第128回 介護現場の人材不足について

日本は少子高齢化により介護施設に入所する人口は増えていますが、介護職員になりうる人口は減っていきます。介護人材不足が起こる要因をはじめ、外国人人材、IT活用など課題解決に向けた対策を考察していきます。

介護現場の人材不足について

母は現在84歳で、私の家の近くにあるサービス付き高齢者住宅(以後サ高住)に住んでいます。おかげさまで食欲旺盛で、毎日、さまざまな医療機関に元気に受診しています。これが高齢者が医療費を高騰させる原因だなと日々感じています。母の住んでいるサ高住では良くしてもらっていますが、それでも人の入れ替わりも少なくなく、職員の皆さんは常に忙しくされています。

介護人材不足について考える

先日、厚生労働省から「介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について」というレポートが公表されました。このレポートに記載されている内容を基に自分なりに介護人材不足について少し考察していきたいと思います。

皆さんご存じのとおり、日本は65歳以上の老齢人口が増加し、64歳以下の生産年齢人口、年少人口が減少しています。これは介護施設に入所する人口は増えているが、介護職員になりうる人口は減っていることを意味します。このような現象は、介護現場だけではなく、あらゆる職種に当てはまる労働者人口減少問題です。

令和元(2019)年度介護職員は、約211万人います。これが、令和5(2023)年には約233万人必要となり、令和7(2025)年には約243万人、令和22(2040)年には約280万人が必要とされています。一方で労働市場の動向をみると、介護関係の有効求人倍率は従来から高い水準で推移しており、慢性的な人員不足であることが分かります。
さらに介護関係の有効求人倍率は、介護関係以外の職種より高い倍率になっており、介護関係が「人気がない職種」であるともいえます。

そこで、厚生労働省は、介護の仕事を魅力ある仕事であるというアピールや人気がない理由の改善に取り組み、それでもすぐに人が集まるわけではないので、少ない職員でより効率よく仕事をすることを考えているということがレポートから読み取れます。

介護の現場への参入をしやすくするために、経験が少ない人でも仕事ができるように、専門性の高い人を頂点にその下に基礎的な知識を有する人材を配置し、その下に実際に現場で働く人のすそ野を広げようとしています。すそ野部分には、就業していない女性、若者、中高年齢者を介護現場の現場に就業してもらうことを前提としていましたが、レポートでは加えて他業種の人、障害者、元気な高齢者も介護現場への参入の視野に入れるそうです。大丈夫でしょうか。心配です。

なぜ介護の仕事が敬遠されるのか

次に「なぜ介護が仕事して敬遠されるのか」ですが、仕事内容に比べて給与が低いと感じる人が多いからです。
介護施設の仕事は多種多様であり、介護度によっては24時間対応が必要となります。他人の下のお世話もします(正直自分には無理そうです)。厚生労働省は介護保険改定などの機会を通じて、(実質)月額平均7.5万円の改善をしてきました。
しかし、介護施設側からすると職員の処遇改善をしろといわれても、施設の収入が比例して増えていないので、身を削って職員の処遇改善をしている施設もあります。サービスの低下や事故の懸念もされます。処遇改善は施設側の収入改善も同時に行うべきだと考えます。

柔軟な働き方としては、朝夕のみ、夜間のみ、季節限定、兼業や副業、選択的週休3日制などが具体的な事例で挙げられています。リーダー的な職員の指導の下にということが前提にはなるでしょうが、このような限定的な働き方で安心・安全な、利用者の満足のいく介護サービスが提供できるとは思えません。

介護の仕事は、「人間への対応」サービスです。コンビニで物を売るような仕事とは少々違うと思います。医療に従事している人にも多々感じることですが、医療や介護に従事しようと考える人は、そもそもその素養を持っている人が多い気がします。ここでいう素養とは、人への奉仕や何かしてあげることに喜びを感じるということです。金銭的なことももちろん大事ですが、「人間への対応」「人のお世話」などに喜びを感じなければ、長続きしません。お金だけのために好きでもない仕事をしていても、良い仕事ができるとは思えないのと同様です。
このような感性や素養を育むためには、道徳などの教育やボランティアの経験などが役に立つのではないでしょうか。

介護人材不足にどう対応していくべきか

介護人材不足のために日本の働き手人口が減少しているならば、外国人にお願いしようという考え方があります。

実際、EPA(経済連携協定)を通じて、インドネシア、フィリピン、ベトナムから日本にやってくる方々もいらっしゃいます。2022年3月時点でEPA関連の在留者数は3,568人で、このうち日本の介護関係の資格を取得した人は、たった675人です。EPAについては、国内の産業を保護する意味も含めて、年間受け入れ人数に制限をかけています。国の本気度を疑いたくなってしまいます。

介護人材が不足している国は、日本だけではありません。
欧州、特にドイツは積極的に外国人の介護人材の確保政策を実施しています。ドイツも日本も同様ですが、まずは言葉の問題があります。ドイツは東南アジアなどの国内にドイツ語を学べる施設を併設した介護学校を現地に設立しています。
ドイツも日本同様にドイツの国内の介護施設で働くために必要な介護関係の資格があります。この資格取得のための勉強も東南アジア国内に設立された学校で授業やサポートをしてくれます。ドイツの本気度を感じるのは、私だけでしょうか。

介護サービスを効率化するために、テクノロジーの活用、記録や報告書の改善、情報共有の工夫などが考えられており、現在、さまざまな試験的な取り組みが全国で実施されています。
具体的には介護ロボットの実証、ノーリフティングケアの実証、見守りセンサーの導入、介護補助職の普及などです。特にICTの活用は介護現場の負担軽減にもつながる可能性が高く、大いに普及してもらいたいところです。注意点としては施設の導入コストが負担にならないように知恵を出してもらいたいです。

人間の最期の住み処(か)となることが多い介護施設です。自宅で最期までと希望する人もいると思いますが、「家族のことを考えると」とか「自分の身体のことを考えると人の世話に頼らなければならない」など、さまざまな理由から介護施設に入所する人は今後しばらくは増え続けるでしょう。最期は穏やかに過ごして逝きたいですね。介護サービスは、人対人の究極の対人サービスであり、あまり算数的に考えてほしくないと思います。

皆さんはどう思いますか?

次回は9月14日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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