AIレコメンドとは? 顧客満足度を高める仕組みと企業の活用事例

近年、ECサイトをはじめとしたオンラインビジネスにおいて、「AIレコメンド」が顧客体験を向上させるカギとして注目を集めています。特にアパレル業界では、カラーやデザイン、シルエットといった細かな違いが購買の意思決定に大きく影響するため、顧客の趣味嗜好(しこう)を深く理解し、的確にレコメンドできることは非常に重要です。そこで本記事では、AIレコメンドの仕組みや導入メリット、具体的な活用例などを分かりやすく解説します。

小売業界ではもはや必須? 顧客体験を向上させる“AIレコメンド”とは

AIレコメンドの流れ

そもそもレコメンドシステムとは、ユーザーの過去の購入履歴や閲覧行動、検索履歴などを基に、最適と予想される商品・サービスを提案する仕組みです。現在では、ECサイトや動画配信サービス、ニュースアプリなど多様なサービスで広く活用されています。AIレコメンドは、こうしたシステムにAIの高度な分析機能を搭載することで、より的確な提案を可能にしたものです。

AIレコメンドの主な目的は、顧客体験(CX)の向上にあります。ユーザーの価値観や購買活動が多様化・複雑化している現在の小売業界では、売りたい商品を画一的に提案するだけでは功を奏さないケースも少なくありません。

とりわけアパレルの場合、商品のカラーやサイズ、デザインなど、購入の判断要因がユーザーごとに大きく異なるため、一律の提案は非効率になりがちです。その点、AIの分析によって高度なパーソナライズを可能にするAIレコメンドは、顧客一人一人に合った提案を可能にし、購買意欲を高める有効な手段として注目されています。

AIレコメンドの主な手法と「欲しい」が見つかるアルゴリズムの仕組み

AIレコメンドの主な手法と「欲しい」が見つかるアルゴリズムの仕組み

ユーザーごとに最適な商品を提案するAIレコメンド機能は、主に以下のアルゴリズムによって成り立っています。

  • 協調フィルタリング
  • ルールベース・レコメンド
  • コンテンツベース・フィルタリング
  • ハイブリッド・レコメンデーション・システム

ここでは、それぞれの仕組みと特性を解説します。

1.協調フィルタリング

協調フィルタリングとは、購買履歴や閲覧履歴などが類似しているユーザーデータを基に、ターゲットへのレコメンド内容を判断する手法です。例えば、「この商品を買った人は、こちらも購入しています」といった形で提案を行います。

協調フィルタリングはレコメンドの精度が高く、ターゲットに有用かつ新たな発見を与えられるのが魅力です。しかし、レコメンド精度を上げるためには、十分なデータを蓄積する必要があるため、結果が出るまでに時間がかかるという欠点もあります。

2.ルールベース・レコメンド

ルールベース・レコメンドとは、あらかじめ設定した条件やルールに従って商品を提案するシンプルな手法です。例えば、「購入金額が5,000円以上の顧客には、この商品を推薦する」「机を買った顧客には椅子も推薦する」といったルールを人の方で設定し、ユーザーがその条件を満たした場合にレコメンドが行われます。

この方法は、アルゴリズムが単純で済むため導入しやすく、コストも低いのが利点です。一方で、あらかじめ設定したルールどおりに機械的に処理されるため、柔軟性が低く、ルールとユーザーニーズのあいだにズレが生じやすいという課題もあります。

3.コンテンツベース・フィルタリング

コンテンツベース・フィルタリングは、商品の属性情報とユーザーの好みの傾向を照合し、類似商品をレコメンドする手法です。例えば、「花柄のシャツ」を購入・閲覧したユーザーに対して、「花柄のスカート」を提案するといった例が挙げられます。

この方法は、商品自体の特性とユーザー自身の行動履歴に基づいてレコメンドするため、新商品などにも対応しやすいのが特長です。しかし、「レコメンドの範囲がユーザーの既存の嗜好に偏りやすい(同じような商品ばかり提案してしまう)」「ユーザーが商品のどの属性に引かれたのか、特定が難しい」といった課題もあります。

4.ハイブリッド・レコメンデーション・システム

複数の手法を組み合わせてレコメンド精度を高める仕組みです。具体的には、協調フィルタリングとコンテンツベース・フィルタリングを併用し、類似ユーザー(他者)の傾向とユーザー自身の傾向を総合的に反映した提案を可能にします。

