第123回 営業計画は計画どおりにやるためではなく検証・修正するためのもの

「うちの営業は計画をちゃんと作らない、やらない、2カ月・3カ月経つと気にしなくなる」……経営者や営業責任者から多い相談の一つです。自分で作った営業計画なのに、なぜやらないのでしょうか? 営業とは計画どおりにいかない仕事です。その営業における計画の役割と指導方法についてご紹介します。

営業計画は計画どおりにやるためではなく検証・修正するためのもの

売上目標を達成するための計画を作り営業活動を進めている……しかし、計画どおりにやらない、やろうとしない。
「うちの営業は計画をちゃんとやらない」「うちの営業は2カ月・3カ月経つと計画を気にしなくなる」
と多くの経営者や営業責任者が悩んでいます。

自分で作った計画なのに、なぜ?

営業計画を作って営業活動をスタートしてみたが……

ある会社のマネージャーAさんが営業担当Bさんに今期の営業計画を作らせ、5月から計画にそって営業活動をスタートさせました。

【Bさんの営業計画】
売上目標は1億円、見込み案件が2,500万円しかないから厳しい。
上期は新規開拓営業に力を入れて見込み案件を増やさないと。

上期に新規案件で1,500万円の売上を獲得し、2,500万円の見込み案件を含めて4,000万円の売上を獲得しよう。
そして、新たに3,000万円分の見込み案件を獲得しよう。
そこまでいけば、下期にがんばって今期の1億円の目標が達成できるだろう。

受注単価は案件によってバラバラだけど平均750万円を目指す。
そのために商品だけでなくて、サポートも含めて売れるように提案しよう。

9月までに新規案件で1,500万円の売上、新たに3,000万円の見込み案件を獲得するために
「今の見込み案件以外で受注を2件と見込み案件を4件獲得しよう」

  • 12件は提案しないといけない。
  • そのためには25件の訪問が必要。

「どうやって8月までに25件訪問しようか?」

  • 昨年訪問して可能性があるお客さんが10件ある。
  • 5月下旬に出展する展示会の来場者から10件の訪問を獲得しよう。
  • 販売促進部がWebサイトをリニューアルしたので、5件は引き合いを獲得できるだろう。

5月からの計画は、
8月までに25件の訪問に対し、毎月7件のお客さんを訪問する。
8月までに12件の提案に対し、毎月4件の提案を獲得する。

営業活動をスタートして6月末……

  • 訪問は順調にでき、6月は7件の計画に対し10件の訪問ができた。
  • しかし、提案は4件の計画に対して2件。

7月の営業会議で……

マネージャーAさん
「なんで2件しか提案できていないんだ?」

営業担当Bさん
「10件訪問できたんですけど、提案を獲得できなくて」

Aさん
「毎月4件の提案っていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画どおりにやらないとダメだろう」

Bさん
「すみません、訪問を12件に増やして提案4件を達成します」

しかし、Bさんは提案が増えず翌月の営業会議で……

Aさん
「なんで2件しか提案できていないんだ?」

Bさん
「訪問は増えたんですけど、提案が増えなくて」

Aさん
「毎月4件の提案っていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画どおりにやらないとダメだろう 」

Bさん
「すみません、訪問を14件に増やして提案4件を達成します」

そして、7カ月が経った期末に……

Aさん
「なんで1億円の目標に対して6,000万円しかいっていないんだ?」

Bさん
「訪問は増えたんですけど、提案が増えなくて」

Aさん
「毎月4件の提案っていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画どおりにやらないとダメだろう」

Bさん
「すみません、来期の訪問を毎月16件に増やして毎月24件の提案を達成します」

どこまで訪問を増やすつもりなんだろう???

そもそも営業の計画ってなんだろう?

Bさんは目標を達成できませんでした。
Aさんの指導の中で何が良くなかったのか考えてみてください。

そもそも、営業の計画って何なんだろう?

