サステナブルファッションとは? アパレル企業ができる取り組みを紹介

自然災害、少子高齢化、格差の拡大、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)など、現在の日本は不透明感に包まれています。このような社会情勢において大きな課題になっているのが、いかにして「サステナブル(持続可能)」な社会をつくっていくかです。本記事では、ファッション業界におけるサステナビリティ実現のための取り組み「サステナブルファッション」について解説します。

サステナブルファッションとは

まずは、サステナブルファッションとはどのようなファッションなのか、その概要を解説します。

サステナブルとは

そもそも「サステナブル(sustainable)」とは、英語で「持続可能な」を意味する形容詞です。名詞形は「サステナビリティ(sustainability)」で、略して「サスティナ」といわれることもあります。本来は「維持できる」「持ちこたえる」といった意味を持つ言葉ですが、近年は地球の環境維持に役立つ開発や事業、環境に配慮した運動や行動を表す際に使われます。

サステナブルファッションの定義

サステナブルファッションも広い意味で「サステナビリティ」の延長線上にある概念です。サステナブルファッションは、衣服の原料から廃棄またはリサイクルに至るまでの一連のプロセスが、健全であり続けることを目指す取り組みです。それゆえ、単に自然保護を意識した衣服づくりをするだけではなく、労働環境や販売戦略なども含め、包括的に「持続可能」であることを目指した考えであるといえます。

そしてこのサステナブルファッションは、安価な製品の過剰生産・大量廃棄を繰り返すファストファッション企業の問題などが世間に知られるようになったことがきっかけで、欧米を中心に注目されるようになりました。

サステナブルファッションが注目される背景

サステナブルファッションが注目されるようになった背景には幾つかの要因があります。以下では、それぞれの背景について解説します。

環境破壊問題

第一の背景として挙げられるのは、環境破壊問題に対する意識の高まりです。例えば、化学塗料は河川を、温室効果ガスは大気を汚染することが知られています。こうした環境への悪影響を無視して無秩序な生産を行うこと、また、そうした影響を無視して大量に在庫廃棄をすることに対し、現在の社会は厳しい批判の目を向けています。

人権問題

サステナブルファッションへの注目の裏には、アパレル業界における人権意識の高まりもあります。長時間労働や低賃金、ずさんな管理体制など、従業員の過剰な負担の上に生産力を維持している企業が横行していることに、業界全体で批判の声が上がるようになってきたのです。ファッション業界の競争が健全なものであるためにも、従業員が安心して働き続けられるような環境づくりを業界全体が心がけなければなりません。

動物愛護

動物愛護の観点もサステナブルファッションへの注目を高める一要因です。例えば、スタンダードなファッションアイテムであるレザーやファーは、動物を殺処分して得られた毛皮などが原料です。近年では動物を使った原料調達の現場における凄惨(せいさん)な実態が注目されるようになり、できる限り動物素材を避けた衣服を作る取り組みが進んでいます。

サステナブルファッションの基本条件

「サステナブル」と定義されるファッションの基本条件としては、以下の要素が挙げられます。

オーガニック素材

オーガニック素材とは、農薬や化学薬品を使わずに天然栽培された綿花を使ったコットンを指します。例えば、綿花の栽培効率を上げるために化学肥料や殺虫剤などが大量に使われると自然環境に悪影響を及ぼします。また、石油から作られたシャツを捨てれば、土壌を汚染することになります。それゆえオーガニック素材を使うことは、地球環境や生産者、着用者の健康に配慮した取り組みとして評価されています。

フェアトレード

フェアトレードとは、日本語で「公平・公正な取引」を意味する言葉です。商品を不当に安く買いたたくような取引は、発展途上国などの労働者をいつまでも困窮させ、社会の発展を阻害します。また、利益を上げるための大量生産は、自然環境への悪影響につながります。つまりフェアトレードは、貧困問題と環境問題両面の解決を目指した社会貢献の仕組みであるといえます。

アニマルフリー

アニマルフリーとは、毛皮などの動物由来素材の代わりに、自然素材のコットンやベジタリアンレザーなどを用いて衣服を作る取り組みです。動物愛護の問題意識からアニマルフリーに取り組む企業が増えています。アニマルフリーなファッションは「ヴィーガンファッション」や「ヴィーガンアパレル」といわれます。

テーラーメード

テーラーメードとは品質を重視して服を特別に仕立てることです。1シーズンしか着ないで捨てられてしまうファストファッションに対して、価格に見合った品質の良い服、長く愛用できる服を作ろうという考え方がテーラーメードの根底にあります。テーラーメードは、ほかにも「オートクチュール」や「オーダーメード」とも呼ばれています。

リユース

リユースとは、不要になったものを他の人に売ったり、譲渡したりして再利用することです。例えば、リサイクルショップやフリーマーケットなどにおける古着の売買などです。近年では日本でもフリマアプリの利用者が増えており、社会的にリユースは一般化してきています。

リサイクル

リサイクルは、例えば、サステナブルファッションでは、ペットボトルを再利用して作られた服やバッグなどが該当します。服は服のまま原形をとどめて再利用されるリユースに対して、リサイクルは不要になった服を活用してバッグを作るなど、別の形に変えて再利用する取り組みのことです。

サステナブルファッションブランドの事例

サステナブルファッションの取り組みは、日本のファッション業界でも進んでいます。日本発のサステナブルアパレルブランドA社の例をご紹介します。

A社は、安全性と信頼性が確認された国内メーカーの生地のみを使用しており、自社の生産も全て国内の工場で行っています。扱う素材は、使用済みペットボトルで再生した生地、厳格な有機農法で作られたオーガニックコットンの生地といった、人と環境に優しいものばかりです。

もちろん、自然環境だけに気を遣っているわけではありません。いくら環境に配慮した素材を使っていても、それを生産する人たちに無理がかかっていては真の意味での「サステナブル」ではないという信念のもと、自社に関わる全ての人の持続可能性に配慮した経営をしています。それゆえ、自社の製造過程の透明性を高度に保つことを心がけており、ユーザーに対してはSNSを活用して生産背景などをありのまま発信しています。

A社の商品はユーザーが長く愛用することを想定したものが多く、ここにもサステナビリティへの意識の高さがうかがえます。結果として「サステナブルなアパレルブランド」として消費者から広く認知され、それがさらにブランド価値としてユーザーの支持を集める一要因にもなっています。

持続可能な取り組みとして在庫数の適正化も重要

アパレル業界では、今後サステナブルファッションを意識した取り組みが増加すると予想されます。その際、サステナブル素材を活用した取り組みとともに考えなければならないのが、在庫数の適正化により不良在庫を減らし、在庫数を最適化するシステムです。

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まとめ

サステナブルファッションとは、アパレル業界を健全に存続していくための取り組みです。自然環境への配慮の欠如、過酷な労働環境、動物の犠牲など、ファッション業界の闇は今や消費者から厳しい視線に晒(さら)されています。裏を返せば、サステナブルなブランドであることは、企業の一つの価値になっているのです。
紹介したようにサステナブルファッションは、さまざまな視点からアプローチができます。本記事を参考に、まずは実現しやすいところから取り入れてみてはいかがでしょうか。

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