アパレル物流がアフターコロナを生き抜くために必要なこと

2020年に入って新型コロナウイルス感染症が大流行し、4月には緊急事態宣言が発令されました。これを受け、全国的に外出自粛や店舗への休業要請の呼びかけがなされ、経済にも大きな打撃を与えました。アパレル業界もその例外ではなく、売り上げの落ち込みや需要の変化により危機的状況におかれている企業も少なくありません。この記事では、コロナ禍がアパレル業界に与えた影響と、アパレル業界がアフターコロナを生き抜くために必要な心構えについて詳しく解説します。

アパレル物流の特徴

アパレル物流には独特の難しさがあり、悩みを抱えている企業も少なくはないのではないでしょうか。

まずは、保管に関する難しさが挙げられます。アパレル商品には植物繊維の綿や麻から、ポリエステルなどの合成繊維、動物に由来する絹やウール、レザー、毛皮など多種多様なものが使われており、それぞれ適した保管環境が異なっているので倉庫などの環境設定に細心の注意を払う必要があります。温度や湿度の変化にも弱く、保管状態によっては虫害などが発生して品質が大きく損なわれてしまうこともあります。
また、保管場所も温度や湿度を調整するだけでよいわけではなく、カラーやサイズ別に管理したり、型崩れを避けるためにハンガーを使って保管したり、アクセサリーなどデリケートな商品を破損しないように梱包(こんぽう)するなど管理に手間がかかりますので、保管のコストがかかる傾向にあります。

物流過程の複雑さもアパレル物流の特徴です。衣服や靴などのアパレル商品は同じ型番にカラーバリエーションやサイズの展開があり、その分、在庫管理や出荷時の確認作業に非常に手間がかかり、入荷が遅れることもしばしば起こります。常に変化し続けるトレンドに対応して顧客が求めるものを即座に提供して、流行を提案し続けることがファッションビジネスの本質です。そのため、出荷作業の遅延で被る損害は非常に大きいものになるでしょう。

また、アパレル商品の流通過程では「流通加工」が必要です。これは、箱詰めや値札付けなど、商品の価値を高めるために行うもので、ブランド名などのタグ付けや不良品の補修などの作業もあります。当然、サプライチェーンの途中にこれらの加工を行うための工場や人手も確保しなければなりません。

このように、アパレル物流は商品ごとに異なる配送のポイントと保管テクニック、トレンドや季節の移り変わりを見極めて流通させるセンス、サイズやカラーバリエーションを適切に仕分けして管理する仕組みなど、専門的な知識やノウハウ、技術が必要になります。
業界の持つこうした特殊性から、専門の設備とスタッフを整えているアパレル専門物流業者に自社の物流業務をアウトソーシングしているアパレル企業も少なくありません。

コロナがアパレル業界に与えた影響

2020年には新型コロナウイルス感染症が全世界で大流行し、日本経済も大きな打撃を受けました。もちろん、アパレル業界もその例外ではなく、昨年同時期と比較して売り上げが激減する結果となっています。コロナ禍による外出自粛や店舗の休業などで実店舗の販売が伸びなかったことに加え、百貨店の催事やイベントなどが全て中止になったことも売り上げ減に追い打ちをかける結果となりました。

この大幅な売り上げ減に伴って、各企業とも例年より多くの在庫を抱える結果となっています。クラウドサービス開発会社フルカイテンの調査によると、アパレル企業の2020年3月~5月期の在庫月数は前年同期と比べ最大1.3倍まで増加しており、大半の企業で在庫回転率が悪化しています。

引用:コロナ危機で主要アパレルの在庫月数が最大2.5倍に増加(PR TIMESサイト)

回転率が悪化した要因には、物流のタイミングのズレもあります。通常と異なる状況下で商品の需要が予測しきれなかったり、物流の乱れで入荷が間に合わずニーズのタイミングに合わなかったりしたために、売れ残りが大量に発生してしまったのです。

また、社会情勢に伴う消費者のニーズの変化も関係しています。社会情勢に伴う在宅勤務の増加で、オフィス向けファッションのニーズが減り、カジュアルファッションへの需要が増えたことも売り上げに大きく影響したとみられています。

