アパレル企業の事例から学ぶファブレス化への取り組み

「ファブレス経営」を取り入れようかと考えているものの、その実情についてよくご存じでない企業経営者の方は多いのではないでしょうか。本記事では、そのような方々に向けてファブレス経営の概要や、実際にファブレス経営を取り入れ成功したアパレル業界の例を幾つか取り上げてご紹介します。またメリットやデメリット、成功させるために必要なポイントなども併せて解説しますので、自社のファブレス化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもファブレス経営とは何か?

「ファブレス」には「工場を持たない」という意味が含まれています。「工場」の意味を持つ「fab」あるいは「fabrication facility」と、「持たない」の意味を持つ「less」を組み合わせた造語です。また、工場を自社で持たずに、外部企業にその機能を委託する方法を「ファブレス経営」といいます。この経営スタイルは、コストの削減など、あらゆる企業の課題を解決するために注目されています。

この方法が誕生したのは、1980年代のアメリカです。設備投資のコストに課題を抱えていた半導体メーカーで、設計と製造の分業化が行われ、効率的な経営資本の投資が可能になったことを機に、ほかの業界でも導入されるようになりました。

この方法を取り入れることで、資本力がないベンチャー企業などでも高いブランド力を発揮できる点が特徴です。そのほかさまざまなメリットがありますが、詳しくは後述します。

ファブレス企業の多い業種

ファブレス経営はアパレルメーカーのほか、飲料やインテリア、半導体メーカーなどで多く見られます。どのような業種でも適用できるわけではなく、製品の移り変わりのペースが速い業界や、商品の企画や開発と生産を分離しやすい業界に向いています。

同じ製品を長く作り続ける企業であれば、自社で工場を管理して生産するほうが、費用面や管理面での利点が大きいため、ファブレス経営の必要性は低くなるでしょう。一方、次々と新しい商品を開発することで消費者の心を掴んでいる企業は、このように企画・開発と生産の体制を分ければ、より迅速に市場の変化に対応できるのです。

ファブレスで成功したアパレル業界の事例

ファブレス経営を取り入れて成功したアパレル企業は少なくありません。ここでは、そのうち三つの事例をご紹介します。それぞれの企業では、具体的にどのように活用されているのか、ぜひ参考にしてみてください。

A社

衣料品ブランドの大手として知られるA社は、製品の製造工場を中国企業に委託し成功させています。商品の企画やデザイン考案だけでなく、素材調達や商品販売まで幅広く手掛けている点が、同社の特徴です。品質を維持するために、委託先に品質管理チームを派遣するなど、品質向上にも積極的な姿勢をとっています。

A社は工場を持っていないにもかかわらず、商品の企画や製造、販売に至るまで、委託先も含めて管理を徹底することで、世界に進出する企業にまで成長したといえます。

B社

世界的スポーツ用品メーカーであるB社は、「モノをつくらないモノづくりの会社」ともいわれており、創業当時からファブレス経営を実施している点が特徴です。

本社では企画や宣伝、広報業務などを行い、商品の生産はベトナムやインドネシアなど、アジアにある企業に委託しています。つまり、本社はマーケティングに注力することで、世界的人気を獲得しているのです。この手法を取り入れることで、生産コストを下げ、高収益率を保持できているといえるでしょう。

C社

C社は、某商事の機能子会社3社が統合し発足した企業です。2020年から新たに、量産を前提とする作り方ではなく、一人一人に合わせることをコンセプトとした短納期無在庫販売型のブランドを立ち上げ、小売業に挑戦しています。

消費者は来店してからまず、好みのアイテムを選んだり、採寸をしたりします。その後、その場で決済せず、Webサイトで商品を確認し、納得したうえで注文を行い、約2週間で指定の場所に届くシステムです。企業にとっては無駄な商品を作らずに済み、顧客にとっても自分好みの洋服を手に入れられるメリットがあります。

