第5回 業務棚卸のすすめ

今回は、私がお客様より新規システム検討や合併等による組織再編成についてご相談を受けた際、まず提案させていただく業務棚卸(ぎょうむたなおろし)について説明させていただきます。

業務棚卸とは、その会社の各部署の仕事内容を担当者にもれなく書き出してもらい、その業務内容を分析することです。そこから、業務方法の見直しや業務上の問題点の解決を導き出していきます。

狙いは、業務棚卸で浮き彫りになった現状の問題を可能な限り解消し、自社の業務を望むべき最良の方法にブラッシュアップすることです。

新システム検討などでは、業務上の機能確認および要件確認、検討システムとのフィット&ギャップのツールとして利用していますが、システム開発を伴わない業務棚卸だけでも、業務の可視化や改善ポイントの絞り込みでの効果が得られます。

この業務棚卸の提案をお客様にすると、実際には顧客の要望や全体最適・費用対効果などいろいろな要件があるため、望むべき最良の姿の実現はなかなか難しいといったお話を伺います。

もちろん、外部要因や相関関係で自社だけで解決できない課題は多くあります。そういう状況下でこそ、業務棚卸を行い自力解決可能なものと自力解決不可能と思われるものに分けて検討することが、効率的な効果を生む上で重要となります。 

業務棚卸とは、自分たちの役割を意識しつつ、認識した課題に対し、会社全体の知恵を出し合い、可能な限り目的に近づく改善を実施する。また、自社だけで解決できない課題には、先入観による思い込みや障害点に自社の弱みが含まれていないか確認できる業務改善方法なのです。

私が関わる鋼材加工業(コイルセンター)では、多くの会社が単発受注やリピート受注が混在する複数の生産工程を、限られた少人数で管理し顧客対応しています。そのため、業務内容は集約され、雑多でタイムリーな判断が担当者に委ねられるケースが少なくありません。

この状況下、担当者の感覚の中での上司に決裁を仰ぐほどの課題ではない(自分が多少無理をすれば対応できる)という判断が、新たな実りの少ない仕事を生んでいくこととなります。このような生い立ちの仕事は、やり方の検討や結果の評価が担当者のみで行われ、業務棚卸の場で初めて存在が知られることとなります。

例えば、あるコイルセンターの業務棚卸で、営業補佐から顧客に毎月提出する資料の作成に多くの時間がかかるという課題が出ました。客先要望ではあるが代替案はないのかとの意見をもとに営業担当が顧客に使途を確認したところ、先方では担当が代わり現在は使用されていないことがわかりました。

これにより資料作成に割いていた時間が大幅に削減されました。しかし、営業担当はこの仕事自体を把握していなかったので、おそらく顧客からのサービスの対価も得られていなかったことと思われます。

上記の大きな課題が意外と簡単にあっけなく解決できた例のように、日々の仕事の中には似たような機会損失が隠れている可能性があります。それらを撲滅するためにも、定期的な業務内容のチェック方法としても、業務棚卸は有効な役割を果たすと思われます。
 
<業務棚卸のポイント>

  1. 業務棚卸で作成する業務フロー書式は事前に統一
  2. 業務棚卸を行う際は各自の棚卸をもれなく実施
  3. 課題で改善できないものには障害内容・関連部署を明記
  4. 業務棚卸は担当者⇒部署単位⇒会社全体で内容を共有化
  5. 課題の解決レベルを明確にする  自己対応⇒(部長決裁)⇒(社長決裁)

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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