コロナ禍を経たアパレル業界の今後とは?

コロナ禍の新しい生活様式は、アパレル業界に多大な影響を与えるものでした。コロナ禍を経て、企業は既存のビジネスモデルの危うさを知り、消費者もまたファッションに対する価値観などを見つめ直すようになっています。本記事では、コロナ禍における消費者ニーズの変化やアパレル業界への影響をまとめると共に、今後のアパレル業界の課題や求められる対応などを解説します。

コロナ禍を経たアパレル業界の現状

フルカイテン株式会社の調査レポートでは、大手主要アパレル企業における2021年3月から2022年2月期の決算状況が報告されています。その報告によると、調査対象全16社のうち、11社が前年の売上高を上回っていました。

また、特筆すべき点として、GMROIという指標の数値が14社で改善し、コロナ禍前の水準を超えた会社も9社あったことが挙げられます。GMROIとは簡潔に言うと、在庫をどれだけ効率的に利益(粗利)に結びつけられたかを示す指標です。

GMROIが向上した背景にはコロナ禍での客足の鈍りを考慮して仕入れを抑制した結果、値引き販売や残在庫の償却が減少したことが関係していると考えられます。そのため、社会がコロナ禍から本格的に抜け出して需要が回復したとき、売り上げの成長と良好なGMROIを両立できるような強力な販売力を得ることが今後の重要なポイントとなります。

コロナ禍がもたらしたアパレル業界への三つの変化

コロナ禍は単純に消費の低迷を引き起こしただけでなく、複雑な変化をアパレル業界へもたらしました。以下では、その変化を三つに大別して解説します。

低価格志向と高級志向、消費者ニーズの二極化

コロナ禍で起こった第一の変化は、消費者のニーズが低価格志向と高級志向へと二極化したことです。コロナ禍においては外出機会が減少したことにより、高級な服、特にフォーマルな衣服を着る必要性が薄れました。リモートワークを通してカジュアルな服装で仕事をするのに慣れたこともあり、たとえオフィス勤務に戻ったとしても以前のようなスーツにネクタイというドレスコードは求めず、企業がカジュアルウエア着用を認める流れにあります。

その結果、一部の消費者の間では低価格志向が強まりました。外出機会の減少と同時にトレンドを意識する機会も減ったため、ファストファッションやフリマアプリを利用するなどして、トレンドアイテムに対するコストを抑えようとする傾向も強まっている状況です。

他方で、トレンドを追う必要性が薄れたことで、高級志向へ価値観をシフトする消費者も増えています。なぜなら、トレンド(周囲)にあわせて短期サイクルで服を買い替えていくのではなく、「自分が本当に気に入った服を長く大事に着よう」と考える消費者が増えたからです。これによって、多少価格が高くても、時代に左右されずに長く着られる商品の需要が高まっています。

大量生産・過剰供給への疑問符

前述の高級志向に通じる動きとして生じているのが、「大量生産・過剰供給」という従来のアパレル業界におけるビジネスモデルへの疑問符です。

まず、短期スパンでファッションサイクルが移り変わるアパレル業界では、以前より過剰供給が問題になっていました。その理由は、シーズンやトレンドが過ぎた服は行き場を失い、セールでたたき売りするしかないような状況が常態化していたからです。特にコロナ禍で一気に消費が冷え込んだこともあり、多くの企業が大量の在庫を抱えたことから、これまでのビジネスモデルを疑問視する動きが生産者側で強まりました。

それと同時に消費者側でも、サステナビリティの観点から従来のビジネスモデルへの疑問符が強まっています。大量生産・過剰供給は、CO2排出や大量廃棄など、自然環境への負荷が大きいビジネスモデルです。そのため、サステナビリティやSDGsへの社会的関心が高まる中で、それらに無関心な企業は、一部の消費者から批判的なまなざしを受けるリスクを抱えるようになっている状況です。

実際、経済産業省の調査資料によれば、衣服の購入決定に関係するさまざまな要因のうち、「サステナビリティへの配慮」が今後重要になると答えた消費者が最も多い結果でした。逆にこれまで比較的重視されてきた「トレンド」は最下位に落ちています。このように大量生産・過剰供給を疑問視する動きは、生産者と消費者の双方から生じている変化です。

