第113回 提案で勝つためには、はじめのページで勝てる土壌を作る

提案しても、競合に「価格で負けた」「機能で負けた」。価格や機能のせいにしている人が多いのですが、実は提案内容で負けていることが多い……。「競合に勝てる提案になっていない」。顧客とコンタクトするのも案件を獲得するのも大変です。苦労して獲得した提案案件は必ず受注を勝ち取りましょう。今回は、競合に勝てる提案についてお話しします。

提案で勝つためには、はじめのページで勝てる土壌を作る

顧客にコンタクトすることも、案件を獲得することも容易ではない。
営業で売り上げを上げるために、苦労して獲得した提案案件は勝ち取らないと……。しかし、競合他社に「価格で負けた」「機能で負けた」。

競合に勝つ提案とは?

苦労して獲得した提案案件で……

名刺管理システムの営業担当Aさんが人材紹介会社のセントジャパンから提案案件を獲得し、提案依頼書をもらってきました。
会社名は教えてもらえなかったものの、4社の競合があるようでした。

お客さんからもらった提案依頼書を見ると……。

名刺管理システムの検討理由

  • 営業社員が各自持っている名刺をデータ化して会社で管理したい
  • 誰が、どの顧客と会っているかを共有して営業を効率化したい
  • どの顧客にどれくらい訪問しているかを共有して上司の指導を促進したい
  • 会っている顧客の業界や役職を集計して営業戦略に生かしたい

名刺管理システムに対する要望

  • 営業社員のスマートフォンで名刺をスキャンして自動で登録できる
  • 顧客ごとの面談を管理でき、いつ、どのくらい面談しているかを上司が確認できる
  • 商談報告を名刺管理システムで行えるようメモや議事録を登録できる
  • 顧客の業界や役職も登録でき業界や役職別に集計できる
  • 現在保有している10,000枚以上の名刺登録をお願いしたい
  • 価格を重視する

営業担当Aさんは、上司Bさんに提案依頼書を見せながら相談していました。

営業担当Aさん
「要望はある程度クリアしているけど、うちは価格が高いから厳しいと思うんです……」

上司Bさん
「うちは、営業管理システムとの連携が強みだけど、その点はアピールできないの?」

Aさん
「営業管理システムのことは何も言っていませんでした」

上司Bさん
「でも、検討理由に上司の指導を促進したいって書いてあるじゃないか」
「セントジャパンは人材紹介会社だから、顧客ごとに人材ニーズとか提案内容を管理する必要があるだろう」
「アプローチした顧客の商談や提案などのプロセスも管理しないといけないだろうし」
「だから営業管理システムとの連携も必要になるんじゃないか?」

Aさん
「でも依頼書に書いてないから検討していないんじゃないですか?」

Bさん
「うちの強みは営業管理システムとの連携のしやすさだから提案に入れないと」

そして、Aさんが作成し提案した内容は……。

(1ページ)
「今日の営業では情報共有が進み、名刺情報を個人管理から組織管理に……」
と名刺管理における一般的な傾向とメリットをまとめていました。

(2ページ)
お客さんの提案依頼書に書いてあった(名刺管理システムに対する要望)を記載し、
「貴社のご要望に合った名刺管理システムをご提案させていただきます」

(3ページ)
コンセプトとして
「当社名刺管理システムの導入により三つの営業強化を実現」と書いて、

  • 名刺情報の共有による営業業務の効率化
  • 業界別・役職別の名刺情報の集計により営業戦略を強化
  • 顧客とのコンタクト状況の共有による組織営業を促進

(4ページ~8ページ)
提案依頼書(名刺管理システムに対する要望)に合わせて、

  • スマートフォンによる名刺のスキャン方法とスキャンの読み取り率をアピール
  • 業界別・役職別の登録・集計方法、面談履歴の登録・共有方法、メモ機能による商談議事録の共有方法
  • 現在保有している名刺の登録を代行することと導入までのスケジュール

(9ページ)
タイトルに「営業管理システムとの連携」と記載し、
名刺管理システムの仕組みと営業管理システムとの連携方法を記載し、連携のしやすさをアピール。
そして、営業管理システムとの連携の実績をまとめていました。

(10ページ)
導入時の価格と毎月の価格。
会社に一生懸命にお願いして値引きした価格を記載。

2週間後……。

セントジャパンの担当者からメールが届きました。
「ご提案に尽力いただき誠に申し訳ないのですが、価格が高く他社に決めさせていただきました」

提案内容に足りなかったものとは

Aさんは、なぜ競合他社に負けてしまったのでしょうか?
皆さんも、Aさんの提案で何が良くなかったのか考えてみてください。

Aさんが負けてしまった理由は、
要望に応えるだけ、強みをアピールするだけで、競合他社に勝つ提案になっていなかったから。

Aさんの提案は、お客さんの要望にちゃんと応えていました。
そして、強み(他社との差)である「営業管理システムとの連携」をアピールしていました。

しかし、競合他社に勝つために足りないものがあります。
それは、強みである「営業管理システムとの連携」が重要である、必要になる理由。

提案書のはじめのページで「営業管理システムとの連携」が重要である理由を理解させることができると、その後で強みである「営業管理システムとの連携」を重要視させることができます。

例えば、

  • 売上を上げるためには顧客の業界や職種別人材提案力の強化が必要
  • そのために、名刺情報だけでなく顧客別の営業プロセスや提案情報を共有する環境が必要

と重要性を意識させてから、

  • 名刺管理システムと営業管理システムとの連携

をアピール。

強みを顧客自身にとっても重要性の高いものと意識させる

提案で競合他社に勝ち、受注を獲得するためには、「強み=競合他社に勝てる部分」をいきなりアピールするのではなく、その前に「強み=競合他社に勝てる部分」に対するお客さんの重要性を意識させておくのです。

つまり、
「強み=競合他社に勝てる部分」を単なる競合他社との差、違いとして理解させるのではなく、
はじめに「強み=競合他社に勝てる部分」の重要性を意識させて、その後で「強み=競合他社に勝てる部分」そのものを重要と理解させるのです。

「お客さんの要望に応えるばかりの提案書」「単純に強みをアピールするだけの提案書」
さまざまな会社の提案書を見ているとこのような提案書が多く見受けられます。

皆さんの提案書はいかがでしょうか?

営業は、お客さんにコンタクトするのも大変、案件を獲得するのも大変……。
せっかく獲得した案件は必ず受注を勝ちとりましょう。

競合他社に負けて失注すると、売上を上げるためにまたコンタクトできるお客さんを探さなければなりません。そして、コンタクトして案件を獲得しなければなりません。
競合他社に勝つか、負けるかで営業効率も売上も大きく変わってしまいます。

競合他社に提案で勝つためには、

  • はじめに強みに対するお客さんの重要性を意識させ、競合他社に勝てる土壌を作る
  • 土壌を作った後で強みを理解させる

この流れが大切です。

強みをアピールする前に、お客さんにとっての重要性を意識させておきましょう。

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次回は10月18日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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