより、看護基準がワンランク上の基準をクリアでき、その結果、収益がアップすることが可能になることがあります。他の業態では、あまり例がないと思いますが、規模を縮小し、手厚い人員配置にすることで、高い評価(収益)を得ることができます。
また、機能を集約することで、患者単価のアップも期待できます。

<STEP4>経費ダウン政策

・ 固定費対策
固定費の代表的な経費である人件費について、ダウンサイジングというきっかけを利用し、業績連動性や評価方式を導入し、人件費対策を実施できます。POINTは適正な評価、納得できる評価や考課ですので、BSCなどのツールを使うことも良いでしょう。

・ 変動費対策
人間は、安心のために、つい多めに買ってしまいます。特に医療機関の場合、欠品は患者の生命に直結することになりますからなおさらです。そこで、変動費対策としては、適正在庫の徹底、購入価格の見直し、請求漏れの防止などを実施します。
この結果、損益分岐点が移動し、赤字からの脱却が実現します。

いずれのSTEPでもキーワードは「効率化」です。このことを念頭に置いて、具体的な対策を自院の特性に合った方法で実施することです。

ダウンサイジングしなくてもよい経営環境が良いに決まっていますが、規模を縮小しなければ経営が成り立たない病院は今後確実に増加します。その時になって慌てないようにしてください。

皆さんはどう思いますか?

次回は2012年1月25日更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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