第124回 課題や提案を考えるためには顧客の状況を具体的に想像する

課題解決型営業や戦略営業では、要求を聞いて対応する御用聞き営業や待ち受け型営業とは異なり、自ら課題や提案、戦略を考えなければなりません。しかし、考えられない、考えてもただの一般論。この原因の一つは顧客のことを想像できないことです。聞く、調べるだけでは考えられません。今回は、顧客のことを想像する方法についてご紹介します。

課題や提案を考えるためには顧客の状況を具体的に想像する

課題解決型営業でお客さんの課題や提案を考える。
戦略営業でお客さんの予算や決裁者の意向を考える。
いずれも聞くだけ、調べるだけではなく、お客さんの状況や意向を想像しなくてはなりません。

しかし、お客さんの会社の中を見たことがないので知らない、想像できない。
そして、考えられない。

顧客が抱える課題を見つけ、想像することは難しい

Web会議システムの営業担当Aさんがオフィス家具メーカーであるセントカンパニーの課題や提案を考えていました。

セントカンパニーの経営課題を調べてみると……

「従来のオフィス家具の販売ビジネスから働き方を提案するビジネスへ変革する」
「営業と設計との連携を強化して提案力を強化していく」
「事務所と自宅、外出先など、多様な働き方を進めて社員の満足度を向上する」

そこでAさんは……

自宅や外出先での仕事も増えていくから、いつも事務所でミーティングを行うというわけにはいかなくなるだろう。
そして、営業と設計の連携を強化していくからミーティングや情報共有も増えていくだろう。

Aさんが考えた課題は
営業と設計との間で事務所や自宅、外出先など異なる環境でミーティングを行う必要がある。

提案は
Web会議システムを導入すれば遠隔でのミーティングを促進できる。
そして、仮説提案書を作成しました。

完成した後に読み返してみると……
「あれっ、前回の商品紹介で説明したことと同じような気がする」

前回の訪問のときに商品について説明したことは、

  • 働き方改革を進めているため営業と設計の人が異なる環境でミーティングを行う必要がある。
  • Web会議を導入すれば遠隔でのミーティングを促進できる。

「全く一緒だ!」
「これじゃお客さんに『前回も聞きました』と言われて信用をなくしてしまうかもしれない」

一般論にならない提案書を作るためにはどうすべきか

そこで、上司Bさんに相談しました。

Aさん
「仮説提案書を作ったんですが、前回の訪問のときに説明したことと同じになってしまうんですが……」

Bさん
「なんで? どんな仮説提案書を作ったの? 説明してみな」

Aさん
「働き方改革を進めているため、営業と設計の人が異なる環境でミーティングを行う必要がある」
「Web会議を導入すれば遠隔でのミーティングを促進できる」

Bさん
「それ、ただの一般論だろう」
「お客さんのことを具体的に想像しながら作らないと」

Aさん
「想像って?」

Bさん
「セントカンパニーはオフィス家具メーカーだろう? オフィス家具メーカーのことを想像しないと」
「働き方改革を進めているため、営業と設計の人が異なる環境でミーティングを行う必要があるって言うけど、例えばどういうこと?」

