第125回 新規商談では用件が商品説明でも目的は課題を聞き出すこと

自分から「商品を説明したい」と言って、また顧客からも「商品の説明を聞きたい」と依頼されて訪問……。しかし、1回の訪問で終わり次の営業ができない。その原因の多くは用件や依頼が「商品説明」だからと“正直に”商品説明を目的として訪問していることです。今回は新規商談の目的についてお話しします。

新規商談では用件が商品説明でも目的は課題を聞き出すこと

取引先を拡大しようと新規顧客への訪問や既存顧客の他部署への訪問を進めている会社も多いことでしょう。

しかし、1回の訪問で終わってしまう営業が多い……
せっかく訪問しても次の営業につながらない。

みなさんの会社はいかがでしょうか?

「サービスの説明が聞きたい」との問い合わせで、訪問してみて

テレアポ代行会社のセントカンパニーにシステム開発会社のリーディングコーポレーションから問い合わせが入りました。
「テレアポの外注を検討しているのでサービスの説明を聞きたい」

セントカンパニーのAさんが担当して訪問することになりました。

Aさんは訪問前に、会社紹介とサービス紹介の資料、先輩からもらったシステム開発会社の事例資料を準備しました。

そして、訪問しお客さんと面談……

Aさん
「本日はお時間をいただきありがとうございます」
「テレアポの外注を検討していると伺いましたが、どのような商品のテレアポを検討されているんですか?」

リーディングコーポレーションのBさん
「新商品として昨年リリースしたクラウドサービスです」
「うちの営業社員は新規開拓営業が苦手なので、アポイントを取れないんですよ」

Aさん
「そうなんですか、新規開拓営業が苦手な人にとってテレアポは難しいですからね」

Bさん
「それで専門会社に外注しようかと考えていて」
「具体的に検討するのはこれからなんですが」

Aさんは、会社紹介資料を見せながら、

「分かりました、それでは当社について説明させていただきます」

「当社は設立20年でテレアポ専門会社として立ち上げました」
「その後、インサイドセールスやカスタマーサクセス、そしてメール配信などサービスを広げ……
現在は顧客接点に関して総合的に支援しております」

次に、サービス紹介資料を見せながら、

「それでは、当社のテレアポ代行サービスについて説明させていただきます」
「テレアポ代行サービスの導入企業数が……」

「まず、特徴を説明させていただきますと、
10年以上テレアポ代行サービスに従事したマネージャーが20人いて……
運営体制は……スタッフは入社研修で……」

「次に、サービスの流れですが、
はじめに、テレアポ対象の商品やターゲット、クライアント様のご要望などをお伺いさせていただき、その後、当社で設計させていただきます」

「設計内容としては、
商品やターゲットの特性に対し当社で蓄積したデータからアポイント獲得率と件数をシミュレーションし、そして、トークスクリプトを作成。それと……」

「その後、担当するスタッフに対し1日かけて教育し、翌日からテレアポをスタートします」

「進捗(しんちょく)管理と貴社へのご報告は、……」
「その他に、……」
「料金は、……」
「実績としては、300社以上あり、システム開発会社様でも……」

そして、システム開発会社の事例資料を見せながら

「社名は言えないのですが、大手システム開発会社で代行させていただいた時は、
対象商品が……、ターゲットが……、アポイント獲得件数が……」

一生懸命に詳しく説明していると面談を始めてから30分がたちました。

一通り説明すると大手システム開発会社の事例やテレアポのリストについてBさんから質問され、回答していると面談を始めてから50分。

残りの10分でAさんは質問しました。
「ところで、今回のテレアポのターゲットはどういう会社ですか?」

Bさん
「製造業と小売業で従業員数が500人以上の会社、ターゲットの部署は情報システム部です」

Aさん
「テレアポ代行サービスのスタート時期はいつごろとお考えでしょうか?」

Bさん
「早ければ再来月からスタートしたいんです」

Aさん
「他社様にもお声がけされていると思うのですが、いかがですか?」

Bさん
「他に2社から話を聞いているんですけど、価格面と実績で御社が一番かなっていう感じがしています」
「営業部にも確認しないといけないので1週間ぐらい検討させてください」

