第147回 「実践能力の高い人・組織」への道

社会が企業や経営において求めていることは「分かっている・理解していること」は意味を持っておらず、「実践できる・行動している」ことでしか成果をもたらしません。今回は、そうした「“実践能力の高い組織・人材”になるための思考性」を考えてみたいと思います。

「実践能力の高い人・組織」への道

こんにちは!

年度始めの4月という時期は、新入社員・進学などがあり、桜も咲き誇り、1年で一番華やいだにぎわいを感じる季節であると同時に、新しいことへのチャレンジや思いを新たにいろいろなことをスタートする時期でもあるのではないでしょうか。

「2024年問題」という表現で懸念されてきた建設業・ドライバー・医師などの残業規制もいよいよ本当にスタートし、まだ先の話として先送りしてきた会社では、極めて緊急度の高い切羽詰まった課題として取り組みを余儀なくされているかもしれません。

企業経営においては「Knowing-Doing Gap」、つまり「頭で分かり、理解し、やろうとしても、実際に行動することとの間には乗り越え難いギャップがある」という永遠のテーマに関する表現があります。

誰もが頭で「理解・分かっている」ことであっても、だからといって「実践できる・行動できる」とは限らないのも、残念ながら認めざるを得ない現実です。

当たり前の話ですが、社会が企業や経営において求めていることは「分かっている・理解していること」に大きな意味を持っておらず、「実践できる・行動している」ことでしか成果をもたらしません。

今回は、そうした「“実践能力の高い組織・人材”になるための思考性」を考えてみたいと思います。

「頭で分かった」と「身体で表現できる」との違い

ゴルフをされる方は多いかと思います。ゴルフを始めた頃には、レッスンプロに指導を受けたり、周りのうまい先輩に教えてもらったり、本を読んだりしたご経験があるのではないでしょうか。また、最近では動画サイトを見て学んでいる方がスタンダードになっているのかもしれません。

最初はグリップの握り方に始まり、テイクバックの取り方などを教えられ、「なるほど」と理解を深めることになるのだと思います。で、それが「理解したとおりに、すぐできる」とは限らないもので、「できるようになるために練習を繰り返す」というプロセスを踏むのが一般的なのではないでしょうか。

同様に、経営においても「理屈が分かる」と「そのロジックどおりに実践できる」との間には大きな溝があるわけで、練習をしないとできるようにはならないということはご理解いただけると思います。

あえて、より強く表現するのであれば、どこかのタイミングでは水の中に飛び込んで実際に泳いでみなければなりません。「分かる」と「できる」とは違うのです。「できる」ようになるには、実際にやってみるしかありません。

「弱い自分」を受け入れる

そして、大切なのはここからです。

「分かった」つもりになって「やってみた」結果、「うまくできない」という現実・事実を目の当たりにした時のそれぞれの姿勢・スタンスが問われます。

「うまくできなかった」のは、偶然できなかっただけだ・タイミングが悪かったんだ・できる環境が整っていなかったのだ・一緒にやったメンバーのせいだ……等々、自分の未熟や不足を受け入れずに何らかの「できなかった理由」で自分を正当化してしまいがちですが、それではいつまでたっても「できる」ようになりません。

たとえ、どんな外的影響や理由があったとしても、まず第1ステップとしては、「できなかった事実」を「弱い自分」として受け入れることが挙げられます。

「できなかった事実」を受け入れたうえで、その振り返りとして「自身の行動の振り返り」を通じて、自分の行動をどう変えるか? に向き合わないとなりません。

さらにいえば、大切なことは、どこかのタイミングで、実際に実体験として、現実社会の中でやってみなければならないということではないでしょうか……。

経験・チャレンジ体験において、最も大切なことは「リアル」であるということです。もちろん、VRで水泳を体験することも可能なわけですが、結局、最も学びになるのは海で泳いでみることに勝ることはありえません。なぜ実際に海で泳ぐことがリアルかというと、「溺れて死ぬかもしれない」という危険・恐怖があるからです。

危険がなければ実社会ではありません。トラブルを取り除いた形での体験は、社会の現実を全く再現していません。そんな状況の中で「できない自分」を受け入れ、向き合わないと次のステージには進めないのではないでしょうか。

安全圏・コンフォートゾーンを超える挑戦しか得られないこと

このような経験を経た結果、ステージを上げることができるようになって初めて「実践能力」は向上していきます。

また、こういう経験をした方は、多くの場合「自分はできるようになる」、つまり「自分は変われる」ということを信じられるようになっていき、次々と新しい領域・レベルに進んでいくようになる傾向があるように思います。

こうした「経験」を傷つかないように安全を確保した状態で育てることは、育てられている間は幸せかもしれませんが、実社会で起こるかもしれない危険への対処、危険な時に揺れ動く自分の心の対処を学ぶ機会を持てませんので、一度も海を体験させないまま、海に放り出すことと同じ状況とも言い換えられるのではないでしょうか。

安全圏・コンフォートゾーンでしか生きてこなかった人は自分の力で、その外に出ていけなくなってしまいます。

このように、ある意味では「失敗をも前提として“安全圏・コンフォートゾーン”を超える挑戦を促す」ことでしか、実践能力は培われないのかもしれません。

「Knowing-Doing Gap」を平たくいえば「言っていることとやっていることとが一致しているか?!」という問いに対する答えということになります。

私たちは、上司や周囲の「言っていることとやっていることとが一致していない人」を見た時にどのように感じるのでしょうか……。多くの場合が「あきれる」のではないかと思います。

だとするなら、私たち自身も「言っていることとやっていることとが一致していない」状態なのであれば、周りの人に「あきれられている」ことになってしまいかねません。
天に唾するようなことはしないようにしたいものですね……。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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