2025年アパレル業界の現状は?市場動向とこれからの課題

コロナ禍を経て、現在のアパレル業界市場は回復傾向にあります。しかし、現代は「VUCA (変化が激しく、先の予測が困難な状況)」といわれるように先行き不透明な時代であり、楽観視できるような状況でもありません。本記事では、アパレル業界における市場動向の現状と、今後の課題などを解説します。今後の市場予測に基づき、有効と考えられる生存戦略についてもご紹介します。

アパレル業界の現状:市場規模は、コロナ禍を経て徐々に回復へ

現在のアパレル業界の市場規模は、コロナ禍の苦境から徐々に抜け出しつつあります。矢野経済研究所の調査によると、国内アパレル業界の総小売市場規模は、2021年から2023年にかけて3年連続で拡大しました。2023年の市場規模は8兆3,564億円であり、コロナ禍前(2019年)の水準である9兆円規模に向けて回復を続けている状況です。

こうした回復基調は、ECと実店舗の両面によって支えられています。経済産業省のデータによれば、2023年のアパレル分野(衣類・服飾雑貨など)のEC化率は22.88%であり、前年比4.76%増と増大しています。一方で、百貨店や専門店など実店舗の回復も顕著です。コロナ禍では控えられていたイベントが再開したことによって、オケージョン需要が高まっています。

従って、今後はECのみならず、オフラインでの販売戦略もあらためて強化していくことが必要です。

参照:国内アパレル市場に関する調査を実施(2024年)(株式会社矢野経済研究所)

参照:令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(経済産業省Webサイト)

2025年、アパレル業界は世界的な“試練の年”に?

市場規模が回復しつつあるとはいえ、業界全体の成長率は世界的に低迷が続いており、予断を許しません。この点を指摘しているのが、世界的な経営コンサルティング会社であるマッキンゼーと、アパレルメディア「ビジネス・オブ・ファッション(BoF)」による調査レポートです。このレポートでは、アパレル業界にとって2025年は試練の年になると指摘されています。

昨今は世界的に景気後退や高インフレが生じており、多くの企業が低価格競争への参加を余儀なくされています。格安コピー品の流通や価値観の多様化が進む中、高級ブランドも自社の価値をあらためて示す努力が必要です。また、国際情勢を踏まえたグローバル戦略の練り直しも急務になっています。

こうした中、世界中のアパレル企業から注目を集めているのが、比較的インフレ率が低く、インサイト需要も増加している日本やインド、韓国などの地域です。そのため、今後はより多くの海外ブランドがアジア市場に参入することが予想されており、国内企業には自社の市場シェアを守るための工夫が求められます。

参照:The State of Fashion 2025 (McKinsey & Company)

アパレル業界は今後どうなる? 市場予測から見える展望と課題点

アパレル業界の今後四つの展望と課題点

これまでの現状や市場動向を踏まえると、アパレル業界では今後、次のような流れが生まれると予測されます。

市場予測1. OMOマーケティングの重要性が高まる

コロナ禍を契機に急拡大したEC市場が引き続き好調を示す一方、実店舗へ顧客が回帰する動きも顕著に見受けられます。従って、販売チャネルの面では、ECと実店舗の両方に注力しなければいけません。その際にポイントとなるのが、チャネルの境界を越えて、良質かつ一貫した購買体験を提供することです。そのため、今後はオンラインとオフラインの融合を目指す、OMOマーケティングに取り組む企業が増えると予想されます。

OMOマーケティングとは? O2O・オムニチャネルとの違いや戦略のコツ

市場予測2. 中小アパレル企業はより厳しい状況に?