ファブレス経営のメリット

ファブレス経営の主なメリットとしては、

  • 生産コストの軽減
  • マーケティングや商品開発への注力
  • 市場変化へのスピーディーな対応

などが挙げられます。

生産コストについては、自社で工場を保有する場合、建設費用をはじめ、人件費や施設・機械の維持費などがかかります。しかし、生産を外部企業に委託すれば、そのような費用を減らすことができ、削減した分を商品の企画や開発などの費用に充てられるでしょう。それにより、マーケティングや商品開発に注力する余裕が生まれます。市場競争力を高めたり、新しい商品を開発したりすることで、他社との差別化を図ることにもつながるでしょう。

また、新規参入の場合もハードルが低くなるため、万が一うまくいかなかった場合でも撤退しやすく、資本が少なくても製品を商品化しやすい利点があります。さらに、製品の特徴や納期などに応じて委託先を変えられるため、市場のニーズが変わった際も素早く対応でき、ビジネスチャンスの損失を防ぐ効果が期待できるのです。そのため、流行が変わりやすいアパレル業界をはじめ、半導体や電子部品を扱う業界などに向いています。

ファブレス経営のデメリット

ファブレス経営の主なデメリットとしては、

  • 情報漏えいのリスク
  • 品質管理の難しさ
  • ノウハウの蓄積

などが挙げられます。

外部企業に委託する際は、製品アイデアや技術知識を提供する必要があるため、自社オリジナルの製造知識や商品の強みといった機密情報が漏れる可能性は否めません。このようなリスクを防ぐためには、知的財産権の保護を策定したり、企画開発を行わない企業を委託先として選定したりすることが大切です。

また、委託先によって品質にばらつきが出る可能性もあります。これを防ぐためには、自社から管理者を派遣するなど、品質管理を行うのが効果的です。ほかにも、外部に依頼した場合、自社で製造知識を蓄積することが難しくなります。自社でそのような知識を蓄積したい場合や、生産者を育成したい場合、ファブレス化は適していないでしょう。

外部に委託することで、外注費などの費用がかかる点にも注意し、生産規模が大きくなればなるほど、かかる費用が増えるため、金額をどの程度抑えられるのか確認が必要です。

ファブレス経営を成功に導くポイントは?

さまざまなメリット・デメリットのあるファブレス経営ですが、この経営方法を成功させるためには、幾つかのポイントを押さえておく必要があります。

自社ブランド力を高める

まずは、企画・開発に注力できるという強みを生かし、競争力を高めていくことが大切です。自社のブランド力を高めることで、新商品の開発や売り上げの向上が期待できます。また、変化が激しい市場においても他社に負けない商品を作り続けることで、独自市場の構築も可能です。

適切な生産工場選び

ファブレス経営を成功させるため、特に注意したいのが品質管理です。委託先によって製品品質が異なりますので、大量生産を予定している場合は、事前に不良品の発生率を確認したり、自社でシステム導入や管理チームの派遣などを検討したりするとよいでしょう。ほかにも、委託費用なども契約前に把握しておくことは必要です。

また、知識の流出を防ぐためにも、生産に特化した企業を選ぶのが最適です。自社の生産技術などを提供する必要があるため、外部に情報が流出する恐れがあります。模倣された商品が出回らないようにするためにも、企業選定は慎重に検討を行ってください。

ファブレス経営は、適した企業が取り入れることで高いブランド力を発揮したり、生産コストを下げたりするなど、さまざまな効果が期待できます。そのためにも、上記のポイントを踏まえたうえで導入を検討することが大切です。

事例を踏まえて効果的なファブレス経営を目指そう

ファブレス経営は情報漏えいや品質管理の問題など、幾つかデメリットはあるものの、多くのメリットが期待できる方法です。特に、生産コストを削減させたい企業や、市場のニーズに合わせた商品を開発し続けたい企業にとっては、まさにうってつけといえます。
事例でもご紹介したように、この方法はアパレルメーカーをはじめ、さまざまな企業が取り入れることに成功し世界進出を果たすなど、高い効果を発揮しています。導入を検討している企業は、本記事でご紹介したメリットやデメリット、成功に導くためのポイントなどをぜひ参考にしてみてください。

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