第127回 患者待ち時間対策

外来患者の不満点が高いのが診察までの長い待ち時間です。患者が待ち時間にしびれを切らし、キャンセルしてしまうということは「機会損失」につながります。待ち時間問題の解決方法を考察します。

患者待ち時間対策

先日家人が、皮膚科の診療所に受診しました。診察の申し込みを済ませ受付の方に待ち時間を聞くと、3時間くらいは待つとのこと。待合室には、それほど患者はいませんでしたが、皆いったん診療所を離れ、おおよその自分の診察時間に再び診療所に来るため待合室に人が少ないそうです。
家人もいったん診療所を出て、買い物などを済ませ再び診療所に行くと、「もう4時間も待っているのよ」という大きな声が聞こえ、「診察は結構です!」とご婦人が憤慨し、診療所を出て行ってしまいました。

このような光景は珍しくない光景ですが、何が問題なのでしょうか。厚生労働省の調査でも外来患者の不満点ナンバーワンは長い待ち時間です。待ち時間対策は、すなわち患者満足度の向上につながることになります。

患者が待ち時間にしびれを切らし、診察をキャンセルして出て行ってしまうということは、「機会損失」であり、得られる予定の収入が得られないことになります。また診察をキャンセルしたこの患者は、この診療所のことをどのように思ったでしょうか。悪い感情を持った患者は、家族や友人に「あの診療所は……」と複数人に良くない印象の話をしているはずです。特に診療所は、口コミの影響も大きいので待ち時間対策は必要です。しかし、何が問題で問題の解決方法がよく分からないといった声も聞かれます。

二つの待ち時間対策

待ち時間対策は大きく二つに分けて考えます。
一つは待ち時間自体を短縮する方法。そして、もう一つは待ち時間を少しでも快適に過ごしてもらう対策です。

1.待ち時間を短縮する

待ち時間を短縮する方法は、まず待ち時間が長くなっている原因を推測、特定することから始めます。
診察の受付から会計までのそれぞれの場面で要する時間測定を行い、時間がかかってしまう要因や原因を探します。原因が分かればその対応策を考え実行するだけです。

切り札は「予約システム」

待ち時間短縮の切り札は、「予約システム」です。予約システムであれば自分の診察予約時間が把握でき、その予約時間に間に合うように患者は来院しますので、診療所での待ち時間は大きく短縮されます。さらに予約システムに連動して初診でも予約が取れるようにしておけば、待ち時間対策と同時に集患能力も向上し患者が増えることにもつながります。特に診療所の場合、スマホで検索して受診先を探す人が多くなってきましたので、スマホから予約ができる仕組みは効果があります。
ただ予算などのこともあり、すぐにシステムを導入できない場合は、パソコンや手書きのノートなどを使って事務員が予約を受け付けることを検討します。

人は、何時間待つのか分からないと、不安になり時間も長く感じてしまいます。最初にだいたいの時間が分かったり、あと何人などと分かったりすると、時間もそれほど長くは感じないものです。番号札で受付をしている診療所も多いと思いますが、現在の診察の番号を分かるようにしておくだけで、あと何人と分かることになりますので、すぐに実行できる対策の一つです。そして各業務に要する平均時間や、時間がかかってしまう要因などが分かればその要因を排除する対応策を考えます。

電子カルテの導入

前述の診療所ではまだ紙カルテの運用でした。医師は非常に丁寧に診察をしてくださり、患者の話もきちんと患者の目を見てよく話を聞いてくれます。その代わり診察が終わると、紙カルテの記載をしますので次の患者をすぐに診察室に呼び込めない状態のようです。このような場合、電子カルテの導入と医師事務作業補助者の代行入力とで今の医師の診療スタイルを変更することなく、大幅に時間短縮が可能です。
ここでも「お金の問題が」と聞こえてきそうですが、かかる費用以上に収入が増えて(費用対効果が高い)職員の仕事が楽になることを考えるようにしましょう。

2.待ち時間を快適にする

次に待ち時間を快適に過ごす工夫ですが、古典的な方法は、雑誌やテレビなどを待合室に配置して本やテレビを見て待ってもらうやり方です。

ICTツールの活用

今は、本などに代わってiPadを貸し出している診療所もあります。ある糖尿病専門の診療所で貸し出しているiPadでは、糖尿病に関しての情報が閲覧できるようになっています。広島大学病院では、同じようにiPadのようなタブレット端末を貸し出し、患者の次の行き先(採血室や診察室など)の表示がされるようになっています。ICTのツールを上手に取り入れている例ですね。

敷地の活用

病院など広い敷地では、(フードコートなどにある)呼び出し機器による(時間の)お知らせをするので、院内のカフェテリアや花壇のある庭などで過ごすという手法を取り入れている病院もあります。同じように診察時間が近づいたらスマホで知らせることもできます。

医療機関の特徴に合わせて待ち時間の工夫を職員みんなで話し合ってみたらどうでしょうか。

ちなみに家人の皮膚症状も的確な診断と治療、処方によってみるみる良くなりました。

もう少しの改善でみんなハッピーになれると思うのですが、皆さんはどう思いますか?

次回は8月10日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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