Aさん
「うーん……」
「オフィス家具メーカーで働いたことないから知らないですし、想像できないですよ」

Bさん
「間違っていてもいいから想像してみろよ」
「じゃあ、ミーティングって言うけど、オフィス家具メーカーの営業と設計ってどんなミーティングをしていると思う?」

Aさん
「提案書の作成かな」

Bさん
「確かに提案書のことでミーティングしているかもな」
「そうしたら、オフィス家具メーカーの提案ってどんな提案?」

Aさん
「オフィス家具のことでしょ、デスクとか椅子、あとキャビネットとかパーティションもあるか」

Bさん
「確かに、そうしたら提案書にどんな情報が書いてあるかな?」

Aさん
「写真があるかな、あとはサイズや素材も書いてあるかも」

Bさん
「あと、働き方を提案するって言っているけど、どんなことを提案していると思う?」

Aさん
「在宅勤務が増えているでしょうから、自宅での働き方とか」

Bさん
「なるほど、自宅での働き方って提案書にどんな情報を書いていそう?」

Aさん
「自宅用の家具……例えば自宅用のデスクや椅子とか、あとパソコンも提案しているかも」

Bさん
「オフィスの働き方ではどんな提案をしていると思う?」

Aさん
「オフィスのレイアウトとか」

Bさん
「レイアウトを提案するのにどんな情報が必要?」

Aさん
「提案相手の会社のフロア図面」

Bさん
「フロア図面ってどうやって手に入れるの?」

Aさん
「営業がお客さんからもらっていると思います」

Bさん
「なるほど」
「あと、営業と設計の異なる環境ってどんな環境?」

Aさん
「設計が事務所か自宅にいて、営業が外出していると思います」

Bさん
「外出しているって、例えばどういう場所?」

Aさん
「静かな場所……例えば、静かな喫茶店とか。そういえば、お客さんがサテライトオフィスを契約しているって言っていました」

Bさん
「なるほど」
「じゃあ、どんなミーティングをしていると思う?」

Aさん
「サテライトオフィスにいる営業がお客さんからもらったフロア図面を共有して、あと事務所か自宅にいる設計が持っているオフィス家具の写真とサイズや素材などの情報を記載した資料、それに企画したレイアウト図面を共有してミーティングをしているんじゃないかな」
「そして、レイアウト図面に営業と設計が話し合って修正したりしていると思います」

提案は一つずつ具体的に想像して考える

その後、Aさんが作った仮説提案書は、

セントカンパニーの課題

事務所と自宅、サテライトオフィスの間で営業と設計がフロア図面、オフィス家具の写真とサイズや素材の資料、レイアウト図面を共有しながら提案書を作成したり、修正したりする必要がある。

セントカンパニーへの提案

  • 細かな図面やデータを共有し、共同で修正できるよう画面拡大機能とコメント機能が充実したWeb会議システムの導入
  • オフィス家具の資料やレイアウト図面を管理している社内システムとWeb会議システムとのシームレスな連携

この二つにより営業と設計がストレスなくミーティングを行える環境を実現することで、提案の精度とスピードの向上を実現する。

皆さん、Aさんが作った二つの仮説提案書を比べてみてください。

セントカンパニーの課題

【相談前】

営業と設計との間で事務所や自宅、外出先など異なる環境でミーティングを行う必要がある。

【相談後】

事務所と自宅、サテライトオフィスとの間で営業と設計がフロア図面、オフィス家具の写真とサイズや素材の資料、レイアウト図面を共有しながら提案書を作成したり、修正したりする必要がある。

相談前の課題に対し、提案を考えると……
「Web会議システムを導入すれば遠隔でのミーティングを促進できる」と一般論にしかなりません。

しかし、相談後の課題に対し提案を考えると……

  • 細かな図面やデータを共有し共同で修正できるよう画面拡大機能とコメント機能が充実したWeb会議システムの導入
  • オフィス家具の資料やレイアウト図面を管理している社内システムとWeb会議システムのシームレスな連携

この二つにより営業担当者と設計担当者とがストレスなくミーティングを行える環境を実現することで、提案の精度とスピードの向上を実現する。

なぜ、この差が生まれたのか?

要求されて行う営業とは異なり、自ら課題と提案、戦略を考えて行う課題解決型営業や戦略営業では、お客さんのことを具体的に想像する必要があります。

働いたことも見たこともないお客さんの現場の状況を具体的に……

そのためには、全体を漠然ととらえ考えるのではなく、一つ一つを具体的に想像することが大切です。課題解決型営業や戦略営業では一般論を考えても通用しません。

「どんなミーティング?」「どんな提案?」「どんな情報?」「どういう場所?」……一つずつ具体的に想像しましょう。

お客さんを想像する方法は……

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次回は9月19日(火)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

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あなたは営業部長です。
うちの営業社員は受け身で積極的に提案しないし、新しいことに取り組まない、チャレンジしない。
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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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