第41回 三つのケーススタディーで考える:最適解探求のアプローチ

前回のコラムで提示した三つの例題を使って、最適解を探るアプローチを考えていきましょう。「広告戦略」「片思いの相手への告白」「ランニングフォーム」と、ビジネスや生活に関わる具体的なテーマを用意しました。

三つのケーススタディーで考える:最適解探求のアプローチ

正解と最適解、どちらが重要かと問われたら、あなたは何と答えますか? この二つの概念を理解し、適切に使用することが問題解決への近道です。
前回のコラムで提示した三つの例題を使って、最適解を探るアプローチを考えていきましょう。

正解と最適解の比較

 正解最適解
定義問題に対して一般的に正しいと認識される答え。与えられた条件のもとで最も良い結果をもたらす答え。
特徴明確で客観的な答え。一つの正しい答えが存在する。数学的、論理的な問題でよく見られる。条件や目的によって異なる。複数の答えが存在する。リソースや制約を考慮する必要がある。
適用場面例数学の問題。解答が一つに限られるクイズ。はっきりした正誤が存在するテスト。ビジネス上の意思決定。日常生活、人生における問題解決。
問題例問題(1):「2+2は幾つか?」
正解:「4」
問題(2):「日本の首都は?」
正解:「東京」
前回、提示した三つの問題
下記本文参照。
  • * 前回のものを再掲

最適解の問題例は以下の三つでした。

問題(1)「最も効果的な広告戦略は何か?」
問題(2)「片思いしているあの人へ告白する方法は?」
問題(3)「私の最適なランニングフォームは?」

時間に余裕のある方は、ご自分で問題を一つ選び、3分間考えてみてください。

前回、最適解を探るコツを六つ示しました。これを「最適解を探るアプローチ」と呼ぶことにします。

このアプローチに沿って、三つの問題例の最適解を探っていきましょう。大切なことは、「問題を正確に定義する」「解決する目的を明確にする」の二つです。以下は、各例題のアプローチの一例です。

問題(1)「最も効果的な広告戦略は何か?」

これはビジネスシーンでイメージしやすい事例ではないでしょうか。

  1. 問題の正確な定義:特定のターゲットに対して製品やサービスの認知度を高める方策が定まらない。
  2. 目的の明確化:最終的には、広告キャンペーンを通じて売上を増加させること。
  3. 情報収集:ターゲットの行動パターン、競合他社の戦略、市場のトレンドを分析する。
  4. 代替案の生成と評価:SNSマーケティング、インフルエンサーとのコラボレーション、オンライン広告など、複数の戦略を考案し、それぞれのコストと効果を評価する。
  5. 制約とリソースの考慮:予算、時間、人的リソースの利用可能性を確認する。
  6. 意思決定:収集した情報と利用可能なリソースを総合的に考慮し、最も効果的と思われる戦略を実践し、効果測定をして修正を行う。

問題(2)「片思いしているあの人へ告白する方法は?」

これは多くの人が経験してきた(経験している)永遠のテーマですね。センシティブな問題で理屈どおりにはいきませんし、もちろん、万能の正解もありません。

  1. 問題の正確な定義:片思いの相手に気持ちを伝える方法が分からず、モヤモヤしている。
  2. 目的の明確化:相手に真摯(しんし)な気持ちを理解してもらい、良好な関係を維持すること。
  3. 情報収集:相手の性格、好み、現在の状況など、関連する情報を集める。
  4. 代替案の生成と評価:直接的な方法、手紙を書く、共通の友人を通じて気持ちを伝えるなど、複数の告白方法を考え、それぞれの利点とリスクを評価する。
  5. 制約とリソースの考慮:自分の感情の安定、相手との関係性、タイミングなどを考慮する。
  6. 意思決定:収集した情報と自身の状況を考慮し、最も適切と思われる告白の方法を選択する。場合によっては告白を保留する。

問題(3)「私の最適なランニングフォームは?」

これは日常生活でイメージしやすい人も多いでしょう。ランニング、ジョギング、スイミングなど。私はフォーム以前に簡単な運動の習慣を身に付けられないことが悩みです。

  1. 問題の正確な定義:効率的かつけがのリスクを抑えるランニングフォームを確立できていない。
  2. 目的の明確化:長期的にランニングを続けることができる健康的なフォームを確立すること。
  3. 情報収集:最新のランニング技術、体形や足の形に合ったランニングシューズの選び方、他のランナーの経験談を調べる。
  4. 代替案の生成と評価:フォームの微調整、ランニングシューズの変更、トレーニング方法の変更など、改善策を検討し、それぞれの効果を評価する。
  5. 制約とリソースの考慮:利用可能なトレーニング環境、時間、体のコンディションを考慮する。
  6. 意思決定:収集した情報と自身の条件を総合的に考慮し、最も効率的なランニングフォームを選択・実践し、効果測定をして修正を繰り返す。問題(2)に比べれば、トライ・アンド・エラーは容易でしょう。

さて、このアプローチで大切なことは、「問題を正確に定義する」、「解決する目的を明確にする」の2点だと前述しました。これは当たり前のようですが実際には見落とされがちなことです。この二つを行わないと、問題解決の手段が目的化してしまいます。「広告を打つこと」「告白すること」「走ること」は問題を解決するための手段であり、目的そのものではありません。

例えば、問題(2)で、自分と相手の現在の状況(関係性、親しさなど)や、目的(結婚してほしい、つき合ってほしい、まずは友達として親しくなりたい、フランクに話せる間柄になりたいなど)によって、最適解は異なります。
問題(3)でも、自分の身体能力と、走る目的(ダイエットする、メタボリック症候群を予防する、健康を増進する、自己記録更新・レース優勝を目指すなど)によって、理想のランニングフォームは異なるでしょう。

まとめ

「正解」と「最適解」との違いを認識することが問題解決に有効であることをご理解いただけたでしょうか? 実践のトライ・アンド・エラーを繰り返し、最適解を探るスキルを高めてください。

前回、前々回のコラムでも「最適解を探る」をテーマに書いています。ぜひこちらも併せてご覧いただければと思います。

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この記事の著者

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
石山社会保険労務管理事務所

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