アパレルにおけるファブレス経営とは? メリットとデメリットを解説

日本ブランドのアパレル商品であるにもかかわらず、原産国表示がMade in Chinaと表示されているものを多く見かけます。こういった商品は、日本のメーカーが中国の工場に委託して縫製し、自社ブランドとして販売しているものです。
このように、メーカーでありながら、製造は外部に委託する形態のビジネスモデルを「ファブレス経営」と呼びます。ファブレスとは具体的にどのような意味を持つのか、メリットやデメリットについて詳しく解説します。

ファブレスの意味

ファブレスとは「工場を持たない」という意味で、英語で「fabless」と書きます。これは、「工場」を意味するFabrication facilityと「持たない」を意味するlessに由来する造語です。

「ファブレスメーカー」という言葉もよく耳にしますが、これは自社工場を持たないメーカーを意味します。ファブレスメーカーでは、研究開発やマーケティングに機能を集中し、製造は他社の工場に委託、完成した商品を自社ブランドとして販売します。このようなメーカーのビジネスモデルが「ファブレス経営」です。
流行の移り変わりが早く、商品サイクルが短いアパレル業はファブレス経営に適しています。常に新しい商品を提供し続けるにあたり、メーカーがファブレス経営を行うことによって、商品の製造ではなく開発のほうに注力できるからです。こちらについてはファブレス経営によるメリットのところでも詳しく説明します。

ファブレス経営のメリット

メーカーは当然「工場を持つ」ものと思われがちですが、メーカーであるのにあえて「工場を持たない」ことにはどんなメリットがあるのでしょうか。

新規参入のハードルが低い

メーカーが自社で工場を持とうとした場合、工場を立ち上げるためにすべきことはたくさんあります。工場を建てる、機械の設置、製造ノウハウの確立、製造要員の採用・教育、原材料の調達先確保、生産管理システムの導入などは工場を立ち上げるためには必須です。これらを全て準備するとなりますと、手間や費用などのリソースは膨大なものになるでしょう。工場が稼働するまでに年単位の時間がかかってしまうことも少なくありません。また、立ち上げに手間取って市場参入のタイミングを逸してしまいますと、事業が軌道に乗らず、余儀なく撤退しなければならない危険性も伴います。

その点、外部に製造を委託すれば、このような時間も費用もかかりません。狙ったタイミングで市場に参入できますから、新規事業に成功する可能性も高くなるでしょう。そのため、新規でアパレル業を始める方でも、ファブレス経営なら比較的ハードルを低くして始めることができるといえます。

生産に関するコスト削減が可能

アパレル業の生産に関するコストについて、自社工場を持つなら建物や設備などの償却費や人件費、材料費、工場を維持するための経費が必要ですが、ファブレスメーカーであれば必要なのは外注費のみです。
EMSやファウンドリーのような装置産業や資本集約産業では、複数の企業からの注文を受けて製造するのでスケールメリットが大きく働き、製品一つ当たりのコストが小さくなります。また、縫製工場のような労働集約型産業では、人件費の安い海外の工場の方がコストは小さく済みます。条件は製造委託先との交渉次第ではありますが、自社工場を持つのに比べて外部に製造委託する方がコストを削減しやすいといえるでしょう。

ファブレス経営がコスト削減につながる理由はほかにもあります。

自社工場の場合、今後の事業展開を予想して設備や要員を確保する必要があります。事業展開が予想通りに推移すれば問題ありませんが、事業展開には不確定要素がつきものであり、設備や要員が足りなくなったり、または余ったりすることも予想されるでしょう。そのため、工場の生産能力が追い付かずに販売機会を逃す、逆に計画通りには売れずに設備や要員が遊休してコストアップになる、という場合もあるかもしれません。製造委託なら販売実績に応じて外注量をコントロールできるため、このような心配がないのです。

商品開発やマーケティングに投資ができる

次に、企業の利益を生む付加価値の面から考えてみましょう。製造委託で賄える程度の生産技術なら、自社工場で生産しても内製で生まれる付加価値は大して大きくはないといえます。
自社工場を持てば、先述の通り多くのリソースが必要となります。外部への製造委託ならばこのようなリソースが不要になりますので、そのリソースを最も付加価値の高い分野、例えば「商品開発」や「マーケティング」、「これから注力していきたい分野」に割り振ることができます。

ニーズの変化に素早く対応できる

自社工場を持つと設備費や人件費などの固定費がかります。自社工場を持たなければ、生産体制を維持するための資金を、外注費(変動費の一つ)に割り振ることができるのです。
そのため、外部への製造委託なら発注量を調節することで、販売実態に即してフレキシブルに対応することができます。流行や季節で市場ニーズの変化が激しいアパレル業界にとって、ファブレス経営は最も適したビジネスモデルといえるでしょう。

ファブレス経営のデメリット

ファブレス経営にはメリットもある一方、デメリットもあります。具体的にみていきましょう。

品質管理が難しい

ファブレス経営で注意しなければならない点は、品質管理の問題です。お客様に販売した製品に品質上の問題が発生した場合、お客様に対し直接責任を負うのは委託先の工場ではなく、ファブレス経営を行っているメーカーになるからです。メーカーにも、製品の最終チェックをする品質管理者が必要でしょう。
ファブレスメーカーの品質管理者は製造委託先の工場に対し、監督・指導する責務も負います。そのためには製造委託先の製造プロセスについて詳しく理解することが求められます。そのような製造委託先が複数あれば、品質管理はさらに困難になるでしょう。

製造スキルやナレッジの習得が難しい

ファブレスメーカーは、製造工程を他社に委託するため自社に製造スキルやナレッジが蓄積されません。これにより発生するデメリットとしては、顧客からの意見や現場での改善点を商品に反映させにくいことが挙げられます。
製造ナレッジがあれば、設計を変更することで製品を改善することができます。しかし製造ナレッジがなければどこを見直せば商品が改善されるのかを判断するのが困難になり、製品に顧客の意見を反映できないままコストアップを招いてしまう可能性があります。

情報漏えいのリスクがある

情報漏えいは、製造を他社に委託するために情報を提供することで伴うリスクです。情報として、アパレル業界では縫製仕様書や加工指示書、検品書などが該当するでしょう。
これらの情報が漏えいした場合、簡単にコピー商品が作られ、市場に出回ってしまうかもしれません。もし、漏えいした情報を元に作られた商品の方が自社よりも早く販売された場合、大幅な損失につながってしまうでしょう。自社商品の方がコピー商品と見られてしまう恐れもあります。製造会社と契約する場合は、このような事態を防止するために、セキュリティ対策や守秘義務契約が求められます。情報漏えい対策をしっかりと行いましょう。

ファブレス経営の導入に向けて

ファブレスメーカーは、「製造を外部に委託し、研究開発やマーケティングに機能を集中する」ビジネスモデルで運営するメーカーです。
「新規参入のハードルが低い」「コスト削減が可能」「付加価値の高いところに投資を集中できる」「ニーズに素早く対応できる」などのメリットがあり、電子機器/ITや半導体、アパレル業界の企業に多いです。
ただし、この手法にはデメリットも存在しています。導入のリスクとメリットしっかりと確認したうえで、自社のビジネスモデルを選択しましょう。

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