第114回 顧客視点のビジネスではトップと現場が一緒に営業強化を考え推進する

営業は顧客接点を担う仕事……、営業が弱いと変化する顧客の情報が会社に入ってこない。変化する顧客の情報が会社に入ってこないと商品が顧客の変化についていけない。顧客視点のビジネスにとって重要な営業強化は、会社の体質や他の部署の協力など、さまざまなものが障壁になっています。今回は、さまざまな障壁をクリアしながら進める営業強化についてお話しします。

顧客視点のビジネスではトップと現場が一緒に営業強化を考え推進する

世の中(市場や顧客)の変化が早い今日、顧客視点のビジネスでは顧客接点を担う営業の役割は重要です。
しかし、なかなか営業強化が進まない。

ある経営会議にて

システム開発会社セントカンパニーの経営会議で……

社長
「なんで新規マーケットの案件が増えないんだ」
「中期計画でも言っているけど既存事業だけじゃだめなんだ。新しいマーケットに進出しないと、じり貧になる」
「営業はどうなっているんだ?」

営業役員
「昨年からソリューション営業部を作って提案を進めているんですが、今期の売上のための既存顧客対応で手いっぱいで……」

社長
「ソリューション営業部まで作ったのに案件が増えないと意味ないだろう」
「ちゃんと提案しているのか?」

営業役員
「ソリューション営業部のマネージャーAさんに部下に指導するように指示して進めているんですが、A自身も売上を上げるために営業していることが多くて」

社長
「Aさんは、自分で営業していると指導できないのか?」

営業役員
「ほとんど外出で部下の指導ができていないようです」

社長
「そうしたら外出先でも指導できるように、情報共有できる環境を整備しないと」
「予算をとって営業管理システムの導入を検討しなさい」

営業役員
「分かりました」
「営業企画部長、営業管理システムの導入を進めてくれますか?」

営業企画部長
「はい、営業企画部で営業管理システムを探してみます」

そして、営業企画部が営業の進捗(しんちょく)や商談議事録を共有できる営業管理システムを探して導入しました。

その後の経営会議にて

翌年の経営会議……

社長
「なんで新規マーケットの案件が増えないんだ」
「中期計画でも言っているけど既存事業だけじゃだめなんだ。新しいマーケットに進出しないと、じり貧になる」
「営業はどうなっているんだ?」

営業役員
「営業管理システムを導入してマネージャーのAさんを中心に進めているんですが……」
「Aさん、どうなっている?」

Aさん
「指導しているんですけど、うちの営業は引き合い対応中心にやってきたので提案力が弱いんです」
「それに、昨年は売上目標が厳しかったから既存顧客の営業に注力せざるを得なくて」

社長
「いつになったら新規マーケットの拡大が進むんだ」

営業役員
「Aさん、今年は新規マーケットの営業に注力できそうか?」

Aさん
「今期は売上目標に対して見込み案件が多いので大丈夫だと思います」

営業役員
「そうしたら、営業企画部と連携して提案力の教育を進めてください」

Aさん
「分かりました」

そして、翌々年の経営会議……

社長
「なんで新規マーケットの案件が増えないんだ」
……

経営会議の会話から見える問題点

なぜ、セントカンパニーは新規マーケットの案件が増えないのでしょうか?
経営会議の会話からセントカンパニーの問題点を考えてみてください。

営業という仕事はさまざまなことが絡み合って影響します。

提案活動は、
営業担当者のスキルだけでなく、部長や課長個々の考え方や意識、目標や他のミッションも絡み合って影響。

新規マーケットの営業は、
売上目標だけでなく、体質や個々のスキル、企画部や技術部の協力、組織の力関係も絡み合って影響。

営業の指導は、
情報共有だけでなく、環境や業務量、営業担当者の体質やモチベーションも絡み合って影響。

セントカンパニーは、営業管理システムを導入しマネージャーAさんの指導を促進、そして翌年には提案力の教育を行い新規マーケットへの営業を進めようとしました。
しかし、営業現場の実態は……。

