第143回 「自律性」を促す

皆さんは「私たち一人一人の人間は、どうありたい」とお考えでしょうか……。私はあえて「べき論」としてではなく、「ありたいか?」として問う方が「自分事」として考えられるような気がしています。今回は「ありたい姿」に向けて近づくための「自律性」を考えてみたいと思います。

「自律性」を促す

こんにちは!

2023年も年の瀬が迫り、なにかと1年を振り返ったり、新たな年を迎えるに当たって構想を膨らませたりする機会がある時期なのではないでしょうか。今年は皆さんにとって、どんな1年だったでしょうか。

世の中的には、数年にわたって社会の混乱と転換を迫っていた新型コロナウイルス感染症の5類移行によって多くのことが変化した1年だったのではないでしょうか。世界レベルでの紛争も収まる気配がないだけでなく、「地球沸騰化」なんて表現が登場するほど地球環境の激変も含め、本当に先行きの見えない時代を突き付けられた1年だったように思います。

そんな状況の中、皆さんは「私たち一人一人の人間は、どうありたい」とお考えでしょうか……。いろいろな場面で「あるべき姿」と「べき論」で表現されるケースが見受けられますが、私はあえて「べき論」としてではなく、「ありたいか?」として問う方が「自分事」として考えられるような気がしています。

今回は「ありたい姿」に向けて近づくための「自律性」を考えてみたいと思います。

そもそも「自律」とは?

とある辞書によると「他からの支配や助力を受けず、自分の成し遂げる目的のために、自ら立てた規律に従って、自分の行動を正しく規制すること」と書かれています。

一般的には、誰しも人間は弱いもので「楽をしたい自分」が心の中には存在するものだと思います。一方で、その「弱い自分」と葛藤する「自らを律しようとする自分」がいることも事実ではないでしょうか。そういう意味で、誰もがこうした「二面性」を抱えているものだと思います。

その「誰もが持ち合わせる二面性」の中、どうすれば「自らを律する気持ち」が勝ることができるのでしょうか……。

「ありたい姿」は明確ですか?

前述の辞書の表現を確認してみると「自分の成し遂げる目的のために……」とあります。ということは、「自分の成し遂げる目的」が明確になっていなければ、「自分の行動を正しく規制すること」ができないということになるのではないでしょうか……。

そういう意味で、私は「あるべき姿」という「べき論」で、そもそもの「目的」を何らかの規制を受けて設定されているような印象があり、そうではなく、そもそもご自身が「何の制約も受けないのであればどうなりたいのか?」という視点での「ありたい姿」を設計することが大切なのではないかと思います。

ということは、自分が心の底から溢(あふ)れ出る「こうなりたい」という強い欲求が全ての起点になるのではないでしょうか。

ここで、大切なことは「事実・結果」としての「なりたいこと」、例えばプロ野球選手だとか、弁護士・医者といった事象を想起するのではなく、こうした「事実・結果」の向こう側にある「ありたいこと」、プロ野球選手になって夢を与えられる存在であったり、医者になって1人でも多くの人の命を救うことを実現したいだったりを想起・明確にすることのように思います。

もう一つは、それが「自分のエゴ・見栄・欲」のためなのか、それとも、誰でも良いので「自分以外の誰かの存在がそこにあるのか?」の視点ではないでしょうか。

イチロー氏の指摘

多くのトップアスリートの中でも、言語化に優れた方の代表格にイチローさんが挙げられるのではないでしょうか。

そのイチロー氏が、先日、北海道旭川東高校野球部の練習に2日間参加した後の子供たちに伝えた下記二つのメッセージは「自律性」の切り口での視点として興味深く感じました。

イチローさん、先生の指導が「しっくり来なければやらなくてもいい?」旭川東野球部、唯一の女子選手の悩みに“イチ流”回答(TBS NEWS DIG Powered by JNN)

2日間にわたる練習が終わり、イチロー氏は旭川東の部員たちにこう言葉を贈った。
「人より頑張らなくていい。自分の中でその日の限界を迎えることはできるよね。迎えることができたのか、逃げてしまったのか、自分ならわかるよね。それを重ねていったら、できるようになる。誇りやプライドが生まれるから、それが支えてくれる」

「指導者、厳しくできないって。時代がそうなっちゃってて。厳しくできないと何が起こるかっていうと自由にできちゃうからね。なかなか自分に厳しくできないでしょ。今、自分を甘やかすことはいくらでもできちゃうよね。でもそうなってほしくない。いずれ苦しむ日が来るから、大人になって社会に出てから。できるだけ自分を律して厳しくする」

上記のことは、スポーツだけでなく、仕事に取り組む姿勢も含めて、本当に戦う相手は自分自身だということだと思います。他の人はだませても自分にうそをついているかどうかは自分が一番分かるということは、全く変わらない普遍的な事実ではないでしょうか。

「伸びる子・選手・人」は、言われてやるのではなく、自分で決めて、それをやろうと「自分を律することができる」ということだと思います。

「言われなくても、できること」

そう、「自律性」の原点は、「誰かに言われてやること」ではなく、誰にも言われてもいないのに「自分がやりたくて仕方がないこと」を自覚的になることであり、さらには、その「やりたくて仕方がない事実」ではなく、その事実の中にある本質的なことをメタ認知的に自覚できることが重要なのではないでしょうか。

本来は「しんどいけれど、大切なこと」があるにも関わらず「無責任なやさしさ」で見限られる時代にさらされていることを自覚的になれるかどうか……が大切で、そのことをイチロー氏は「むき出しの自己責任」という表現で、この難しさを表現しておられます。

その一方で、大谷翔平クンや藤井聡太クンといった彼らの姿を見ていると、イチロー氏の「修行僧」のようなストイックさとは一線を画し、「自分のありたい姿」をもっと軽やかに跳び越えてしまっていける思考性を持ち合わせているように思います。

もはや、私たちは彼ら若い世代の方々の思考の芽を摘むことをしないようにするだけで良いのかもしれません。

今後もよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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