第12回 「セルフ・マネジメント」の本質とは何か

「セルフ・マネジメント」という言葉を聞いて皆さんはどういうイメージをお持ちになりますか。
これもまた、「自己管理」といった安易な言葉で訳されてしまうと、「毎朝何時に起きる」「どれくらい運動をする」といったように、「自分自身を厳しく律し管理する」というニュアンスで受け取られるかもしれません。

しかし、マネジメント理論の中で扱う「セルフ・マネジメント」の本質的な意味は、そうではありません。

文字通り、

「自分自身という貴重な資源を最大限活かし、まず自身が成果を上げる」

という意味です。

ドラッカーはこう言っています。

「一流の仕事をするには、まず自己の強みを知ること。そして、仕事の仕方を知り、学び方を知る。価値観を知る。自己を知ることで、得るべきところがわかり、なすべき貢献が明確になる。」

■ 自分独自の強み、得意な仕事の仕方
■ 自分自身の価値観
■ 情熱を持って取り組みたいこと、貢献したいこと
を自己認識し、まずマネージャー自身がそれらを実際の仕事において発揮していかないことには卓越した仕事をすることはできない、ということです。

一方、現実を見ると、現代組織のマネージャーの多くは「疲弊」しているように見えます。
あまりにも細分化された業務やルール、煩雑な事務処理、人間関係、人事異動や配置転換により、本来の自分とは違う働き方を余儀なくされている場合も多いでしょう。

「自分自身が活かせていない」場合には、どんなに美しい言葉で語っても、見栄えのよいプレゼンテーション資料で説明をしても、「その人自身の思い」が感じられません。
言い方は悪いですが、非常に性能のよい「機械」が話しているような感覚を受けることもあります。話の内容に感心することはあっても感動することは少ない。それでは、組織全体を動かすエネルギーは生まれてきません。感動によってこそ、人は自発的に動くようになるからです。

組織である以上、やりたい仕事だけやれるわけではないですし、様々な制約やストレスもあるはずです。管理職であればなおさらでしょう。しかしそれでも、

「自分自身は一体何を成し遂げたいのか?」
「この仕事の仕方は自分の本当の価値観に合っているのか?」
「自分独自の強みは、発揮できているのか?」

といった勇気ある問いかけを、今こそ自分自身にするべきだと私は思います。

人間の発想力や創造性が直接新しい商品やサービスの開発につながっていく現代では、企業も「生命力」を再度取り戻していくことが不可欠だからです。そしてそれは、マネージャー自身の意識転換から始まるはずです。

私がドラッカー・スクールという経営大学院に留学した際、ピーター・ドラッカー教授が学生たちに話した言葉を今も強くおぼえています。

「Remember who you are. Take your responsibility.」

すなわち、「まず君たち自身が何者なのか、思い起こしなさい。そしてそれに対し責任を持ちなさい。」というメッセージでした。

とかく我々は、「どの組織に所属している。」「どういう肩書き、役職を背負っている。」という言い方をしてしまいます。ドラッカー教授は、そういった傾向に警鐘をならし、「肩書きや所属先にはあまり関心はない。あなたたちが何を目指していて、どんな強みを持っている、どのような人か、に関心があるのだ。」という話をしていました。

「自分自身が何者かを理解し、自分を活かすマネジメントができなければ、決して組織をマネジメントすることはできない」

これがドラッカー教授の考えの根っこにあります。

皆さんも是非、この「セルフ・マネジメント」につき、じっくり考えてみてください。外部環境のストレスや制約を無理に乗り越えていくことよりも、自分自身の内面を問い、内面から変化を起こしていくことで思わぬブレークスルーが生まれると思います。

次回は12月8日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

PROJECT INITIATIVE株式会社 代表取締役

藤田 勝利

1972年生まれ。上智大学卒業後、住友商事、アクセンチュアを経て、クレアモント大学院大学 P.F ドラッカー経営大学院にて経営学修士号取得。ベンチャー企業執行役員として事業開発に従事後、2010年独立。次世代経営リーダー育成や新規事業の分野で幅広く活動中。著書:「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」(日本実業出版社)
PROJECT INITIATIVE株式会社

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