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第23回 もし子供が「マネジメント」を学ぶとすれば
「子供や学生が『マネジメント』を学ぶとすれば、どのように伝えればよいか?」
最近、よく聞かれることです。実は自分も、以前からこの問いについてよく考えています。マネジメントは、「人とチームを活かして(個人では達成できない大きな)成果を生みだすこと」です。であるとすれば、それは当然、社会人だけでなく、子供や学生の世界でも必要です。教養としてこの「マネジメント」を知っておくことで、学校生活もクラブ活動も、人間関係も、より楽しく、わくわくするものになるのではないでしょうか。
そもそも「マネジメント」には、適切な訳語がありません。だから本当の意味を体系的に理解し学ぶことが難しいと思われているのかもしれません。よくマネジメントの訳語として出てくる「管理」は本来「Control」の訳語であり、マネジメントの中の一要素に過ぎません。マネジメントは「管理」以上に、より広い可能性を秘めています。人間組織の創造活動を促進する考え方です。だからこそ、子供や学生時代から、その考え方に触れておくことは大切だと思うのです。
早速考えてみましょう。例えば中学生や高校生が、「マネジメント」の基本を学ぶとすればどうなるでしょうか。私がカリキュラムを組むとすれば、下記のようなテーマを選ぶと思います。生徒会でも、クラス委員でも、クラブ活動であっても、何か「チーム」「組織」をまとめて良い結果につなげていきたいのであれば、じっくり考えて欲しい5項目、計10個の問いになります。
中高生が「マネジメント」を学び実践するための10の問い
【1.チームマネジメントの無限の可能性と目的に気付く】
[1]人がチームや組織を創り、「協働」する本当の目的とは何だろう?
[2]良いチーム、良い組織とは一体どのようなものだろう?
【2.自分自身の「軸」を知る】
[3]自分が誇れる「強み」って一体何だろう?(どんなことでも)
[4]自分が特に大切にしている「価値観」って一体何だろう?
(例:思いやり、創造性、斬新さ、探求・・等)
【3.他の誰かを幸福にする為に考える】
[5]そのチーム活動は誰を幸福にするためのものだろうか?
[6]その誰か(客体)はどんなことに最も喜び、価値を感じてくれると思うか?
(注:学生の場合、「客体」は自分自身である場合もあります)
【4.人の力をチームで最大限活かす】
[7]チームの仲間一人一人の「強み」は一体何だろう?
[8]その長所・強みをどうすれば、チームの目的・目標に活かせると思うか?
【5.成果に意識を向ける】
[9]このチームで生みだしたい具体的な「成果」はどんなことだろう?
[10]チームが成果に向かう為の「計画」はどのようなものになるだろう?
前述のとおり、子供や学生も、日々無意識のうちに「マネジメントする」ことを求められています。学内外のイベントで活動する時、ボランティア活動をする際、クラブ活動で大きな目標に向かっている時、文化祭や生徒会などの組織活動を進めて行く時、など。その中で、人間の持つ個性と力が融合されて、「このメンバーでこんなことが達成できるなんて!」と思うような成果が生まれたときの感動は、学生時代の仲間とのかけがえのない思い出として一生の宝になるでしょう。
必ずしもリーダー的な立場でなくても、マネジメントを知っている人のまわりのチーム活動は円滑に生産的に動き出すものです。「知識」としてマネジメントを学ぶというよりも「教養」「考え方」として、いわば感覚として身につけてほしいのです。そうすれば学生時代だけではなく、将来仕事をする上でもものすごい財産になるはずです。
変化の激しい現代。知識を無限に学んでいっても、「成功」は保証されません。むしろ、専門知識を持つ人間が集まり、その中で誰かが「マネジメント」力を発揮させることで、そういうチームや組織が増えて行くことで、大きな価値が生まれます。
上記の問いは、企業における「マネジメント」でもそのまま活用して自問していただけます。これくらいまで基本に立ち返って考えたり、話し合ったりする事で、思わぬチームのイノベーションが生まれるものです。日々の多忙な業務管理から少し目線を上げ、思考を開放し根本を考えることで、思わぬ発想やアイディアが生まれたり、仲間やメンバーの力をもっと発揮できるヒントが見つかったりするものだと思います。
マネジメントとは一般教養。子供でも、大人でも、だれでも身につけて生産的で創造的な人生を歩む為に活用できるものです。是非、皆さんもお子様と一緒に、或はご自身で、上記の問いにつきじっくり考えてみてください。
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次回は11月7日(木)の更新予定です。
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