第128回 規則やルールだけの不正防止の限界という話

最近また企業の不正や不祥事が目につきますが、不正を防止するための規則やルール、仕組みだけで人の動きを縛ることには限界があり、他にも多くの取り組みを考える必要があります。

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規則やルールだけの不正防止の限界という話

相変わらず企業の不正や不祥事が数多く発覚しています。
直近では某自動車メーカーの認証試験の不正、少しさかのぼると某中古車販売会社の修理費水増し請求、某携帯電話サービス会社の管理職による委託業者と共謀した巨額詐欺といったことが目につきます。
もっと前では某建設会社子会社による工事のデータ不正、某電機メーカーの不正経理、その他大手の有名企業を含めた不正や不祥事は、解決に向かうというよりどちらかといえば問題が増える一方の印象で、まるでモグラたたきのように見えます。

その中身を見ていくと、個人的もしくは自社だけの利益のために不正が行われるケースと共に、工期短縮のプレッシャーによる不正、業界内での過当競争などが発端となった不正も見受けられます。全体的なモラルが下がっているともいえますし、不正に手を染めなければならないほど関係者が追い詰められていると見ることもできます。
たぶんこれからもさまざまな不正や不祥事が発覚し続け、その度に関係者の処罰と原因を踏まえた規制強化がされていくのだろうと思います。

ささいな不祥事は日々いろいろなところで起こっている

仕事を進めていく中での不正、不祥事というのは、ここまで大きな話ではなくても、日々のささいなことでは実はいろいろ起こっています。例えば、社員が指示どおりに物事を進めていなかった、ミスやクレームなどを報告せずに隠していた、事実と異なる報告をしたなど、軽微なものはそれほど珍しいことではないでしょう。あいまいな境界線での経費使用、備品のあまり適切とは思えない使用、業務怠慢やサボりと見られる仕事ぶりなどは、常にどこかで発生しているのではないでしょうか。

これは最近ある会社であったことですが、ちょっとした社内手続きに関して決められた処理の手抜きが横行していることが判明し、これを防ぐための対策を考えています。話題の中心になっているのはルールと仕組みの話で、申請書式の内容や添付書類に何を出させるのか、どんなプロセスで誰が承認するのかといったことが検討され、中には罰則の必要性を述べる人もいます。システムによって効率化しようということも、合わせて検討されています。

ただ、これらの対策を性悪説に立って考えれば考えるほど、その抜け道となりそうなことはそれこそ際限なくあります。この穴の全てを精緻な規則やルール、その他の仕組みによって埋めようとすると、書類の枚数や承認手続きのプロセスが増え、その運用には今まで以上に多くの労力が必要となります。もしシステム化するなどとなれば、相応の導入コストも運用コストもかかります。特に中小規模の企業では簡単にできることではありません。

また、もしそこまでの規則と仕組みを作ったとしても、不正を完全に防ぐことは難しいものです。ある程度の権限を持った管理者や社員がその気になってしまえばなかなか防ぎようがなく、最後は人の良心に委ねるしかないところがあります。

会社として不正抑制のためにできること

しかし、人の良心に委ねるとはいっても、会社としてできることが何もない訳ではなく、その方法は幾つか考えられます。

一つ目は、情報が多くの人の目に触れるように透明化することです。不正抑止のためには複数の人の目を介することが特に重要であり、目にする人の数が多ければ多いほど不正は行いにくくなります。情報の機密性といったこととの兼ね合いになりますが、一般的には個人情報と人事情報、その他企業機密に関わるごく一部のセンシティブな情報以外に、多くの人の目に触れて問題になる情報というのは、実はそれほど多くありません。あくまで私の経験ですが、情報の共有意識が薄く隠しごとの多い会社ほど、ちょっとしたルール違反や不適切な行為は多い気がします。

二つ目としては、その人となりを見ながら適切な配置を行うということです。例えば、金銭にルーズな人や借金がある人には決裁権限を持つような役割を与えないことや、その人の経歴から見て癒着が起こりにくい部門、職種に配置するといったことです。権限の集中は不正を生みやすくなります。

さらに三つ目は、やはりしっかり社員を教育、啓発するということです。不正によって自分の身に直接降りかかってくる問題の重大さが分かっていて、自分が大きな損失を被る恐れがあると認識すれば、そのことは確実に不正に対する歯止めとなります。

不正防止には多くの取り組みが必要

相次いでいる企業の不正や不祥事には、これから行政機関なども絡んでさまざまな規制や規則、内部統制の仕組みづくりなどが実施されていくのだと思います。もちろん規則やルール、仕組みを整備することは重要で、それがあるから人間の気持ちに魔が差すような状況を防ぐことができます。
ただ、規則やルールだけで人の動きを縛ることは難しいこともまた事実です。不正防止のためには他にも多くの取り組みが必要となることは、十分に理解しておく必要があります。

次回は5月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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