こうした物流状況の変化はサプライチェーンの倉庫の状況にも大きな影響を与えました。各企業が大量の在庫を抱えざるを得なくなったことで、倉庫への需要が高まったのです。そして、コロナ禍完全収束の見通しがたたない状況において、少しでも在庫を減らしたいとの観点から、あらめてEコマースへの注目が高まり、新たにEC事業に力を入れ始める企業も増えています。

今後のアパレル業界の動き

では、コロナ禍によって大きな影響を受けたアパレル業界が現在抱えている課題について見てみましょう。

まず、2020年は春物や夏物の在庫を大量に抱えたまま秋冬のシーズンを迎える事態になりました。ですから、各企業とも今後の商品について仕入れの方針を再考し、販売戦略やプランを新たに見直す必要に迫られています。

現状ではコロナの影響で在庫月数が長くなっていますし、今後の感染状況によっては再び外出自粛の呼びかけがされ、店舗を休業せざるを得ない事態になる可能性もあります。また、店舗を営業できたとしても客足が読めない部分も大きく、販促セールやキャンペーンの実施もしづらい状況です。その結果、業績に響き資金面で不安を抱える企業が増えていくことが予想されます。

しかし、ポジティブな面もあります。アパレル業界に新たに生じた大きな変化として、コロナ禍により在宅ワークが一気に広がり、カジュアルファッションやオンライン会議を想定したファッションへの需要が喚起されています。商品開発や販売部門が一体となってこの需要を掘り起こし、新たな市場を創出することができれば、これからの収益の柱として育てていくことも期待できます。

アフターコロナを生き抜くためには

最後に、アパレル業界がアフターコロナの時代を生き抜くために必要なポイントを解説します。

アパレル関連ビジネスで顧客のニーズに機会損失なく対応するためには、物流管理と在庫の管理が非常に重要です。しかし、コロナ禍の外出自粛などに伴い、物流や運送の需要は増し、業界は慢性的な人手不足に陥っており、今までの仕組みではアフターコロナの需要に追いつかず満足なサプライチェーンを確立できないケースが増えてくると考えられます。

この解決策としては、物流現場での人手不足そのものを解消することも非常に重要です。近年、AIやIoTの技術などを駆使してあらゆる現場作業を自動化し、効率化につなげようとする動きがあります。物流の現場でも、これらのテクノロジーを活用することで、現場作業員の負担を減らしつつ作業効率を上げ、人手不足を解消し生産性を向上させていくことが必須になるでしょう。

また、以前から物流の現場では「再配達」が大きな負担になっています。これも、玄関前などに置くスタイルの配達を普及させるなど、再配達そのものを抑制して作業の絶対量を減らす仕組みを構築することが大切です。配達の料金体系や配達時間の指定などの仕組みやルールを見直し、顧客の利便性と現場の負担軽減を両立させるシステムの確立もまた求められています。

コロナ禍を機にアパレル企業で再度注目されつつあるECでは、実店舗以上に在庫管理が重要です。ECサイトを展開して全国のエリアを販売対象にする場合、実店舗とは異なる戦略も必要になるでしょう。

実店舗では得られにくいECのメリットとして、新商品を少量販売してニーズを検証する試験販売を行いやすく、顧客ニーズに即した商品の開発がしやすいといった面もあります。また、ECサイトによるオンライン上の販売では顧客の購買行動データの収集と分析がしやすく、より正確なニーズやニーズのボリュームを把握し、在庫管理に生かすことが可能になります。

物流管理の徹底でアフターコロナを生き抜く

アパレル業界においても新型コロナウイルス大流行の影響は非常に大きなものとなっており、大幅な売り上げ減少を招く結果となっています。アパレル業界では季節やトレンドによって物流の内容を柔軟に変化させ、臨機応変な対応を行う必要があります。
アパレル業界がアフターコロナを生き抜くためには、顧客のニーズをより正確に把握して、在庫過多や物流の混乱を回避しつつ、販売機会を逃さないような施策が求められています。
大塚商会では、お客様と非接触で運営できるECや、物流サービスと連携することが可能なアパレル業界の商習慣対応した販売管理システム「ApaRevo」などITを活用したご支援もお手伝いさせていただいています。

ECサイトなどオンラインでの販売も今後は、さらに対応が必要になっていくと考えられる今、業務の見直しなど図ってみてはいかがでしょうか。

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