第138回 自らに問う力

現代社会は、地球環境の視点からも、あるいはテクノロジーの観点からも、私たち人間に大きな問いを投げかけているように思います。今回は、ビジネスパーソンとしても、ますます求められるであろう「自らに問う力」に関して考えます。

自らに問う力

こんにちは!

最近は毎年のように、「過去、類を見ないほどの災害級の暑い夏」という表現を聞いているような気がします。今年も大雨の災害を含め、早くも尋常ではない暑さに見舞われており、地球がジワジワと、でも確実に、私たちに危機的状況の迫っていることを警告しているように思います。しかし、私たちは本当にそのことを理解しているのでしょうか……。

生成AIが話題にならない日がないほどに、この半年余りで世界を大きく揺り動かしています。数年後にはどんな世界を紡いでいっているのか見当もつきませんが、少なくとも私たち人間がどうあれば良いのかを今のうちから考えておかないと、テクノロジーの進化スピードに追い付いていけず、テクノロジーに使われる状態になりかねない気がします。

そんなこんなで現代社会は、地球環境の視点からも、あるいはテクノロジーの観点からも、私たち人間に大きな問いを投げかけているように思います。私たち人間の方は、本当の意味でその「問い」に耳を傾けることができているのでしょうか……。

ということで今回は、ビジネスパーソンとしても、ますます求められるであろう「自らに問う力」に関して考えてみたいと思います。

テクノ新世

日本経済新聞で6月末から「テクノ新世」という特集が掲載されていました。

テクノ新世(日本経済新聞Webサイト)

非常に興味深い記事が多く、個人的には特に『これからの「正義」の話をしよう』の著者であるマイケル・サンデル氏の下記インタビュー記事に興味を持ちました。

「テクノロジーは大谷翔平に勝てるか」 サンデル教授問う(日本経済新聞Webサイト)

もちろん、このテクノロジーの進化は留まるはずもなく、指数関数的に進化を遂げていくことは火を見るよりも明らかです。

ただ、サンデル教授の指摘「だが実際は、人間であることの意味は生身の現実の人間の存在にある。仮想の存在ではなく、今ここにいる人間と一緒にいて、相手を思いやり、コミュニケーションをとるということだ」は、本当に重要なテーマであると思います。

私たちは「便利で楽になる」ということに対して、ある種、疑いもなく飛びついてしまう傾向があることは否めません。しかしながら、必ず物事には「裏表」があり、「便利で楽になる」ことを得ることによって「失う」ものがあることを、自覚的である必要があるように思います。

人は困難や障害に遭遇すると、その打開方法を知ろうと誰かに「解」を求めて相談したり、最近の人であればインターネットで検索したり、これからは生成AIに問いたりすることも増えていくのだと思います。

つまり、ドンドン便利になっていくわけであり、生身の人間との接点すら持たずに、素早く「解」に行き着くことができるようになっていきます。
そのことをサンデル教授は「重要なことに注意を向ける能力を失い」と危機感を指摘していて、「何が重要で、何に価値があるのかを自分で考えて注意を向けることは、個人が自分の意思で選択する能力と深く関係する」としているように思います。

「自らに問う力」

そしてこうした流れの中で、個人的には、「自らに問う力」の重要性が今まで以上に重要性を増していくと考えています。加速度的な進化スピードで発展している生成AIに対抗して「答えを出すスピード」で勝てるはずもなく、これからの人間が問われるのは「問いの深さ」ではないかと思っています。

最近は1on1ミーティングなども一般化し、「コーチング」に関する知見も広がっています。この事実は非常に良い傾向だとしても、やはり誰かリーダーなり、サポーターなりという方の存在が必要であり、その方のスキルやご自身との関係性によって、その効果は左右されるのではないかと思います。

「コーチング」自体は必要だと理解していますが、その前に必要になってくるのが「自らに問う」という意識ではないでしょうか……。

以前にも「ビジネスOS」という概念に関して触れさせていただきました。これはスキルではなくマインドであり、考え方を指しています。

【参考】第136回 「ビジネスOS」は「自分の未来を切り拓く力」

そして、その考え方のベース・根っこにあるのは、その人自身が「可謬(かびゅう)的であるかどうか?」が占めるウエートは大きいと思っています。

「可謬的」とは「自身に対する健全な自己否定」を指します。私たちは、自分の経験に基づいて多くの色眼鏡を掛けていき、次の経験もその色眼鏡を通した見方を塗り重ねていき、それを前提に判断や思考をしてしまいがちです。

ですので、自分は正しい・間違っているはずがないといった認識でいる(無謬〈むびゅう〉的でいる)と、どれだけ方法を学び、違う景色があることを聞いたとしても、常にそれを否定する自己の論理で論破してしまうことができてしまい、新たな道に歩を進めることはありえません。

常に「もっと他の見方があるかもしれない・私の考えが全てではないかもしれない」といったスタンス・姿勢がない限り「自らに問う」の実践にはつながりません。

そう、「自らに問う」ことは極めて重要ですが、もっと重要なことは「実践」にこそあるのかもしれません。

自分で切り拓く過程

以前、ある方に「最近の人は、考えていない。思っているだけ」と教えられたことがあります。

「あぁなれば、イイなぁ。こうなれば、イイなぁ」「コレはおかしいから、こうなればイイのに……」は“思っているだけ”で“考えていない”。

“考える”というのは、具体的な行動・アクションレベルまでを生み出し、さらにそれを“行う”という行為が伴ってこそ、初めて「●●さんはよく“考えている”ね」と言われるはずで……。

つまり、「自ら問い」を立て、その「問い」に基づいて、自らがその答えにつながる“解”を見いだし、実践・行動することが、これからのビジネスパーソンとしての「絶対必要条件」になるのではないかと思います。

そして、その「実践」を通じての結果の良し悪しに関わらず、その事実を受け入れることを通して「振り返り」をすることで、新たな「問い」が生まれ、また次の段階の「実践」に進めるようになるのではないでしょうか。

こうした「自分事化」した経験をした方は、さらに高い壁にぶち当たった時にも葛藤に打ち勝ち、さらなる行動へ踏み出しやすくなるため、スパイラルアップ的に成長を繰り返していくように思います。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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