第127回 今こそ問われる「CSVへの取り組み」と覚悟

経営学者マイケル・ポーター教授の論文『Creating Shared Value』。コンセプトを確立した「CSV」ですが、なぜ、ここへ来て「CSV」が当然の帰着として経営に定着しつつあるのか? と同時に人材確保との関係性を含めて考えてみたいと思います。

今こそ問われる「CSVへの取り組み」と覚悟

皆さん、こんにちは!

コロナ第7波が、異常ともいえる猛暑と共に訪れた今年の夏ですが、昨年の第5波の時のような緊急事態宣言が発出されるわけでもなく、良くも悪くも徐々に、かつ確実に世の中が変化を進めているような気がします。

仕事柄、お客様企業のビジョン策定に関わる機会は少なからずあるわけですが、このレイヤーにおいても、数年前までとは明らかな違いがあるように思います。

2011年に経営学者マイケル・ポーター教授が、論文『Creating Shared Value』において、コンセプトを確立した「CSV」ですが、ようやく時代が追い付いてきたかのように感じます。

今回は、なぜ、ここへ来て「CSV」が当然の帰着として経営に定着しつつあるのか? と同時に人材確保との関係性を含めて考えてみたいと思います。

CSV「Creating Shared Value/共通価値の創造」とは何か?

CSVの最大の特長は、それまで、法令順守・コンプライアンス・労働安全衛生・環境負荷削減など、事業継続のための「守り」の側面としてのCSRの活動を、企業利益を追求する視点で捉え直した点にあるといえます。

「共通価値の創造」と訳されており、企業が事業を通じて社会的な課題を解決することで創出される「社会価値(環境、社会へのポジティブな影響)」と「経済価値(事業利益、成長)」とを両立させる経営戦略のフレームワークとして位置付けられています。

2011年に発表された「CSV」について、2010年代の日本企業における評価・認識は、キリンホールディングスや味の素グループなど、明確に事業戦略に位置付けていた企業もありましたが、多くの企業においては「社会価値と経済価値の両立」という一見困難な思考に向き合いきれない実態があったのは否めない事実ではないでしょうか。

ところが、SDGsを筆頭にした「社会的課題」に対する待ったなしの状況と共に、サステナビリティ(持続可能な企業活動)における不可避な状況認識の変化がCSVへの向き合い方も変わってきたように思います。

今もって「短期的な株主価値の向上」がまだスタンダードな考えである現実があると思います。ただ、2025年には生産労働人口の過半を占めるミレニアル世代・Z世代が企業活動の中心を占めていくようになると、それだけでは経営が立ち行かなくなることは火を見るよりも明らかなのではないでしょうか……。

ミレニアル世代・Z世代の主観の視点

言い古されている話ですが、以前は「モノ」が不足していたために「モノ」を提供することでビジネスが成り立っていました。ところが、現在は「モノ」は溢(あふ)れ、特にミレニアル世代・Z世代の人たちは「コト・意味」を求めているといわれています。

「グッズドミナントロジック」から「サービスドミナントロジック」への展開もその表れの一つといえるのではないでしょうか。

そして、さらに最近は、この延長線上に「プロセスエコノミー」や「カスタマーサクセス」の概念があり、その最上位に「CSV」、つまり「社会的意義」が位置付けられ、「パーパス経営」として、彼らにとっては必要不可欠な思考の枠組みになっているのではないでしょうか。

現在の多くの自動車メーカーが気付かずにいた「業界の在り方」に対して、テスラは「化石燃料に依存する文明をサステナブルなものに変える」という「新しい社会の在り方」をビジョンとして明示的にして多くの共感を生んでいるように思います。

War for Talent

「War for Talent」≒「逸材を巡っての企業間競争」という表現での「減少する労働生産人口」、その中での「優秀な人材確保」というこれからの企業としての競争優位を形成する重要な論点としても、今、また「パーパス」や「ビジョン」が不可避な位置付けとして挙げられており、多くの企業がその策定に取り組んでおられます。

そして、その中で「自社における“目的/パーパス/社会における存在意義”」が企業活動の求心力となると同時に、企業活動の実態としての「言行一致」がますます重要になってくるのではないかと思います。

高邁(こうまい)な目的を掲げれば掲げるほど、実態との違いがあれば、乖離(かいり)の大きさを感じてしまい、従業員の信頼を損なって離反してしまう方が増えるのは明白であり、かつSNSでの拡散を含め、レピュテーション(評判)を一瞬にして毀損(きそん)してしまうリスクと背中合わせでもあり、経営における「覚悟」が問われる時代になっているのではないでしょうか。

さて、本気でCSVに向き合っていきますか? それとも、「まだ自社には早い」ということで先送りにしておかれますか……。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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