第145回 組織における「当事者性」とは……

今回は、「タイムパフォーマンス」が物事の判断基準の一つになってきている中、「組織風土」や「やりがい」といったものを醸成していくプロセスにおいて、「従業員個々人が当事者性を持って関わる」とはどういうことなのかを考えてみたいと思います。

組織における「当事者性」とは……

こんにちは!

昔から「1月は行く・2月は逃げる・3月は去る」なんて言い方がありましたが、そんな言葉も死語になって久しいような気がします。とはいっても、本当に時間の経過は年々早くなっているような気がしますが、皆さんはどのように感じていますでしょうか。

「タイパ」という表現がスタンダードになり、若い方を中心に「タイムパフォーマンス」は物事の判断基準の一つになってきているようで、動画の「倍速視聴」を含め、私のようなかみしめながら味わうことがスタンダードな人間にとっては、「本当の良さが分かるのだろうか……」といった疑問が頭をもたげてしまいます。

まして、企業という組織に身を置くのであれば、いろいろな意味で人との関わりが醸成していく「組織風土」や「自分たちのやりがい」のような類いの代物は、タイパで効率的に形成されるのではないように思います。

今回は、こうした「組織風土」や「やりがい」といったものを醸成していくプロセスにおいて、リーダーだけではなく「従業員個々人が当事者性を持って関わる」とはどういうことなのかを考えてみたいと思います。

組織における「閉塞感」を打破するのは誰?

今年は「昭和」でカウントすると「昭和99年」に当たるそうです。昭和生まれの私のような年代の思考は、私にとっての「明治生まれの人の思考」に該当してしまうのか……と思うとゾッとします。

そういう意味では、さすがに「私にとっての明治」に位置付けられる「今の人にとっての昭和」なマネジメントなどは、もうすっかり淘汰(とうた)されていて姿を見せなくなってもイイように思いますが、実態はなかなかそうではないことが多いように感じています。

今、関わらせていただいている幾つかの会社においても「組織における閉塞(へいそく)感」「高圧的なマネジメント」「意見を言えない風潮」の類いの話が頻繁に聞かれます。

そして、そういう会社の方に限って「組織風土批判・上司批判」が横行し、「自分たちは悪くない。悪いのは幹部を含めた上層部であり、古い考えに縛られているリーダーだ」的な論理展開が繰り広げられます。

確かに、そうした「マネジメント手法」しか知らない・できない事実はそうだったとしても、それは全てリーダー側の責任と他責にして押し付けてしまって良いのでしょうか……

「組織における当事者性」とは?

先日も下記のような話がありました。
「上司が高圧的なタイプで、いろいろな意見を言っても、その方の意にかなっていなければ全否定され、下手をすると人格否定的な発言さえも出る。だから、やっていられない。そこを変えてもらわないと、前に進めない」といったニュアンスの会話でした。

たまたま、その部署の方が複数おられましたので、私は聞いてみました。

「その上司の方が、ミーティングのような皆さんメンバーがいるタイミングで部下のAさんがご自身の意見なり考えを発言されて、それに対して上記のような対応をされた際に、同席している他の方々はどうしているのですか……」

その答えは、「自分に火の粉が掛かってこないように、そのやり取りが過ぎ去るのを黙って見ている」でした……

このアクションは、その方々にとって「当事者性を持った対応」なのでしょうか……
「見ているだけ」という対応の意思決定は、その上司の対応を好転させることには1mmも貢献していません。それどころか、ある意味では、その方々自身もネガティブな影響を及ぼす側に回ってしまっている事実に気付いておられません。

「組織の閉塞感を好転させたい」という想いがあるのであれば、どんな態度の上司であったとしても「Aさんの意見のこの部分は共感できます」とか「あの部分は間違っていないのではないですか」といったAさんをサポートしたり、支援するアクションを取ったりしなければ、何も変わりません。

「できない」の三つの理由

もちろん、「そんなことをしたら、私が矢面に立ってしまうからできない」という心理や気持ちが分からない訳ではありません。

ただし、それを言い訳にするのであれば、「組織の閉塞感」や「こうあるべき」と言っているのは単なる評論家としての発言に過ぎず、当事者性はゼロであり、不平不満を愚痴として言っているだけになってしまいます。

「できない」には、三つのパターンしかないといわれています。

  1. そのやり方では「できない」
  2. 1人では「できない」
  3. 今は「できない」

お分かりのとおり

  1. やり方を変える
  2. 誰かと協力してやる
  3. 来たるべき時のために備える

で「できる」に転換していくしかありません。

自分が何らかの組織に身を置いている、もしくは組織的な活動に関わっている限り、大なり小なりのこの類いの軋轢(あつれき)は生まれるものではないかと思います。

その度にタイパ良くサッサと見切りをつける方法もあるのかもしれませんが、それでは本人の中身は何も変化もせず、成長もしないのではないでしょうか……

「成長マインドセット」といった表現もありますが、「成長と痛み/苦しみはセット」なのかもしれません。

先日、ジャーナリスト/田原総一朗さんと東京大学大学院の鈴木寛教授の下記対談の中で

「生きていれば必ず矛盾と出あう」「AIにはない人間の本質は迷うこと」田原総一朗と鈴木寛が語る「これからの教育が育むべき力」(ダイヤモンド・オンライン)

  • 「判断」と「決断」との違い
  • 最後に自分が信じるべきものを持っておく
  • 矛盾や葛藤に向き合う力

といった表現が出てきますが、それこそがAIやテクノロジーにはない人間として、最後の砦(とりで)/領域になるのかもしれません。あらためて「自分軸・自分の哲学の明確化・自覚化」が問われる時代になっているのではないでしょうか。

皆さんの会社でも、こうした議論を繰り広げられること自体が「組織における当事者性」を考えることにつながることなのかもしれません。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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