アジア市場に注目した海外ブランドの新規参入が予想される中、特に苦境へ立たされるのが、中小のアパレル企業です。人口減などの問題も踏まえると、将来的に国内市場が成長する余地は限られています。そのため、国内のアパレル市場は今後、少ないパイを多くの企業が奪い合うレッドオーシャン化が進む見込みです。また、現在の顧客や投資家はサステナビリティへの関心を高めていますが、環境負荷を軽減する取り組みには多くの金銭的・人的リソースを要します。こうした状況は、積極的な投資が難しい中小企業にとって、強い逆風になると考えられます。

市場予測3. D2CやP2Cなどのビジネスモデルが増加

レッドオーシャン化や顧客ニーズの多様化に伴って注目されているのが、ニッチ市場の開拓です。その影響で、D2C(Direct to Consumer:メーカーが仲介を挟まずに消費者へ販売するビジネスモデル)やP2C(Person to Consumer:影響力のある個人が商品を企画し直接消費者へ販売するビジネスモデル)といった新しいビジネスモデルを取り入れる企業が増えると考えられます。これらのモデルは、生産から販売までのリードタイム縮小を実現できる一方、需要予測が難しいため、余剰在庫や廃棄への対策がこれまで以上に重要です。今後のアパレル企業が成功するためには、市場の変化やそこで生じる課題へ柔軟かつ迅速に対応できるシステムを構築することが鍵になります。

次に注目すべきビジネスモデルDNVBとD2Cの違いとは?

市場予測4. インフレによる低価格競争はさらに激化

従来のアパレル業界はラグジュアリーブランドがけん引してきた背景があり、多少値上げしても顧客離れを強く心配する必要がありませんでした。しかし2023年以降、インフレや景気後退が深刻化している中で、顧客もコストパフォーマンスをより重視するようになっています。そのため、これまでは顧客単価を重視していたラグジュアリーブランドも、今後は品質と価格のバランスを慎重に見定め、販売数量を伸ばしていく努力が必要です。もしも経営状況が悪化すれば、人材に十分な投資ができず、人手不足が加速したり、サービス品質が低下したりする恐れがあります。

これからのアパレル業界で生き残っていくためにできる四つの工夫

アパレル業界で生き残っていくためにできる四つの工夫

2025年以降のアパレル業界は、特に中小ブランドにとって厳しい流れになる見込みです。こうした中で今後生き残っていくためには、例えば以下のような取り組みが求められます。

1. 顧客体験の向上など、明確な価値提供による差別化

低価格競争が激化している中で注意したいのが、「大量に作って安く売る」という単純な発想にとらわれないことです。こうしたビジネスモデルは、サステナビリティの観点から望ましくないうえ、競合他社との差別化にも苦戦する恐れがあります。

過度の低価格競争に巻き込まれないためには、自社製品に値段に見合うだけの価値があると示すことが重要です。そしてそれには、需要の回復が顕著な実店舗のサービスや接客を見直すなど、顧客体験全体に着目した工夫が求められます。

2. AIなどの最新技術を活用したECシステムのアップデート

オンラインでの購買体験を向上させることも重要です。特にAIやAR、VRといった最新技術を活用することで、バーチャル試着やデジタル採寸、VRショッピング体験など、新しく便利な顧客体験を提供できます。また、チャットボットによる顧客対応の自動化などの施策も、顧客の利便性向上と人手不足対策を両立する施策として有効です。

3. 客単価を上げるマーケティング施策の実施

市場のレッドオーシャン化が進む中では、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の客単価を上げるマーケティング施策が成功の鍵になります。たとえば、ロイヤルティプログラムの提供、パーソナライズされた提案、アップセルやクロスセルの推進などが挙げられます。また、少子高齢化を鑑みると、シルバー世代に向けてより積極的にアプローチすることも検討の価値があります。

4. システム導入による人材不足のカバーと在庫管理の適正化

人手不足が深刻化する中、システム導入により業務効率化を果たしてカバーすることも大きなテーマです。特に利益率の面でもサステナビリティの面でも、正確な需要予測に基づく在庫管理の適正化は優先的な課題になります。システムを用いて、ECと実店舗の在庫をリアルタイムに一元管理することで、OMOの取り組みにつなげることも可能です。昨今では、在庫管理システムのほか、RFIDを導入するなどして商品管理業務の効率化に取り組む企業も増えています。

RFIDでどう変わる? アパレル業界のICタグ活用事例

現状の改善へ向けたシステム構築などの検討を

コロナ禍の痛手から回復しつつあるとはいえ、アパレル業界の状況は楽観視できません。厳しい市場環境で生き残るには、業務やマーケティング戦略の見直しが不可欠です。効果的なマーケティングや販売管理を行うためには、自社の顧客データを部署横断的に一元管理できる仕組みづくりが求められます。

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