第126回 コスト削減を提案して「うちの商品にお金出してください」は通用しない

「コスト削減」「人員削減」「業務負担の削減」……法人営業でよく見かける言葉で、多くの営業担当者がお客さんにメリットとして提案しています。しかし響かない、理解してもらえない。今回はコストや人員、業務負担の削減を提案する時のポイントについてご紹介します。

コスト削減を提案して「うちの商品にお金出してください」は通用しない

法人営業の提案では、お客さんのメリットとしてコスト削減、人員削減、工数や業務負担の削減を伝えているシーンが多い。
しかし、なかなか響かない、理解してもらえない……

販売管理システムを売っているセントテクノロジーの営業担当Aさんが、リーディングカンパニーに提案していました。
Aさんが提案する販売管理システムは、営業計画と見込み情報や受注情報を一元管理できて、請求管理システムと連携できるシステムです。

特長として、

  • 受注情報を登録するだけで営業会議の報告書が自動で作成できる。
  • 営業部長、マネージャー、担当者など、営業部全員がリアルタイムに見込み情報や受注情報を共有できる。
  • 請求管理システムと連携していて、受注情報を登録するだけで請求処理までできる。

その結果、営業社員の業務負担を削減できるシステムです。

販売管理システムの営業シーンで

そこで、Aさんはリーディングカンパニーの営業企画担当Bさんに提案しました。

各社の販売管理の状況や背景やシステムの機能、競合他社との違いを説明した後に……

特長として、

  • 報告書が自動で作成できる。
  • 営業部全員がリアルタイムに見込み情報や受注情報を共有できる。
  • 受注情報を登録するだけで請求処理までできる。

メリットとして、

  • 業務負担を削減することで、コア業務である営業活動に専念させることができる。
  • 営業アシスタントなどの人件費を削減することができる。

Aさんが提案した後にBさんは、
「ありがとうございます。営業部と検討してみます」
「検討に2週間ぐらいかかりますが、ご連絡させていただきますので少々お待ちください」

そして、2週間後……

Bさんから電話がかかってきて、
「申し訳ないのですが、お断りさせてください」
「営業アシスタントを1人増やそうと思っているので、予算がとれないんですよ」
「確かに営業社員の負担は大きいんですけど、今期は販売管理システムよりも昨年リリースした新商品の営業に力を入れないといけませんので」

営業アシスタントを1人増やそうと思っているので予算がとれないって言うけど、「人件費を削減できる」って提案したのに……

新商品の営業に力を入れないといけないって言うけど、「コア業務である営業活動に専念させることができる」って提案したのに……

具体的に削減できる金額を提示できなかったからダメだったのか……
でも、削減できる金額が分からないからしょうがない。

新商品の営業戦略の検討や営業担当者への提案指導で忙しいんだろうな……
時期が悪かったんだろう、しょうがない。

“削減”することだけが目的ではない

本当に「しょうがない」のでしょうか?
Aさんの提案で何が良くなかったのか、皆さんも考えてみてください。

「報告書が自動で作成できる」と提案していますが……
何が、どのくらい削減できるのか? 本当に削減できるのか? 逆に販売管理システムの入力、会議や上司への報告自体で負担が増えたりしないのか?

「コア業務である営業活動に専念させることができる」と提案していますが……
コア業務って何? どんな業務? 販売管理システムにお金を払って専念させるコア業務の価値ってどんなもの?

「営業アシスタントなどの人件費を削減することができる」と提案していますが……
誰の人件費? 誰がいなくなっていいのか? 人件費を削減して何をするのか?コストを削減して何がうれしいのか?

……何も分からない。

「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」
確かに多くのお客さんが必要と言っていることで、求めていることです。

しかし、「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」という言葉では、本当に削減できるのかを理解させることはできません。

また、「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」はお客さんにとって目的ではなく、削減した結果「何を実現できるのか?」が目的です。
この目的がない、または、分からないまま「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」を検討することはありません。

お客さんは、

「ただ、使うお金を減らしたい」から検討するのではなく、「使うお金を減らして、やりたいこと、実現したいことがある」から検討する。

「ただ、人員削減したい」から検討するのではなく、「人員削減して、やりたいこと、実現したいことがある」から検討する。

「ただ、工数や業務負担を削減したい」から検討するのではなく、「工数や業務負担を削減して、やりたいこと、実現したいことがある」から検討する。

“削減”の先にあるものを提案する

「コスト削減」「人員削減」「工数や業務負担の削減」を提案するときは、
「どのようなコストを削減?」「どのような人員を削減?」「どのような工数や業務を削減?」を考えて伝えましょう。
そして、「コストを削減して実現することは?」「人員を削減して実現することは?」「工数や業務負担を削減して実現することは?」を考えて伝えましょう。

「コスト削減」って提案しながら、「自分の商品にお金を使ってください」という提案……
「どのようなコストが削減できるのか?」「コストを削減して実現することは?」が明確でないのに通用するわけがありません。

コスト削減、人員削減、工数や業務負担の削減を提案する方法は……

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次回は11月20日(月)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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