営業現場の実態(1)

新規マーケットへの営業活動をスタート……

営業担当者
「新規マーケットのお客さんに訪問したけどニーズがないですよ」

マネージャーAさん
「何件、訪問したんだ?」

営業担当者
「3件訪問しましたけど全てニーズがなかったです」

マネージャーAさん
「あきらめるのは早いだろう。もっと訪問しないと」
「それに、今までの引き合い対応から営業を変えないといけないだろう」
「商品紹介ばかりじゃなくて、お客さんの課題を聞いてこないと」

営業担当者
「聞いているんですけど、お客さんに課題がないんですよ」

営業現場の実態(2)

営業会議で……

営業部長
「このままじゃ今期の目標が達成できないから、既存顧客の営業に注力しないと」

マネージャーAさん
「でも、うちの会社として新規マーケットの拡大を進めないといけないですよね」

営業部長
「そもそも、毎年新規マーケットの拡大って言っているけど売上が上がらないじゃないか」
「今期の売上を優先しないといけないだろう」

営業管理システムを導入して情報共有を促進しただけで提案が増えるでしょうか?
提案力の教育をしただけで新規マーケットの拡大は進むでしょうか?
経営会議で新規マーケットの拡大を進めろと言っても進められるでしょうか?

経験に依存してきた営業は一人一人の考え方が異なるケースが多い。営業現場が一生懸命に進めようとしても、本部長や部長の考え方が異なれば進められません。

体質とは会社の中の長い間の経験や環境によって作り上げられるもの。いきなり営業部の中だけで変えろといっても変えられません。

提案活動も……
営業担当者一人一人のアプローチ力、課題を聞き出す力、提案書を作成する力、プレゼンテーション力などさまざまなことが必要。そして、情報共有や上司の指導、体制や人数も影響します。さまざまなことを改善しなければなりません。

一朝一夕、簡単にできることではなく時間と労力のかかることです。そのため、今期の売上目標ばかりでなく、来年や再来年を踏まえて長期的に考えなければならないことです。

変革はトップと現場が一緒になって考えること

  • 属人的な営業から組織的な営業への変革
  • 商品案内営業や御用聞き営業から課題解決型営業への変革
  • 場当たり的な営業から戦略営業への変革
  • 既存事業中心の営業から新規マーケットを拡大する営業への変革

営業現場ではさまざまな変革が求められています。
しかし、多くの会社では、方針だけ示してあとは営業現場に任せて進めています。そして、営業現場では支障を感じながらも自分たちのできる範囲で考えて進めています。
その結果、さまざまな障壁により停滞してしまう……。

トップは、方針を示して任せるだけでなく、現場と一緒に障壁について考えなければなりません。
営業現場は、自分たちのできる範囲で考え進めるだけでなく、トップに障壁を理解させなければなりません。

営業強化の障壁について現場と一緒に考えるのもトップの仕事です。
営業現場の実態や障壁についてトップに理解させるのも営業現場の仕事です。

顧客が変化している今日では、商品や技術を顧客の変化に合わせていかなければなりません。顧客の変化に対応する顧客視点のビジネスにとって、顧客と直接かかわり、顧客の変化を肌身で感じることができる営業は重要です。

この顧客視点のビジネスを実現するために重要な営業強化は、トップが方針を示し営業現場に任せるだけでなく、トップと営業現場が一緒に考え進めましょう。

営業強化は、会社として顧客視点のビジネスを強化することになるのです。

トップと現場が一緒に考えて営業強化を進める方法は……

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次回は11月21日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

マネジメント
あなたは営業部長です。部下は他人の提案書をパクるばかり、自分で考えて作らない。
会社にいることが多いから時間はあるはずなのに。
……どうしたら自分で考えて作るんだろう?

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10月27日(木)「課題解決型営業セミナー」【Web】
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第3回 営業強化を考える会

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第3回営業強化を考える会テーマ「新規開拓営業について考える」

11月15日(火)

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11月18日(金)

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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