第145回 用度・購買・調達 その2

価格交渉は戦略的に行うことが重要です。ただし、サプライヤーとは平等な立場であり、無理な取引条件を押し付けたりするようなことはしてはいけません。基本はサプライヤーにとって有利な条件などを準備し、そのうえで適正な価格を求めるということです。「適正価格」で購入するための戦略について記述します。

用度・購買・調達 その2

価格交渉は戦略的に行うことが重要です。以下に主な戦略を列挙します。

  1. 集中(集約)購買
  2. 商流変更
  3. 共同購入
  4. 仕様最適化
  5. 仕様形式最小化(特別扱いの排除)
  6. 原価分析
  7. アウトソーシング購買
  8. トップ交渉
  9. ベンチマーク
  10. 新規サプライヤー参入

集中(集約)購買
「集中(集約)購買」とは、購入取引債のサプライヤーを集約して、1社あたりの取引量(サプライヤーにとっては売上)を増やし、値引き率を大きくしてもらうなどの有利な取引条件を引き出す戦略です。前提条件としては複数社が同じ製品を取り扱っていることになります。

商流変更
「商流変更」とは、今までとは全く異なった方法などで調達することです。輸入品を商社や代理店経由で購入せず、直接買い付けたり、直接輸入したりするなどです。商社や代理店経由だと安心という安心料をどのように捉えるかがポイントです。必要度合いが高い、いつまでに必要など、制限があるものには向いていません。

共同購入
「共同購入」は、複数の医療機関などが集結し、物品を購入することです。複数の医療機関が集結することで、サプライヤーにとっては取引量が大きくなりますので、少数取引の時よりも値引き率などの取引条件も良くなることが期待できます。注意点としては、共同購入を行う複数の医療機関を見つけることと、共同購入する前に購入する物品のすり合わせなどの調整が大変です。一つの法人が複数の医療機関を運営している。あるいは地域医療連携推進法人などは比較的取り組みやすいと思います。

仕様最適化・仕様形式最小化
「仕様最適化」とは、オーバースペックの商品を見直すことです。「仕様形式最小化」とも通じる箇所がありますが、例えば、手術などで使用するゴム手袋の場合、さまざまな仕様があります。その使用を集約することで、取引量を増やすことができます。そのために医師の個人的な好みで発注しているゴム手袋はやめましょうということです。

原価分析
「原価分析」は、購入する製品の原価を分析することで、取引価格が適正なのかを検証することです。しかし、原価を調査、分析することはなかなか困難ですので、関連情報が入手できた時などは、活用します。

アウトソーシング購買
「アウトソーシング購買」とは、物品を購入する用度課などを部署ごと外部に委託する手法です。SPD(院内物流管理)を採用する医療機関などでは行われています。メリットは個々の価格交渉、発注業務、在庫管理などから解放されることです。個々の価格ではなく、委託料を管理して経費管理を行います。

トップ交渉
「トップ交渉」とは文字どおり、双方のトップ同士が交渉することです。いきなりトップ交渉を行うことは望ましくなく、さまざまな交渉過程を経て、その最後に最終条件を引き出すために行うことが多いです。また、双方がトップではなくても、最後に医療機関のトップである院長から一声発していただくとさらに有利な条件を引き出せることもあります。

ベンチマーク
「ベンチマーク」は、他院の購入価格と自院の購入価格とを比較して、自院に有利な条件交渉することです。取引価格には、取引量などの幾つかの条件が関係してきますから、他院の価格の条件もあらかじめ知っておく必要があります。他院の価格などを知ること自体が難しいですが、同じ系列組織では比較的入手しやすいです。また、ベンチマーク手法を用いて代理で価格交渉してくれる会社もあります。

新規サプライヤー参入
「新規サプライヤー参入」は、集中(集約)購買と合わせて実施すると効果が増します。現在の取引サプライヤーの集約、さらにその中に新規サプライヤーがいることは、現在の取引サプライヤーにとっては非常に大きな脅威となります。新規サプライヤーにとっては、新規取引先の開拓につながりますので、お互いのけん制効果が期待できます。

サプライヤーと立場は平等であり、価格は適正を求めること

サプライヤーの方々とは平等な立場です。間違っても脅したりして無理な取引条件を押し付けたりするようなことはしてはいけません。基本はサプライヤーにとって有利な条件などを準備し、そのうえで適正な価格を求めるということです。常にサプライヤーからの新しい提案に対し窓口を開けておくこと。その提案をどこよりも先に最初に持ってきてくれるような関係を日ごろから構築しておくことが重要です。

今回は価格交渉の戦略を中心に記述しましたが、前提条件として、「院内調整」があります。特に医療機関で取り扱う物品ですので、欠品や欠陥商品、質の低い製品などは患者様に甚大な被害を与えてします可能性もあります。実際に現場で使用する職種の方たちの意見も十分にヒアリングしながらさまざまな戦略、戦術を駆使して「適正価格」で購入する活動を行いましょう。

皆さんはどう思いますか?

次回は2月14日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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