自分で作った営業計画なのに「ちゃんとやらない」「2カ月・3カ月経つと計画を気にしなくなる」

「なぜ、ちゃんとやらないのですか?」
「なぜ、2カ月・3カ月たつと気にしなくなるのですか?」
と営業担当者に聞いてみると三つの理由があるようです。

1. はじめからできないと思っている
会社から押し付けられた売上目標に対し、達成できないと思いながら作った営業計画。
はじめからできないと思っているから本気でやろうと思わない。

2. 安パイな営業計画を作っている
達成しないと詰められる、評価が下がると思いながら作った安パイな営業計画。
一生懸命にやらなくても達成できるから真剣に考えない。

3. 意味がないと思っている
案件や受注金額はマチマチだから正確な計画を作ることはできないし、計画どおりにいかないから意味がない。
意味がないと思っているからちゃんとやらない。

皆さんの会社ではいかがでしょうか?

計画どおりにいかないのが営業

正確な営業計画って作れるのだろうか?
営業計画って計画どおりにやれるのだろうか?

営業はさまざまな要因に影響される仕事。そして、その要因を正確に把握できないし、途中で変わってしまうことも多い仕事です。

お客さんのことでは
戦略や進捗(しんちょく)、業績、予算、決裁者の考えや現場の状況、競合の提案、他の課題との比較……

自分の会社のことでは
商品力や販売促進の状況、他の部門のサポート、上司やチームの協力、能力やマインド、仕事量や環境……

これだけさまざまなことに影響され、しかも正確に把握できないし、仮に把握したとしても変わってしまう……計画どおりにいくわけがない。
これが営業です。

営業計画の役割は検証・修正の指標

計画どおりにいかないし、やれないのに営業計画を作る意味ってあるのだろうか?

営業は計画どおりにいかいない仕事
計画どおりにいかない仕事で最も大切なことは何でしょう?

それは、計画どおりにいかないときに対策を考えることです。
つまり、PDCAのC(Check:検証)とA(Act:修正)です。

計画どおりにいかない営業はCheck(検証)とAct(修正)との繰り返しで目標を達成する仕事です。

計画どおりにいかないときに検証し対策を考え、そして実行し、そしてまた計画どおりにいかないときに検証し対策を考え……この繰り返しで成果を上げる仕事。

このCheck(検証)とAct(修正)には、現状や実績との比較対象となるPlan(営業計画)が必要です。
良いか、悪いか、どこが良くて、どこが悪いのかを判断するための比較対象としての営業計画。

営業計画の役割は、計画どおりにいかないときの検証・修正の指標なのです。
営業計画と現状や実績とを比較するから良いか、悪いか、どこが良くて、どこが悪いのかと原因を考えたり、その対策を考えたりするのです。

営業計画がなかったら……

  • 売上目標に対し、提案2件が少ないということは分かる。
  • 訪問10件が多いか少ないか、適正かどうか分からない。
  • そのため、提案を増やそうと原因を考えずに訪問を増やそうとする。
  • 原因が訪問時の説明や商談方法だったら、改善しないまま訪問が増える。
  • 説明や商談方法が原因なので訪問を増やしても提案は増えない。
  • すると翌月また同じ指導をしている。

Bさんに対するAさんの指導は何が良くなかったのか?

「毎月4件の提案を獲得するっていう営業計画は自分で作ったんじゃないのか?」
「ちゃんと計画どおりにやらないとダメだろう」

営業計画を指標とし原因や対策を考えさせる指導ではなく、計画どおりにいっていないことを否定的にとらえ、計画どおりにやるよう指導していました。

その結果、Aさんは原因を考えず計画どおりにやろうと単純に訪問件数を増やしたため、売上目標を達成できませんでした。

営業では、計画どおりにいかないことは悪いことではありません。
計画どおりにいかないときに原因と対策を考えないことが悪いことなのです。

計画を達成していないことを堂々と報告させましょう。
そして「計画どおりにいかないのはなぜなのか?」を考えさせましょう。

営業計画は、検証・修正することに価値があるのです。

営業計画の検証・修正を促進する方法は……

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は8月21日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

クロージング
あなたはWeb制作の営業です。
お客さんの要望を聞くと120万円はかかる。だけどお客さんは「予算が100万円しかない」。
……どうする?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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