参照元:ファッションの未来に関する報告書(経済産業省・PDF)

ECサイトの定着とファッションテックの推進

コロナ禍における外出自粛は、実店舗での集客を難しくする一方で、オンライン販売(EC)を普及・促進するきっかけにもなりました。もちろんコロナ禍前からもアパレル系のECは存在しましたが、デザインや色味、サイズ感などは実際に見たり触れたりしないと分かりにくい部分がある点も影響し、課題が多くありました。

しかし、コロナ禍と共にECの重要性が増したことにより、デジタル技術の力でこうした問題を解決しようとするファッションテックの推進が多くの企業の間で広がっています。例えば、スマートフォンアプリを使って、自分がその服を着たときの姿を疑似的に確認できるバーチャル試着はその代表例です。また、販売員がSNSでおすすめのコーディネートを発信するなど、デジタルを介した消費者へのアプローチも活性化することになりました。

近年ではオフライン(実店舗)とオンライン(EC)を切り分けて考えるのではなく、シームレスに組みあわせて統合的なユーザー体験を提供しようとする「OMO(Online merges with offline)」というコンセプトに着目する企業も増えており、ファッションテックの重要性はますます高まっています。

今後アパレル業界に求められること

上記の変化に対応するために、今後のアパレル業界には多くの改革が求められます。以下では、その主だったポイントを解説します。

サステナビリティへの意識

さまざまな観点から大量生産・過剰供給についての問題意識が高まる中、アパレル業界では製造工程におけるCO2削減や古着回収制度、リユース素材の検討など、サステナビリティに配慮した取り組みをしていくことが重要です。こうした「サステナブルファッション」に向けた取り組みは環境省でも推奨しており、企業はよりエコフレンドリーな戦略を具体的に策定する必要があります。

サステナブルファッションの推進に関するWebサイト(環境省Webサイト)

適切な需要予測による在庫管理

サステナビリティへの動きと関連して重要になってくるのが、正確な需要予測による効率的な在庫管理です。デジタル技術を活用して適切な需要予測を行い、余剰在庫の発生やリソースの無駄遣いを削減することは、経営効率を高めるためにも欠かせません。つまり、適切な需要予測に基づいた在庫管理は、環境への配慮と経済的な利益の双方を同時に追求するための中軸となります。

D2C(Direct to Consumer)モデルへの挑戦

コロナ禍以降、消費者との直接的なコミュニケーションがより重要になってきています。D2Cモデルは、商品を消費者に直接販売するビジネスモデルであり、SNSなどを通じて顧客ニーズを柔軟に反映することが可能です。このモデルを採用することで、急速に変化する消費スタイルに対応でき、顧客満足度の向上も図ることができます。

トレーサビリティへの対応

経済産業省の資料によると、コロナ禍を経て、消費者の間では製造過程の透明性を担保するトレーサビリティへの要求が強まっています。この傾向はサステナブル、あるいはエシカルな商品やビジネスを求める志向の高まりともリンクするものです。透明性のある情報開示によって、製品の生産過程の中にサステナビリティや企業倫理に反する要素が入っていないことを保証することで、自社やその製品に対する顧客の信頼感・満足感を深め、企業価値の向上につなげられます。

ファッションの未来に関する報告書について(経済産業省・PDF)

このように、コロナ禍は既存のビジネスモデルの問題点にあらためて目を向けるきっかけになりました。コロナ禍を経て消費者の志向も変化している中、アパレル業界にはこれらの変化への適応が求められます。

まとめ

コロナ禍を経て、「大量生産・過剰共有」という従来のアパレルモデルは経営面からもサステナビリティの面からも疑問視されるようになりました。アパレル業界はこうした昨今の動向に沿うために、さまざまな施策を検討していかなければなりません。中でも、適切な販売・在庫管理は、経営的な利益と環境への配慮を両立する重要なポイントです。販売管理システムの導入も一案です。以下の記事では、アフターコロナにおける物流管理について解説しています。ぜひこちらの記事も参考にしてください。

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