第144回 AI時代だからこそ、人にとっての「幸せとは何か?」を考える

今回は、テクノロジーの進化が進む中、私たち人間自身にとっての「幸せ」とは何か? そんな「幸せ」を求める人間の集合体である「企業組織の在り方」、すなわち「経営の在り方」と「そこで働く人の在り方」を考えてみたいと思います。

AI時代だからこそ、人にとっての「幸せとは何か?」を考える

こんにちは!

新しい2024年が始まりました。
何かと波乱含みのスタートで、ますますVUCA時代が加速し、混迷を極めていきそうな予感のする幕開けとなる気がします。

昨年は「AI元年」ともいわれ、今年はさらに加速度を増すことが確実視され、「エンタープライズ生成AI元年」と表現されるように企業活動の中に組み込まれていくことになるといわれています。

また、ChatGPTに代表される「生成AI」の領域から、人知を超えるともいわれる「万能AI」への進化が現実味を帯びて取り沙汰されるようになってきました。

今回は、こうしたテクノロジーの進化が、私たち人間の思考や行動に好むと好まざるとに関わらず、大きな影響を及ぼす時代の年始だからこそ、あらためて私たち人間自身にとっての「幸せ」とは何か? そんな「幸せ」を求める人間の集合体である「企業組織の在り方」、すなわち「経営の在り方」と「そこで働く人の在り方」を考えてみたいと思います。

「AI/テクノロジー」の進化は何をもたらしていくのか?

既に発展の潮流は不可逆的になっており、私たちの生活は多くのITテクノロジーやAIによって支えられています。

こうしたテクノロジーは、圧倒的な利便性・効率性をもたらすと同時に人間社会に新たな問題をもたらしていくことが想定されます。

本来、先進的なテクノロジーは社会に望ましいことのために使わなくてはならないはずですが、実際には多くの犠牲者を生み出す戦争や、国の在り方を決めていく選挙などに意図的に悪用されてしまっている現実も否めません。

こうした社会的なネガティブな利用の影響だけにとどまらず、私たち一人一人の生活における利便性・効率性は、私たち自身が気付かないうちに思考性や行動にもネガティブな影響を及ぼしている可能性を認識しておかないといけないのではないでしょうか。

そもそも「人は何のために生きるのか」

AIを含んだ先端テクノロジーが私たちの生活に利便性や効率性をもたらし、私たちの働き方にも大きな変化をもたらしていき、多くの仕事がテクノロジーによって代替可能になり、いわゆる、ルーティン作業を中心にした“労働”から人間が解放されていくとされる中で、究極的には「人は何のために生きるのか」という問いに向き合わざるを得なくなります。

例えば、いまやスマートフォンが一般的になり、誰もが必要な情報にいつでも簡単にアクセスできるようになっています。それに伴い、家族それぞれが自分の端末で好きな動画を好きなタイミングに楽しむことができるようになりました。“チャンネル争い”という言葉は死語になり、お互いのストレスは軽減されています。

一方で、家族や親子間で行われている“チャンネル争い”というコミュニケーションを通じて得られていた「お互いの趣味・嗜好(しこう)に対する理解」や「相手をおもんばかる気持ち」といったものを育む機会は失われているのかもしれません。

そういう意味で「人は他者との関わりを持たず、“自分の好きなこと”を好きな時にできる」ようにはなっているとは思いますが、「誰かに思いをはせる」機会は減っているともいえるのではないでしょうか……

さらにいえば、「情報環境が豊かになったから」といって、本当に“自分の好きなこと”をやれるようになっているのでしょうか?

人々はSNSを通じて、日々「社会的な成功とはこういうものだ」という第三者からのイメージを刷り込まれています。そして、同じ価値観に共感する人たちだけが集まり、それ以外を否定していく。個人としても、他人の成功をねたんでおとしめようとしたり、他人の消費をうらやましがったりしていくことになっています。

結果的に、SNSにあふれている情報に振り回されていることになり、本来の“自分の好きなこと”を見失い、誰かの目を気にして、気に入られるような自分を飾り立てていくことになってしまっているのではないでしょうか。

そういう意味で、本来の「人は何のために生きるのか」という問いに対する「人として幸福」に先端テクノロジーが貢献しているのか? というと疑問が出てきてしまいかねません。

「企業の在り方・そこで働く人の在り方」を問い続ける

こう考えていくと、先端テクノロジーがもたらす「利便性・効率性」は、少なくとも私たち一人一人の人生や働き方において「利便性・効率性が上がると、幸せになる」といえるほど単純なロジックではないような気がしてきます。

通常、私たち人間は「幸せ」になることを求めていると思います。
しかし、「利便性・効率性」が「幸せ」に直結するとは限らないとすると、私たちにとっての「幸せとは何か?」をあらためて、考えなければなりません。

前述した“チャンネル争い”における「自分以外の誰か」との関わりは、「人としての幸せ」に関係が深いように思います。

「自分以外の誰か」の定義は、人によってさまざまだとは思います。家族・子供といった極めて身近な存在から、上司・部下・同僚といった自身が携わる組織内の人々、さらには顧客や取引先、社会、世界、人類……といった壮大なスケールに至るまで。

「目的と手段」を、あらためて考える

以前に重い病と闘っている小学生のドキュメンタリーを見た時の話です。
日本では治療できずにいたが、多くの寄付を得てアメリカで手術を受け、3年生になった当時は体育の授業も健常者と一緒に過ごせるほどに回復したという話でした。

その最後に「○○クンは、大きくなったら何になりたい?」という質問があり、その子は「お金持ちになりたい」と答えていました。「医者になりたい」とでも言ってくれることを期待して見ていた私は拍子抜けしましたが、インタビュアーの方はさらに「どうして?」と突っ込みました。

すると、その少年の答えは「僕がしてもらったように、多くの人に寄付をするため」でした。

「どうして?」という問いが求めていたのは「目的」であり、彼にとって「お金持ちになる」のは「手段」に過ぎませんでした。

昨年も、日本社会で数多くあふれていた不祥事、中古自動車問題、自動車メーカーの品質不正、コロナ補助金に対する不正給付、そして政治家のキックバック裏金づくり……全て、どこからか目的と手段の混同から始まっているという点に共通項があるように思います。

“事”の大小を問わず、日本という国や企業において、こうした考え方が、横行し、のさばっていて、その“事”がここまで日本人の心や姿勢をむしばんでいるという事実に恐怖を感じてしまいます。

こうした状況に、目を背けずに、真っすぐ向き合う矜恃(きょうじ)を持っておかなければ、全てがなし崩しになってしまうのではないでしょうか……

そんな足元の、そもそも論を考えることが、先端テクノロジーがもたらす「利便性・効率性」にあらがえる「人としての幸せ」を考えることにつながっているのではないでしょうか。

ますます「真っすぐに向き合う矜持の大切さ・尊さ」の重要性が増していくのかもしれません。

2024年を自らの意思で、明るいものに切り拓いていけるように、引き続きよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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