第126回 具体と抽象の往復運動による概念化能力

「抽象化と具体化の往復運動を通じた概念化能力」を高めることは、経営トップのメッセージと現場メンバーの実践・行動を促すファシリテーション能力として、大きな武器になるのではないでしょうか。

具体と抽象の往復運動による概念化能力

皆さん、こんにちは!

新型コロナウイルス感染症だけでなく、ロシア問題も余りにも長引くからか、実態は何も変わっておらず、問題解決したわけではないにも関わらず、メディアの取り上げ方も変わり、私たちの関心事の優先度も変わってしまっている気がします。

そして、円安、物価高をはじめとした事象の是非、その対処方法に終始した話が多く、そもそも、なぜそういう結果を生んだ要因は何なのか? その要因の本質的問題解決の視点が置き去りになっていることが多いように感じています。

この傾向は、企業活動や企業に属する一人一人の思考性においても顕著である気がしており、この個々の事象の本質を見極める視点・洞察力の有無は、課題解決能力の巧拙につながっているように思います。

ということで、今回は「具体と抽象の往復運動を通じた概念化能力」に関して考えてみたいと思います。

経営者と従業員の意思疎通実態

一般的に企業活動の中、現場で起こる課題やトラブルに直面するのは、当たり前ですが現場を預かっている従業員になります。

その結果、

  • 営業現場では「お客さんにこんなことを言われた」
  • 製造現場では「製品に関するこんな要望を聞いた」
  • 人事系の方は「○○部門のAさんが、こんな要望を上げてきた」

のような話が溢(あふ)れかえる結果になります。

そして、多くの中小企業で見られる「自律的に機能していない組織」の場合は、その話を各部門の管理職の方に相談・上申したところ、そのままさらに上の方に「事実」として報告され、ひどい場合には、そのまま経営者にまで上がってしまい、経営者が現場の問題に右往左往してモグラたたき的に追い回されるような事態を招く結果になってしまいます。

逆に経営者の方が全社に向けてメッセージを発信するときには、各部門の機能・役割が異なることを踏まえて話をするため、「安全が第一だ」的な抽象度が高い表現にならざるを得ません。これもある意味で当然のことだと思います。

そして、その結果、社長の話を聞いた各現場の方々からは、「“安全第一”らしいで」「そりゃ、そうだろう」というオウム返しをしているだけの状況に陥ります。この状況は、伝わっているが、理解できていませんし、行動につながる状態ではありません。

また「一般論過ぎてよく分からない。で、私たちはどうすればイイのよ?!」みたいな不平とも、愚痴ともいえるような感想が聞こえてくることもあります。

これは「相手の伝え方が悪い」という他律・他責思考のなせるわざであり、指示待ち状態の典型的な思考性であるといえます。

本来であれは、経営者が「安全第一だ!」と言えば、ミドル層が「どんな指標があれば安全第一が進められるか?」という管理レベルを考え、現場従業員は「どうすれば、その指標を確実にクリアできるだろう?」と行動レベルを考えてもらいたいのではないかと思います。

なぜこのような、お互いの意図がすれ違いのような状況になってしまうのでしょうか……。

抽象化と具体化

「具体と抽象」というテーマに関しては下記書籍で詳細な記述をしていますが、

「具体←→抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問
刊:PHPビジネス新書 著:細谷 功氏

今回の視点でいえば、「抽象化」とは、日常のいろいろな具体的な事象・出来事を並べてみて、それらの本質・共通項を抽出して、抽象度を上げた「概念として言語化」することを指します。

それができれば、次は「言語化された概念」に基づいて、他の個別の事象・出来事に展開することができ、このことを「具体化」と位置付けられます。

そうすると、前述で例示した現場で起こったことの「本質が概念化」され、経営者が大きな論点での「経営課題」として対応することができます。

逆に「経営者の抽象度の高い表現」を細分化・ブレイクダウンすることで現場の具体的な取り組みとして構想することができるようになるはずです。

この

  1. 複数の具体的な事象・出来事から本質・共通項の抽出
  2. 言語化を通じた概念化
  3. 上記二つを軸に個別事象への展開

というプロセスを、経営者側も従業員側も実践できるようになることが、組織を自律的にしていくことに直結するのかもしれません。

この思考性があって初めて、個々の事象に関するその都度の是非の判断や検討に追われるのではなく、概念化された本質に対する判断を通じて再現性が確保できるようになっていきます。

特にミドル層の方々にとって、この「抽象化と具体化の往復運動を通じた概念化能力」を高めることは、経営トップのメッセージと現場メンバーの実践・行動を促すファシリテーション能力として、大きな武器になるのではないでしょうか。

このように、経営者も従業員の側も含めて、一人一人が問題意識を持って物事を捉え、そこで発見した本質を論理だって相手に説明できる能力を培っていきたいと思いませんか……。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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