Aさん
「ありがとうございます。がんばりますのでご検討お願いします」

競合他社と比べた評価も良かったし、好感触!
受注できるかもと思いながら面談を終えました。

2回目の訪問もできず、商談は保留に

1週間後に電話をしてみると……

Bさん
「もう少しお待ちいただけますか?」
「予算と時期について再検討しないといけなくなりまして」

Aさん
「予算と時期ってどんな状況ですか?」

Bさん
「展示会に出展するんですけど、ずいぶん費用がかかるみたいなので予算が厳しくて」
「それと、営業部が忙しいみたいで検討が進んでいないんですよ」

Aさん
「そうなんですか、状況を伺いに行きたいのですが、ご都合はいかがですか?」

Bさん
「申し訳ないんですが、ここのところ忙しくて時間がとれないんです」
「検討が進んだらこちらからご連絡しますので」

……あれ、雲行きが怪しくなってきた。

1カ月後にBさんから電話がかかってきて
「申し訳ないのですが、今回のテレアポの外注は保留になってしまいました」
「しばらくしたら検討すると思いますので、その時はお願いします」

Aさんは
今期は予算をとれないし、今は忙しいみたいだからしょうがない。

なぜ、Aさんは「予算が厳しい」「営業部が忙しい」と言われて対策を考えられなかったのでしょうか?

テレアポ代行サービスの特徴も事例も詳しく説明して、評価も良かったし好感触だったのに。

みなさんも考えてみてください。

「商品を説明する」ことだけが目的になっていませんか?

問い合わせのときに「サービスの説明を聞きたい」と依頼されていたので、Aさんは会社やサービスについて詳しく全部説明しました。

その結果のリーディングコーポレーションのBさんとAさんの状況は……

Bさんは
「セントカンパニーの会社やサービスについて全部知っている」

Aさんは
「リーディングコーポレーションについてあまり知らない」

すると、
Bさんは、セントカンパニーのことを全部知っているので会う必要がない。
Aさんは、リーディングコーポレーションのことを知らないので何もできない。

リーディングコーポレーションのことを知らなくてできることは、状況を聞くことかお願いすることだけ。

もし、商品を全部説明していなければ、事例を説明していなければ……
事例紹介で次の訪問ができ、お客さんの課題を聞き出す場を作れたかもしれません。

もし、リーディングコーポレーションの状況を知っていれば……
クラウドサービスの営業戦略や展示会の状況、決裁者の意向を聞いて知っていれば、予算をとらせるための提案や対策を考えられたかもしれません。

お客さんの情報があればあるほど、提案や対策、訪問するためのネタを考えることができます。
お客さんの情報がないと、できることは自分が知っている商品の紹介かお願いすることだけ。

自分から「商品を説明したい」と言って訪問
お客さんから「商品の説明を聞きたい」と依頼されて訪問

用件や依頼が「商品説明」だからと言って、正直に「商品を説明すること」を目的にしている営業担当者が多く見受けられます。
用件や依頼が「商品説明」であっても営業の仕事は受注を獲得し、売上を上げることです。
受注を獲得するために何をやるべきかを考えなければなりません。そしてその何をやるべきかを目的にしなければなりません。

受注を獲得するために新規商談で初めにやるべきことは、お客さんの情報を聞き出すこと、課題を聞き出すことです。
「商品の説明を聞きたい」と依頼されても、新規商談の目的は「お客さんの情報を聞き出すこと、課題を聞き出すこと」。

商品を説明したいと言って訪問しても、商品の説明を聞きたいと依頼されて訪問しても、正直に「商品を説明すること」を目的にせず、「お客さんの情報や課題を聞き出すこと」を目的に訪問しましょう。

新規商談の目的と初回訪問で課題を聞き出す方法は……

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は10月16日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

戦略・計画

あなたはシステム会社の営業部長です。
AIサービスを立ち上げたので営業戦略を考えています。はじめにターゲットの業種や規模を考えました。
次に何を考える?

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10月~11月にかけて課題解決型営業、戦略営業に関する各テーマで参加料無料の営業強化セミナーを開催します。
ご興味のあるセミナーにご参加ください。

2023年 秋 営業強化セミナー

10月6日(金)「営業戦略セミナー」【Web】
営業戦略、営業戦術、新規事業・マーケット拡大、ターゲット、競合対策、自社資産の活用

10月12日(木)「課題解決型営業セミナー」【Web】
課題解決型営業プロセス、積極提案、顧客課題・提案考察力、商談・提案力、顧客関係力

10月20日(金)「顧客攻略力(戦略営業)セミナー」【Web】
戦略営業、決裁者・関係者・予算・競合対策、クロージング、アカウントプラン

10月26日(木)「営業マネジメントセミナー」【Web】
PDCAマネジメント、進捗状況・課題の把握、対策策定・指導、営業管理、モチベーション

【近日公開予定】
11月9日(木)「営業改革セミナー」【Web】
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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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