これにより、「データが蓄積されるまで精度を高めにくい」という協調フィルタリングの欠点や、「提案内容が偏りやすい」というコンテンツベース・フィルタリングの欠点を相互に補完することが可能です。ただし、複数のアルゴリズムを適切に組み合わせるには、複雑な設計が必要なため、導入・運用のコストや難易度が高いという欠点もあります。

AIレコメンドの導入で何が変わる? 企業にとってのメリット・デメリット

AIレコメンドは企業に大きなメリットをもたらす一方、運用上の課題もあります。導入する際は、下記のメリット・デメリットの双方を把握したうえで、対策を立てておくことが重要です。

最大のメリットは、「顧客ロイヤルティ」や「コンバージョン率」の向上

パーソナライズされたAIレコメンドによって、ユーザーが自分に合った商品を見つけやすくなることで、コンバージョン率の向上が期待できます。さらに「このサイトでは自分好みの商品を見つけやすい」という事実は、企業やブランドに対する信頼・愛着を高め、顧客ロイヤルティの強化に寄与するものです。

その他、購買データを活用した需要予測、効果的なクロスセル・アップセルの実現、マーケティング施策の最適化、業務効率化など、数々のメリットが見込めます。

一方でコスト面や「データの不足・偏りによる精度の低下」が課題に

AIレコメンドの精度を高めるには、大量かつ高品質なデータを収集し、それらを的確に処理できる仕組みを構築することが不可欠です。従って、その導入に際しては、ある程度大きな初期投資が求められます。

また、リアルタイムかつ正確な情報を活用するために、部門横断的にデータ管理をする必要もあるため、部門間の連携を要する場合もあります。

その他、偏ったデータや古い情報に依存すると、的外れな提案がなされる恐れがあり、購買にうまくつながらない恐れもあるため注意が必要です。

自社ECにレコメンド機能を取り入れる方法

自社ECサイトにAIレコメンド機能を導入する方法としては、主に以下の三つがあります。

ASP(SaaS)型サービスの利用
サービスプロバイダーが提供する既成のシステムを利用する方法です。自社開発の必要がないため、導入が簡単でコストを抑えられる一方、細かなカスタマイズをしにくいというデメリットもあります。
ECシステムに標準搭載された機能の活用
導入のしやすさという点では、レコメンド機能が標準搭載されたECシステムを活用するのも有用です。商品情報との連携やルールの設定なども比較的簡単にできます。
オープンソースの活用
公開されているソースコードを利用してシステム開発する方法です。自由度が高い反面、構築・運用に専門的な技術力を要します。

いずれの方法を採用する場合も、まずは自社の課題や導入目的を明確にし、それに合致したシステムを探すことが大切です。また、レコメンド精度を高めるためには、データの蓄積や管理体制の整備が欠かせないため、システム導入後も継続的な取り組みが求められます。

事例で学ぶ! ECサイトにおけるAIレコメンドの先進的な活用シーン

AIレコメンドを導入することで、単にコンバージョン率を上げるだけでなく、顧客のショッピング体験をより楽しいものにすることも可能です。最後に、特に先進的なアプローチを実践している企業事例を基に、AIレコメンドの活用方法やその効果についてご紹介します。

1.AIレコメンドで行動データを基にした高精度なおすすめ商品を提案

ある大手ファッションEC企業は、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴などの行動データをAIで分析し、個々人の嗜好に合った商品をおすすめするレコメンド機能を活用しています。また、ユーザーが好むファッションジャンルを診断し、それに合わせたコーディネートを検索できる機能なども導入しており、顧客体験を高めることに成功しています。

2.AI×レコメンドメールで売上アップ! より高度なパーソナライズマーケを実現

ある大手アパレルグループは、AIレコメンドを活用したメール配信により、ECと実店舗の双方で購買率を高める施策を実施しました。同グループの調査によると、AIレコメンドを活用することで、メール1通あたりの売上額が従来の方法に比べて約30%向上したケースも存在します。同グループでは、生成AIによるコーディネート提案や需要予測にも取り組むなど、AI活用を積極的に進めています。

AIを活用したパーソナライズ化は顧客情報の収集&一元管理がカギ

AIレコメンドの効果を最大化するには、高精度のパーソナライズと、それを支える顧客情報の一元管理が不可欠です。そのためには、ECと実店舗のデータを統合し、リアルタイムで購買情報や在庫情報を把握できる体制を構築する必要があります。大塚商会では、基幹業務システムをPOSやECなどと連携させ、統合的なデータ基盤の構築を支援することが可能です。ぜひご相談ください。

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