第132回 医療業界のDX

COVID-19(新型コロナウイルス)の出現で、オンライン診療のような非接触型の診療方式が広く実施され、医療界にもDXの導入が進みはじめました。今回はそんな医療界のDXについて解説します。

医療業界のDX

現在さまざまな業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入・活用が注目されていますが、医療界ではどうでしょうか。そもそも医療界でのデジタルの活用は上手に導入している医療機関とそうでない医療機関とに二分化されています。理由は幾つかありますが、「設備投資に必要な資金が工面できない」「デジタルに苦手意識がある」などがその代表的な理由です。

しかし、COVID-19(新型コロナウイルス)の出現で、患者との接触を避ける必要が出てきて、オンライン診療のような非接触型の診療方式が広く実施されるようになり、研修や会議もオンラインによる開催が当たり前になりました。このような変化から医療界にもDXの導入が進みはじめました。これは思いもよらぬ効果ですが、もともと医療界では医療機器の活用などは行われており、その素養自体はあったと思います。

厚生労働省が進める「データヘルス改革推進計画」

DXの導入が始まったといっても、その前に確認しておかなければならないこともあります。一点目は遺伝子解析などについてです。コロナの検査で一般化しましたが、PCR検査に代表される遺伝子検査のデータの収集と活用です。遺伝子の情報はセンシティブな情報です。さらにApple Watchなどのスマートウォッチの出現によりバイオセンサーデータも容易に取得できるようになりました。このようなデータをどのように収集、保護し、診断や治療に活用していくのかなど、まだ議論・検討が必要だと考えます。

もう一点は、医療機関の経営指標や、厚生行政などに活用するためのプラットフォームの設備についてです。厚生労働省は「データヘルス改革推進計画」を公表しています。

  • * 出典:厚生労働省資料「データヘルス改革 -ICT・AI等を活用した健康・医療・介護のパラダイムシフトの実現-」(2017年4月14日)

データヘルス改革が目指す未来

  • * 出典:厚生労働省資料「データヘルス改革について」(令和2年11月2日)

オンライン資格確認のメリットとデメリット

既に皆さんの身近になりつつあるオンライン資格確認ですが、患者側のメリットとして、自分の医療情報を他の(初めて受診する)医療機関でも閲覧できるため、より適切な診断・治療が安全に可能になります。医療機関側のメリットとしては最新の資格情報が確認でき、未収金が減少します。さらに資格確認の事務作業もなくなります。行政側のメリットとしては、保険薬局が活用することで重複投薬が減少し、医療費の減少が期待できます。さらに医療情報の活用により予防医学への関心が高まり、早期受診により、やはり医療費の減少が期待できます。

一方でデメリットもあります。オンライン資格確認の設備、個人情報保護、プライバシー保護、漏えい対策などいずれも費用が必要になります。さらにデータの閲覧が可能になっても、活用されなければ意味がありませんので、プラットフォームなどを利活用する側の意識や運用の問題も心配されています。

マイナンバーによるオンライン資格確認は、医療界DXのはじまりに過ぎません。期待できることや課題もそれぞれまだありますが、一つ一つクリアして前に進むでしょう。医療界でもDXの波に乗り損ねないようにしないと、後で悔いることにもなりかねませんので情報収集や業界動向など十分に注意してください。

皆さんはどう思いますか?

次回は1月11日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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