第127回 「自発的に行動する新入社員」のちょっと困った話

「最近の新人や若手社員は受け身で困る」などと言う上司、先輩は多いですが、実際には自立的、自発的に行動できる人材も大勢いて、そんな人たちの指導は受け身の人たちとは違った難しさがあります。

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「自発的に行動する新入社員」のちょっと困った話

新年度に向けて、新卒社員を受け入れる予定の会社も多いと思います。期間はまちまちですが、配属前の新人研修はほとんどの会社で実施されますので、これに関わる担当者は既に準備に忙しく、新人が入社してからもしばらくはいろいろ大変でしょう。
新入社員に対して、特に入社直後から数カ月の間は、その接し方が以降の定着や能力向上に大きく影響するといわれます。近年は新人に一刻も早く会社に慣れてもらって、組織への定着と戦力化を促進する「オンボーディング」と呼ばれる取り組みも一般的になっています。大切な役割ということを理解して頑張っていただければと思います。

受け身ではなく、自発的に行動する新入社員もいる

最近の新卒や若手社員は、受け身の姿勢が多いなどといわれ、そのことに頭を悩ませる教育担当者も多いようです。ただ実際の現場を見ている限り、これは結局その人によりけりで、多数派とはいえないかもしれませんが、自分から積極的に周りに働きかけ、自立的、自発的に行動しようとする新卒、若手社員もそれなりにいます。
しかし、そんな「自立心旺盛で自発的に行動する新入社員」には、ときどき困ったことも起こります。

これは以前ある会社から聞いたことですが、1人の新入社員が入社に関するちょっとした書類作成を確認せずに自己判断で行ったため、内容に誤りがあったそうです。しかし、その修正を指示したところ、また自分だけで何か調べて勝手な思い込みをしたらしく、再び似たような間違いをしたまま提出してきました。

あらためて細かく教えて書類を作成させ、手続きは何とか無事に完了したものの、本人はそのことを反省している様子はありません。それほど重大なミスではありませんし、そもそも知らなかったことを自分なりに考えてやったうえでの結果ですので、本人は仕方がないこと、当然のことだと思っているのかもしれません。

この新入社員は、何事にも前向きで積極性があり、知らない人の輪の中にもどんどん自分から入っていく、周りの上司や先輩からもかわいがられるキャラクターだそうです。
自分のことはできるだけ自分で解決しようと考えていて、分からないことは周りに聞く姿勢もありますが、自分の考え方に自信を持っていて、若さゆえの経験不足や視野の狭さがあるという自覚はなく、本来確認すべきと思われることも自分だけの判断でやってしまう傾向があります。

自発的に行動する傾向が強い人材へのアプローチ方法

指示待ち傾向が強い人材の場合、初めは細かく指示しながら成功体験を積ませ、徐々に自分から行動できるように仕向ける指導をしますが、自分で判断し、なおかつその判断に自信を持っている人への指導は、同じやり方ではうまくいきません。
このようなタイプの社員は、自己判断だけでどんどん先に行動してしまいますので、何かと失敗につながりやすく、それなりのプライドも持っているため、失敗を失敗と思わないようなところがあります。

指導する側としては、つい「経過報告をしろ」「事前に指示を仰げ」などとなりがちですが、これは「自分で決めるな」と言っているのと同じで、自発的な志向を持った人材にとってはかなり息苦しいことです。そんな対応に終始すれば、「辞めたい」などと言い出すことは十分にありえます。

自立的、自発的な人の指導で重要なことは、「これは自分で決めたこと」と思わせる手順を踏むことです。具体的には「○○をしなさい」という一方的な指示でなく、「○○をするのに必要なことは何だと思う?」などと質問し、自分で考えさせながら適切な結論に導くことです。

これは、どんなタイプの人材にも使える方法ですが、自立的、自発的に考える志向を持つ相手には、より意識して行う必要があります。また、自分で考えて行動する人は、あまり途中経過を報告しない傾向が見られます。指導する側から「あれはどうなった?」などと適宜確認していく必要があるでしょう。

相手のタイプを見極めて指導することが重要

「最近の新人や若手社員は受け身で困る」などと言う上司、先輩は多いですが、「自立心旺盛で自発的に行動する社員」を指導するのは、受け身の人以上に難しいところがあります。
結局は新人、若手に限らず相手のタイプを見極めて、それに合わせた個別の指導が必須になっているということではないでしょうか。
いずれにしても、人材育成というものは簡単なことではありません。

次回は4月23日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

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小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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